0720

今年の徹の誕生日は終業式の日で、部活がある徹とは時間が合わなかった。

一旦家に帰って部活が終わった頃に学校へと行こうと思ったのだけれど、徹に「遅くなるからダメ」と先手を打たれてしまってどうしようもない。

せめて一目会ってお祝いの言葉とプレゼントを贈りたい、そう思っていた。

困って花巻に相談したら『お昼の時間ならこれんじゃね?』と言われたので、帰宅後にその時間を見計らって学校へと向かった。

どうやらバレー部内でもサプライズパーティーの準備はしていて、先生に前もって相談したら部外者の私もその時だけは部室内へ入って良いと言ってくれたらしい。

いつもの制服だけれど先生と会うわけでもないので、少しだけ髪を巻いて先日買った香水をつける。
お化粧は暑い中行かなきゃいけないので崩れるのを想定していつも通りにした。

『こちら準備OK。名前も入ってドーゾ』

花巻からのLINEで部室内へ入ると、徹へのお祝いの言葉が書かれたガーランドが壁に貼り付けてあって、即席とはいえなかなかの出来だった。

「すごいね、これいつやったの?」

「俺らが部活やってる間に一年がやってくれた」

「それより名字持ってきてくれた?」

「うん、頼まれてたケーキ」

流石の花巻たちも冷蔵庫のない中、何時間も外に生物を置くのはできなかったらしく、途中参加の可能な私がバースデーケーキを買ってくるようにお願いされた。
このケーキは徹が部室へ入った瞬間に顔へとぶつける予定らしい。

「そろそろ呼んでくる?」

松川の言葉にみんなで頷いて、各々クラッカーを持って所定の位置へとついた。

扉のハンドルが下へと動いたのを確認して、岩泉がケーキを構える。

「「「お誕生日おめでとう!!!」」」

みんなのかけ声とクラッカーの派手な音が部室内に響く。

徹の顔に綺麗に決まったケーキは勢い余って後ろの松川へも被弾していた。

顔へ張り付いたケーキを取り、徹の真っ白な顔が現れる。

「嬉しいけど!!!なんで顔面ケーキなの!?」

地団駄を踏む徹に「俺がやりたかった」としれっと言う岩泉は流石としか言いようがない。

「あっ!名前もきてくれたの!?」

「花巻が呼んでくれた!」

ジリジリと近寄ってくる徹に金田一くんを盾にして避けると「なんで名前避けるの!?」と怒られた。

「名前先輩、なんか良い香りしますね」

「え、わかる?今日新しい香水つけてきたんだ〜!」

「え、名前ちょっと!俺にも嗅がせてよ!」

「及川キメェ」

「岩ちゃん!!俺主役!!」

「ってかこの香りどこかで…」

金田一くんが難しそうな顔で首を傾げ、鼻をひくつかせ部室内を歩くと「あ」という声と共に花巻のところで止まった。

「え、なに?」

「花巻さんの香りっスね」

すごい勢いで徹が私の元へと来て、生クリームのついた顔を近づけた。

「あー!!!本当だ!!!なにそれ!!!なんで名前がマッキーの香り身に纏ってんの!?」

「まて、及川。語弊がある。名字と俺の香水が同じなだけでそんな厭らしい言い方すんな」

「え、マジか。休みの間に買ったんだけど、これ花巻と同じなんだ」

花巻とお互いの匂いを嗅いでみると、確かに同じ香りがする。

「同じ香りってカレカノっぽいっスね」

ぽろりと零された金田一くんの言葉は、徹の顔を凄まじいものへと豹変させた。
無言で自分のロッカーへ行き、中から何かを取り出した徹はそれを私に向けて吹きかけた。

「なになになに!?」

むせ返るような香りが部室内へ充満し、慌ててドアと窓を開ける。

「名前は俺の香りじゃないとダメ!」

とんでもないことを言う徹に「だからってやり方があるでしょ!?」と怒れば「一秒でもマッキーの香りさせたくなかったの!」と反論された。

ちなみに、部室内を香水で充満させた罰として今日の部室掃除は徹が一人でやることになったそうだ。

「俺の誕生日なのになんで!?」

嘆いた徹の声は「自業自得だろ」という岩泉の言葉によって一蹴された。



・付き合ってる
・お揃いの香水
・↑マッキーと
・俺の香りになって

及川さん、お誕生日おめでとう!