初恋の女の子の存在B





(溝口亘)


あれから約1月程。新人戦の県大会。

正直、栞の前に立ちにくい面もあるし、更には梨華も出場する。ああ、北高の人達に会いたくないわ。でも多分会うんだろうな。はああ。


今まで3年生の村瀬先輩とペアを組んでいた俺は、今大会から同級生の大橋岳人とペアを組むことになった。以降は部活外でも話す機会が前より多くなり、一連の話も、岳人には全て話した。というか、村瀬先輩みたいに色々と巻き込んじゃう可能性有り得るし。あの人たちだから。




と、若干ビクビクしながらうろついていると、中学までの後輩で元ペアである、明峰西高校の1年生、松橋隼希に会う。っていうか、めちゃくちゃ久しぶりに会うんだけど。


「あ、亘先輩、こんにちは」
「いや待て、隼希に会うのいつぶりだ?」
「や、本当に、多分亘先輩卒業してから会ってないですよ俺」
「前の県大の時会わなかったもんな。ドロー見て隼希いるじゃん!って思ってたのに」
「先輩のお母さんには会ったんですけどねー。」
「それ聞いてめちゃくちゃ会いたかったわ。」

少年団からの後輩である隼希は、中学は同じだけど小学校は隣だから、家もあんまり近くないし、中々会わないんだよな。まあそもそも、俺が帰省するのって年2回とかそういうレベルだし。遠いから中々気軽に帰省できる場所ではないんだよね。

ってか俺の卒業以来って、1年半経ってるじゃん。もうそんなに会ってないのか。まあ、この前の帰省で、高校進学後初めて少年団に顔出したぐらいだしな。




「というか、梨華や栞に会わないで未侑に会える方法ってないの?俺、未侑に話あるって呼ばれてんだよね」
と俺は聞く。

未侑から、ちょっと話あるって言われて、たまたま今回の県大が近いからその時会えたらって話だった。
今までだったら耕作先輩が強かったから北高男子も県大いたけど、今回男子いなさそうだし。


「呼んできます?女子どこまでやってるか
分からないですけど。てか先輩時間大丈夫そうです?」
「しばらくは大丈夫そうかなー?多分、栞か梨華の話だと思うから、俺も気になって仕方ないんだよね」
「やっぱり相変わらず先輩の恋愛めんどくさそうですね…」
「本当だよ。」


というわけで、隼希が未侑のこと呼んできてくれた。というか、たまたま未侑も初戦終わって、ジャッジペーパーを本部に持ってきていたところだった。今回は女子のコートは本部からかなり離れているのでまあ、いいか。



「え、初戦突破?」
と俺は聞く。
「イエス。って久しぶりに見たわこの並び、松橋溝口ペア」
「俺も卒業ぶりにコイツに会ったもん」


なんていう雑談は置いといて。



「で、話したかった内容っていうのが、単刀直入に聞くけど亘あんた、お盆の時栞のこと家に連れこんでたんでしょ?」
「…そうだけど、それみんな知ってる話なの?」
「それが運悪いことに、梨華に見られてたらしいよ。それで梨華と栞が大喧嘩して、部活にも影響してるから正直私も迷惑なんだよね。まあ、亘に言ってどうこう言う話じゃないけど、一応言っとこうって思って」
「…まじで?」

そんな話ひとつも聞いてねえよ。っていうか、そんなことで喧嘩されても、俺どうしたらいいんだよ。



「いや、部活に影響してるなら未侑には悪いことしたと思うから、それは謝る。部長なのに大変なこと起こしちゃってごめん」
「いや別に亘が悪いわけじゃないし、亘が栞のこと好きだったの知ってる話だし、栞から話も聞いてるから、いいんだけどね。でもやっぱ亘知らなかったか。」
「本当に何も聞いてないもん」
「とりあえずそれだけ!栞のとこ戻るからバイバイ!」
「あー、ありがとな!何かあったらまた教えて!」
「了解ー!」



というか未侑が良い奴すぎて、未侑の彼女である耕作先輩が幸せそうで羨ましいわ。なんて思っちゃったり。




「あ、じゃあ俺も仲間のところ戻りますね。先輩頑張ってください!応援してます!」
「ありがと。隼希も頑張れよ」
「ありがとうございます。あと栞の誕生日祝ってあげてくださいよ?」
「わかってるわ!余計なお世話!」


って感じで、隼希とも別れた。っとにこういう時は調子良いんだからコイツ。





っていう一連の様子全部、隣で岳人がほとんど聞いていたわけで。


「よく黙って聞いていられたね」
と俺はつい聞いてしまう。
「いや、なんか面白いなって」
「別に面白くもないわ」
「結局は、亘の元カノが全ての面倒臭い原因起こしてるんでしょ?」
「そうなんだよね。全ては。本当になんで俺あいつと付き合ったんだろうって、それしか思えない」
「そういう時もある、って、俺が言っても説得力ないか。」


まあ岳人なら、恋愛については全て話せるかな。岳人みたいに幸せそうなカップルが羨ましいわ。部員わりとラブラブしてる人多いけど、岳人が特に。












この日の夜、何件か着信があった。
…相手は栞。なんの用だろう。


スマホを放置していたから気づくのが遅くなったけど、とりあえず電話に出てみることにした。



「…どうした?何回も電話かけて」
と俺は聞く。
「未侑先輩から話聞いたんですよね?」
「梨華と喧嘩したって話なら。」
「そう、それです。だからちゃんと全部話そうと思って電話したんですけど。今大丈夫です?」
「ああ、大丈夫だよ。栞も大丈夫?」
「私はホテル一人部屋なので大丈夫です。」

という感じで、電話越しだが、話を聞くことにした。

ちなみに今回の遠征で、俺と同じ部屋なのは普段から仲も良い乙也。乙也も最近彼女できて幸せそうだけどな。頼れる奴だから、部活でも恋愛でも相談事はしやすい。
というか星の里のソフトテニス部ってなんでこんな恋愛相談しやすい奴ばっかいるんだろう。

乙也は、俺の事は気にせずにー、なんて言ってくれてるから、とりあえず俺は栞の相手をした。



「っていうか、お盆に会ってたことどこまでバレてんの?」
俺が1番気になったのはそこだ。俺が栞のこと家に連れ込んだこと以外にも、何か知られてるのではないか、と。


「先輩が私のこと家に連れてったところは梨華に見られてて、そこから色々と憶測語られて、どうせヤったんでしょ?とか何だとか言われて」
「で、うんって言ったの?」
「何も言えてないです。急に図星つかれて、私もどう反応すればいいのか分からなくなって。結果それが喧嘩に繋がって。」
「…別に梨華が今更口出すような話じゃないけどな。」
「それはみんな言ってます」


実際俺、梨華と付き合ってた時、エッチ拒んだことあるから。それが悪かったのか知らんけど、結果俺は何をすれば納得されるの?でももうあんなやつのところには戻りたくないし。俺の事裏切ったくせに、今になってこんな執着心つかれて、本気で意味わかんないよ。


「俺、本当にどうすればいいの…」
とつい弱音を吐いてしまう。

「実際、亘くんひとつも悪いことしてないですけどね」
「悪いことしてないとは言い難いけど。でも女の執着心って怖すぎ。栞のとこ逃げたら逃げたで逆に面倒だし、俺は何したら許されるのか。別にあいつに許してほしいとか思わないけど、ただ単にこの面倒臭いのをどうにかしたい」
「でも、亘くんって梨華から話しかけられても嫌々言って逃れてるだけですよね?」
「…そうだけど。」
「ちゃんと話す、ということはしてないんですよね?まだ」


確かに梨華の話は聞こうとせずに俺は避けて避けまくっていた。1度くらい向き合えって話か。まあ、それは考えとくか。


「だから亘くん本人から言ったら少しかは納得するとは思うんですけど。私たちが言っても説得力ないみたいで、もうお手上げで」

まあ確かに梨華はああいう性格しているからな。俺から言うしかないのか。ちゃんと話すしか。



「とりあえずありがと。でも、部活に影響は起こすなよ。俺の知らないところで俺の事で部活に影響されるのは気分良くないし、何よりもその部長に言われたから」
「本当にすいません。」
「実際栞は何も悪くないんだけどな。むしろ、巻き込まれて」
「でもエッチ誘ったの私からじゃないですか。だから結果私も私です。」
「それは別に、俺も乗り気だったから、いいんだけど。」


そして俺はここで、気になったことがあった。それを、聞く。


「正直栞は、俺の事どう思ってる?あそこまでしといて付き合うのだけは嫌ってこんな都合良いことしか言わない俺のこと」
「…それは、亘くんの言いたいことは分かるので特に何も思わないし、むしろそんな中で私とこうやって関わってくれることに感謝してますよ。亘くんがこれ以上関係深めたくない理由も、分かった上で関わっているつもりです。」
「栞が良いなら良かったけど。俺だって、本当はあの時、栞に付き合ってって言いたかったよ。」
「やっぱり、梨華のせいで女性不信になってしまったっていうのと、さらに私と亘くんだとかなりの遠距離になってしまうので、それかな、と」
「……大当たり。」


まあ、栞なら話が早くて助かる。結果、俺の考え全部見抜かれてるんだよね。でも、俺ばっかわがまま言ってて、栞は本当にこのままで良いのだろうか。本人は良いって言い切ってるけどさ。







俺が、高校上がってから女の人にも、変に苦手意識持ってしまうっていう話は、栞にもした。

そりゃ、女の人誰もが梨華みたいなわけじゃないし、それこそ栞や未侑みたいに良い人だっている。だから、普通に関わるだけなら良い。

でも、その先。付き合うってなった時の話。本気で好きになった人に、裏切られるのが怖い。そんなの自分が逃げてるだけって分かってるけど、結局俺には過去のことがトラウマきてて、今じゃ無理なんだよって話。

それがまだ、高校で出会って、すぐ会える人だったらいいさ。
栞、だからさ。


結局俺も中途半端だ。やるだけやっといて、付き合えないって、こんな男のことなんて普通、もう相手にしないだろ。

でも栞は何で相手にしてくれているんだろう。まあ、ここは、栞の優しさにつけ込んじゃっていいのだろうか。




「…とりあえず、長々とごめん。」
「いえいえ。こちらこそ急にすいません。明日のシングルス頑張ってくださいね。」
「あれ、明日いるっけ?」
「私は出ないですけど、未侑先輩出るので多分午前中はいますよー」
「なるほどねー。あと、誕生日おめでとう」
「あ!ありがとうございます!覚えててくれたんですね!」
「もちろん。」


という話で締めて、電話を切った。
まあ、誕生日おめでとうって言えたから良かったか。





…っていう一連の会話を、俺はスピーカーにして栞の話を聞いていたもんだから、乙也には丸聞こえってわけで。


「なあ亘、スピーカーはわざと?」
「いや、途中で気づいたけどもう遅いってなってこのままにしてた」
「全部聞こえちゃったわーって」
「別に良いけどね。乙也なら」
「でも亘の恋愛本当に面倒臭いって、皆言ってる意味が分かった」
「俺自身も面倒臭いもん。というか、恋愛とか無くなればいいのにって」


本当に思う。恋愛なんてこの世に存在しなければ俺、こんなに面倒なこと起きてないから。




「でも、最近思うのはさ。特定の彼女作らない人って実は女性不信でしたっていう話聞くじゃん。それ、何となく分かる気がしてきた」
と俺は言う。

「ああ、そうかもね。」
「だって、女の人と深く関わっても良いことないって思いこんじゃうわけじゃん。でも男だから結局、満たされたいんだよね。例えそれがセフレって関係だけだとしても、それ以上何も無いし、距離感は1番ベストなんだよね。どうせただのセフレだから、って」


実際セフレってそうじゃん。まあ、人によるかもしれないけど、必要以上に関わる必要も無いわけじゃん。ただヤって満たされればそれでいいっていう関係じゃん。

まあ結局俺と栞は今のままだと、そういう状態になるんだけどね。



1度経験してしまったことと、2度同じこと経験したくないしね。それなら、自分で逃げれるところで逃げたほうがいい。

まあ、それが自分勝手なんだろうけど、自分なりに自分を守っているんだな、とは思う。


栞のこと信用出来ないっていう訳では無い。むしろ、小さい頃からの仲だし。でも結局は、好きな人に裏切られるのが怖いだけ。ましてやこの遠距離だもん。何が起こるか分からない。だから余計に怖い。俺は。


でも結局、栞のことまた好きになったのは確かだから、そこだけは後戻り出来ない。




はあ、俺。どうすればいいんだろう。

色々と、矛盾しすぎて、笑えるよね。あはは。