紫陽花が結ぶ恋

雨が降り続く梅雨の季節、家の庭には沢山の紫陽花がとても綺麗に咲く。

紫陽花がポツポツと咲き始めた頃から、それを見に毎年足繁く通ってくれている女の子がいる。

近所に住む名字さんの家の孫娘さんで、名前は名前ちゃん。
年齢は確か俺の二個下だったと思う。

名前ちゃんは決まって雨の日に散歩をしていて、晴れの日にはその姿を見たことがない。

今日もジメジメとした湿気が身体に纏わりつくような天気で、夕方にはこの時期特有のスコールが降り注ぐ。

この調子で雨が降れば紫陽花もあと一週間ほどで枯れてしまうだろう。

彼女はこの紫陽花が枯れてしまったらもう家には来ないのだろうか。

毎年ほんの一ヶ月弱くらいの逢瀬だけれど、雨が降るたびに会えるかもしれないという胸の高鳴りは久しく味わっていなかった青春のそれだと思う。

「こんにちは」

庭で紫陽花を見る振りをして名前ちゃんを待っていれば、ほどなくして鈴の鳴るような声が聞こえてきた。

「雨の日にしかこないの?」

そう問えば少し憂いを含んだ顔で「紫陽花から滴る雨の雫が好きなんです」と返された。

「もうすぐ枯れちゃいますね」

まるで紫陽花が枯れるのがこの世の終わりのような言い方だった。

「私、最近紫陽花の色が褪せていくのを見ると悲しくなるんです。また来年まで会えないのかと思って」

おや、と思った。
その言い方だとまるで紫陽花を理由に俺に会いに来ているみたいではないか。

「紫陽花が枯れても来てくれていいよ」

「でも…理由がありませんから…」

彼女があまりにも困ったように眉を下げるので「会いにくるのに理由なんていらないでしょ」と続けた。

「そう…ですか」

「うん。また俺に会いに来てよ」

そう言えば名前ちゃんは花が咲いたように笑い「これからの楽しみができました」と喜んでくれた。



自宅に咲いた紫陽花をよく見にきてる女の子
花はだんだんと色褪せていく
悲しそうな顔をしている時に偶然会った
これから何を目当てに散歩したらいいのかわからないといわれ、思わず俺に会いにくれば?って言っちゃった