守りたい幼馴染みB
(本間乙也)
そんなこんなで、もうすぐ9月になろうとしている。3年生も引退し、来月は新人戦。あと1年、俺も頑張らないと。
数ヶ月前から、実家から通っている俺は、朝は早く、夜は遅い。家に着くのが9時近くになる時も多い。1時間以上電車乗っているからね。
そんな汽車通している部員もかなり多いので、 待ち時間は会話が弾む。特に2年だと空真と駿芽と同じ方向だし。反対方向だと岳人や健一や睦巳など。他にも後輩も沢山いるし、電車が来るまでの時間を話して過ごすことが多い。
空真と駿芽と話していると、俺のところに遥香から連絡が1件来た。
「明日の夕方暇?」
と。
今日は金曜日。明日は土曜日。俺の部活も夕方までだから、そこを狙ったんだろう。
ちなみに明日は、仲間の新人戦の地区大会の応援だ。俺は、地区大会はシードなので、午前中はいつも通り部活やってから、そこから応援に向かう、とのこと。
そのやり取りを、隣にいた空真に見られて、話が広まったのだ。
「ん?乙也は順調っぽい?」
と急に話しかけてくるもんだから。空真は。
「順調…なのかな?」
「最近本当に幸せそうだもんね、」
「あとはいつ告白しようかなってところ」
「でも、片思い期間って楽しいしょ?」
「それ。楽しいわ。」
本当に、ここ最近は楽しい。
自分が本気で人を好きになるのも、本当に久しぶりだし。
「乙也まだ付き合ってないんだっけ?」
と駿芽にも聞かれる。
「まだ…だけど、もうそろそろ告白しようかな…と。」
「じゃあ明日だな、」
「いやいきなり?!でもそれぐらいしたほうがいいよね。」
というか、自分から告白するのは人生初めてなんだよね。今までは、される側の人間だったから。
そして、帰りの電車の中でも、恋バナが盛り上がった。この2人は現在彼女いるが、付き合い始めた経緯などを話してくれた。
次の日、大会が終わり、そのまま真っ直ぐ家に帰る。だいたい、1時間半くらいで着いたかな?
遥香は既に家に来ていた。というか、今まで姉ちゃんと一緒にいたらしい。俺の姉は1つ上だし、遥香と同じ北宮高校だから、今でも仲良いんだよね。
とりあえず俺も支度して、この日はご飯を食べに行く。近くにあるレストランに行く。小さなレストランだが、この地域にある数少ない飲食店で、俺も昔はよく行っていた。最近は、行ってないけど。
「…今日は奢るから、乙也好きなもの選んでいいよ」
と言われるもんだから。
「いや、それは悪いからいいよ全然」
「私というか、お母さんからお金貰ったからだけど。色々とありがとうねって、今までのこと全部話したらお母さんも喜んでたから。」
「あ、そうだったの?…じゃあ、お言葉に甘えて。」
ということで、俺が頼んだのはオムライス。小さい頃よく食べたなぁ、と思いながら注文した。それと、食後のデザートに、プリンも頼んだ。
てか、だから俺の家族もみんな、最近俺が遥香と仲良いこと知ってんのかな。この地域に住んでいると大体近所の人は家族ぐるみで昔馴染みの人が多いけども。良いのか、悪いのか。
「ねえ乙也ってさ、学校で好きな人とか可愛い人とかいないの?」
「俺がそういうの鈍いのわかってるくせに」
「そうだけどさー。星の里とか人多いしいそうだなーって」
「ちなみに遥香から見て、星の里のソフトテニス部でかっこいいって思う人いたりするの?」
「うーん…。やっぱり村瀬さん?」
「それ昔から言ってるじゃん。」
「村瀬さんのプレー今でも大好きなんだもん」
こいつ、村瀬先輩のプレーを初めて見た中学時代からずっと好きなんだよね。村瀬先輩の試合姿見るの。中学時代懐かしいわ。ひたすらうるさかったから。でも恋多きな村瀬先輩だから、女関係わりと荒れてる人って聞いて諦めたな、そういえば。
「しかもさ、あの代の西町ジュニアほとんど北宮の先輩なのに、村瀬さんだけ北宮来なかったって先輩方言ってたし…」
「あー。確かにそうらしいね?てか星の里からは村瀬先輩と須田さん一緒に特待の話いってたらしいけど、須田さん断ったんだってね」
「え、そうだったんだ?」
「村瀬先輩から聞いたのさ。ギリギリで迷って星の里断ったって」
「えー、じゃあもし咲也先輩が星の里行ってたら、村瀬須田ペア見れたってこと…?」
「いやそれな!俺も思ってた!!しかも3年少ないからさ」
北宮高校3年の須田さんも、星の里高校から声掛けられていたという話を聞いたのだ。村瀬先輩とは中学は違ったから俺はここがペアなのは見たことなかったけど、ジュニアが同じだった2人の先輩は小学生時代にペアで、全国常連選手だったらしい。
「あとさ、星の里だったら女子でめっちゃ可愛いなーって思ってた人いる。」
「え、誰?」
「藤野星合ペアの、藤野さん、かな?」
「あー、空真と付き合っているよ今。畑中空真と」
「え?!そうなの?!まあ、そこは美男美女くっつくよね…」
「空真も最初は嫌がってたけど、結局結芽先輩のこと好きになるんだもん面白い」
空真も、南市の人だから、みんな知っているから、話は通じた。
結芽先輩なー。 確かに、女テニの中だと1番かもね。男テニからすれば、ずっと空真と仲良い先輩だったから、その印象しかなかったけど。
「えー、やっぱ星の里の人って有名なんだね」
「そりゃそうでしょ。北宮女子でもあの人イケメンとかそういう話多いよー。りのんなんて吉岡くんイケメンって言ってるし」
「徹也はイケメンの中のイケメン。でもこいつも彼女持ち」
「だよねー。りのんに言ったらショック受けそう」
「写真見る??」
「…え、彼女めっちゃ可愛くない?」
「今まで恋愛に積極的にやってこれなかったらしい徹也がはじめて自分から告白したぐらいだからね」
やっぱ星の里のメンツって県内でも有名人多いから、みんなの目に触れやすいんだなって思う。特に徹也みたいなエースは。
「でも乙也もすごいよねってみんな言ってる」
「いや俺、そんなすごくないし、」
「南畦中の誇り。」
「ったって、その南畦中が今年全中出てんじゃん」
「そうだけど、その子ら1年の時の部長って乙也じゃん」
「…まあ、ね?」
しかも南畦中のソフトテニス部は全員中学初心者だから、尚更よ。
南市は南畦地区以外は大体ジュニアが盛んだが、それでもすごいよなぁと思う。まあ、先生がすごいんだけどね。高校時代は公立進学校ながら常に県大会で入賞とかしていたらしいし。
「ちなみに、今の南市ってどんな感じよ」
「女子は東町と西岡台」
「あー、東一中のメンバーだもんな」
「だから今年は厳しそー。男子は釜川かな。新人戦で秀介が2冠」
「あ、それ聞いた。それにダブルスで晴矢たち負けて新人戦県大逃したんでしょ?」
「そう。びっくりした。」
元ペアの秀介も、釜川高校で活躍している。よく大会でも会ったら話すんだよね。実家通い始めてからも、わりとちょくちょく会ったりしてるけど。中学の元ペアっていう他に、小学生の時サッカーやっていたのも同じだし、結局は小さい頃から親しかったから。
なんて、主に部活の話が弾んだ。食事が終わると、とりあえずその辺を散歩。もうこの時間でも暗いや。いろんな意味で暑くて熱かった夏がもうすぐ終わる。
風と通りも良く、快適かな。今は。
「ここ最近、本当にありがとうね」
と俺は話を切り出した。
「いや、お礼言うのはこっち!やっぱ乙也って昔から頼れて優しい人だわ。」
「ありがと。俺なんてまだまだな人間だけど。」
「でも中々いないからね。乙也みたいな人。」
「そりゃまあ、人それぞれだけど」
普通に返答してるけど、内心はものすごく嬉しいよ。ちょっと、にやけちゃうぐらい。
思い切って俺は、言った。
「俺、遥香のこと好き。」
と。
結局顔真っ赤。あー。
遥香にも、
「顔真っ赤だよ」
って言われるぐらいだし。
「うるせ。人の人生初告白を…」
「あ、そうなの?…それがこんな私でいいの?嬉しすぎる。」
遥香はそう言って、俺の事を思いっきり抱きしめた。思わずびっくりしちゃった。
「わっ!急にびびらせんな」
「ごめん。嬉しすぎて、勢いで。乙也に色々助けてもらって、私も気づいたら好きになっちゃった」
「ありがと。…可愛いよ。そういうとこ」
「ストレートにそう言われるとこっちまで照れるって。」
「お。遥香も顔真っ赤ー」
「うるさい!」
歩いていると、遥香がつまづきかける。
「おっと。」
俺は思わず身体がうごいて、遥香のことを支えた。
「ありがと。」
「おっちょこちょいなところ変わらないね。だからこの前の花火大会みたいなことになるんだよーっ」
「うるさい!」
ちなみに、あの後の県大会は遥香、棄権したんだよね。あれから1週間弱で試合はさすがに厳しかった模様。会場で会った時、そう話してくれた。でも軽いケガだったので、今はとりあえず、テニスはできるようになったみたいだ。
「男子でこんなに面倒見の良い人早々いないよ。逆に私がお世話になっちゃうわ」
「もうお世話してるわ」
「あ、そっか。まあ、これからも、よろしく。乙也にふさわしい彼女になれるよう頑張るわ。」
「俺も。頑張る。」
家までの帰路は、ずっと手を繋いでいた。
何だかんだ俺も、幸せ掴むことができたな。