教育実習で行った先の小学校に、高校時代の先輩がいた。 付き合ってない2人のさしのみ
実習期間はお互い知らないふりをしたけれど、今日は教育実習の最終日。
LINEに『終わったら飲むべ』とこっそり連絡が入っていた。
場所は先輩が高校時代に集まっていたいつものあそこ。
店の扉を開ければ奥の方に先輩が見えて、大きく手を振ってくれた。
「スガ先輩、お待たせしました」
「いいって、最終日だから捕まったんだろ?」
「そうなんですよ…皆さんなかなか離してくれなくて。それにしても先輩が小学校の先生してるなんて知らなかったです」
「俺も名前が教職取ってるなんて知らなかったべ?」
「言ってませんでしたからね!でも私初日に先輩と目が合った時、ビックリしすぎて心臓止まるかと思ったんですよ?」
ポンポン進む会話は久々に会ったと思えなくて、高校時代に戻ったみたいだった。
私とスガ先輩が知り合ったのは本当に偶然で、購買でお昼を買おうとした時に財布を忘れたことに気づき絶望していたら、スガ先輩が「もしかして財布忘れた?」とお金を貸してくれた。
ありがたくお借りしたのだけれど先輩は名前も告げずに去ってしまったので、後日お金を返そうと思った時にものすごく困った。
結局片っ端から全学年のクラスを覗いて見つけたのだけれど、あの時の他の学年に行く気まずさは今でも忘れられない。
お金を返しに行くと先輩は「わざわざ俺のこと探してくれたの?」とビックリしていて、そこから先輩が卒業するまで交流は続いた。
私にとってスガ先輩は憧れの先輩で、当時の自分の気持ちを思い返せばあれは恋だったと思う。
あの時は一年生と三年生でそんな風に想う余裕もなかったけれど。
スガ先輩と飲むのは初めてだったけれどとても楽しくて、スルスルとお酒がすすんだ。
そして先輩が意外とお酒に弱いことを知った。
飲み終える頃にはベロベロで、私が肩を貸さないと立ち上がるのも辛そうだった。
「先輩、ほら帰りますよ。しっかりしてください」
そう声をかけながら外へ出ると、先ほどまでの天気はどこへいってしまったのかわからないほどの土砂降り。
朝の天気予報は晴れだったので、私もスガ先輩も傘は持っていなかった。
仕方なしに少し雨宿りをしてみたけれど、一向に降り止まない雨に諦めて帰ろうとしたら酔いの少し覚めた先輩が「あ、やべ。終電ない」とボソリと呟いた。
「えっ」
「あ、いや!なんでもない!」
今日は土曜日で明日は休みのはず。
仕方なしに先輩に「うち来ますか?」と提案すれば「マジでごめん…」と謝られた。
幸い私の家へはここから歩いて行ける距離で、この土砂降りの雨でも走ればどうにかなるだろう。
二人で覚悟を決めて雨の中へと飛び出して、久しぶりの全力疾走をした。
「なにもないですけど、どうぞ」
お邪魔しますと遠慮がちに入った先輩にタオルを差し出し、私自身も濡れた頭を拭いた。
「お酒も入ってますし、シャワーでいいですか?」
「何から何までごめんな」
「気にしないでください。さ、先輩どうぞ」
「や、名前が先だべ」
そんな押し問答を数回して、結局押し負けて私が先に浴びることになった。
私も先輩もシャワーを浴び終え、戻ってきた先輩からは当然のことながら私のシャンプーの香りがした。
服は濡れていたので私の大きめの寝巻きを貸したのだが、それを着た先輩に「名前の香りがする」と言われ心臓がバクバクする。
さっきまでは雨に濡れてそれどころではなかったけれど、今この家には私とスガ先輩の二人だけで、しかも今日先輩はここに泊まる。
意識するなという方が無理で、先輩に近寄られただけで肩が跳ねてしまった。
「ちょ、急にそんな反応されると困る」
そりゃなんとも思っていない相手にそんな反応されたらそうですよねと思ってスガ先輩の方を見たら、先輩の顔は見たこともないくらい真っ赤に染まっていた。
「え、先輩顔真っ赤…」
「言うなって!高校時代の好きな子と久々に会って急にお泊まりってなったら誰だってこうなるだろ…」
うずくまってしまった先輩を見て、私の方は少し気持ちが落ち着いた。
なんだ、両想いじゃないか。
「先輩、私スガ先輩のこと好きですよ」
私もしゃがんで先輩の顔の近くでそう言えば、少しだけ顔を上げて「マジで?」と聞かれた。
「マジです。なので両想いです」
「ヨッシャァァアアア!!」
急に立ち上がった先輩の頭と私の顎がぶつかって二人してしばらく悶えたけれど、それすらも可笑しくて二人で笑い合った。
帰りに土砂降りに降られる
しばらく雨宿りしてたら終電逃した
どっちかの家だけはいける
…どうする?