認めてしまった恋心A
(畑中空真)
6月、県総体、インターハイ予選。
個人戦は勝ち進み、インターハイ掛けの試合では、北陽学園高校の3年生ペア、滝村浦川ペアとの試合。この試合を勝てば自分たちはインターハイ出場権を得ることができる。
決して油断はできない。ペアの本間乙也と一緒に頑張って、いる。
そして見事、その試合に勝利するのができて、インターハイ出場を決めることができた。自分にとっては、小学生時代から全国大会出場権をあと一歩のところで逃し続けていたので、また、中学から始めた乙也も初全国大会。勝った瞬間は、2人で抱き合ったよね。本当に、嬉しかった。
その試合を、女テニの数人が見ていたのが俺も分かった。もちろん、結芽先輩も見つけた。だからまあ俺も、気合い入れ直すことができた。乙也も察してくれたかな。ははは。
「おめでとう」
と、結芽先輩に一声かけられる。
でも結芽先輩はちゃんと立てていなかった。ペアの美月と、結芽先輩と仲良い3年生の柊奈先輩が、支えている。
足を怪我したのか。テーピングされている。
「ありがとうございます。……って先輩足どうしたんですか?」
「インハイ掛けの試合で怪我して、動けなくなって、G3ー1でリードしてたのにそのまま棄権」
「え、大丈夫ですか?」
と、ここで結芽先輩は泣き出した。
「あ、ごめんなさい…」
「いや、いいよ。」
確かに、3年生である結芽先輩にとっては最後の県総体だった。その後美月の話を聞くと、インターハイをかけた試合であと1歩だったところに怪我をしてしまい、本人はまだやるって言ってたらしいけど、でも足の状態が悪すぎて結果棄権となったみたいだ。
結芽先輩は俺達のこの試合が終わるとすぐに仲間のところに戻り、安静にしていた。
そんな様子を見ると、俺もソワソワするというか、あんまり浮いていられない。自分のことよりも、先輩のことばかり頭に考えてしまう。それほど心配になっていた。
好きな相手だから、尚更。
「空真、まだ試合あるけど、大丈夫?」
と、ずっと近くにいた乙也に聞かれる。
「あ。ごめん。俺は大丈夫」
「いや、色々と複雑だって考えてるのかなって」
「そりゃそうでしょ。でもだからと言って、俺が頑張らない訳にもいかないし」
「その意気込みかっこいいわ、俺も力になれるよう精一杯やる」
ってまあ、準々決勝では西星高校の福島花田ペアに敗退してしまったが。
ちなみに、男子の引退は、3年生みんなインターハイ個人戦決めてるし8月なんだけど、女子は今回で終わり。団体戦も逃したし、個人戦も1組しか決めてない。8月の国体予選も出る人が多いみたいだが、部活としては引退なので、恋愛なども解禁するみたい。
だから、俺はこのタイミングで、自分の気持ち伝えようってずっと思ってて、前々から、県総体の後に先輩と遊ぶ約束をしていた。でも先輩の足の状態が悪いから、外には行けない。というわけで、先輩の家に行くことになった。
それが日曜日の午後の話。午前中は男子は、新体制のミーティングのみだったので、昼からはフリー。昨日は男子は休みだったが、まるまる1日、女テニが引退式だったのだ。
結芽先輩の家は、少年団が同じだったという駿芽が知ってるので、教えて貰いながら向かった。先輩からも地図送られて来たけど、俺地図見てもちゃんと目的地にたどり着ける人じゃないから、迷うんだよね、いや笑えない。
「ごめんね。来てもらって」
「むしろこの状態ですいません」
「いや、これは私が悪いから大丈夫。」
まだ痛そうだが、笑顔で話してくれる先輩。
とりあえず、リビングには先輩のお兄さんが居座っててゲームしているからと、先輩の部屋に上がらせてもらうことになった。先輩のお母さんからも、インターハイおめでとうって、ケーキまで頂いたし。
「というか、団体戦1試合出てたみたいですけど、病院は行ったんですか?」
「当日行った。一応、ちゃんと治るまでは1ヶ月だって」
「お、学祭間に合うじゃないですか」
「それが嬉しいけど、女テニのパフォーマンス多分出れないかなー」
「今年も女テニ踊るんですか?」
「まあ、毎年恒例だからね」
学祭では、ステージ発表があり、いくつかのグループごとに発表がある。女テニも、毎年何だかんだ出ている。
「とりあえず、インターハイ頑張ってよ。私の分も。私があんなことになって落ち込んでる時に、柊奈が「空真今やってるよ」って言ってくれて、それで良い試合見れたのが良かった」
「それは光栄です。柊奈先輩には感謝ですね」
「本当にね。一瞬で気分が晴れたから。ありがとう。」
「いや、こちらこそ応援ありがとうございました。」
と話したところで、俺は今日の本題に持っていく。
「そういえば、結芽先輩が俺に告白してから4ヶ月、経ちますね」
「経つね。あの時は綺麗に振ってくれたけど、それ以降も何だかんだ仲良くしてくれてるから、ありがとう」
「あの時はごめんなさい。最初はまあ、先輩のこと好きになれないと思ってたぐらいですから」
正直、告白されてから意識するようになったから。それまでは、何も。年上なんて興味なかったのがあるし、ね。
「この4ヶ月間、俺も先輩と深く関わらせてもらって、楽しく過ごすことができました。かっこいい試合姿も沢山見れたし、それに、先輩がどういう人なのか、とか、優しさとか可愛さとかに気づけたし。」
結芽先輩はとりあえず可愛い。背もあるほうで、二重もしっかりしていて、笑顔が素敵。
「まあ、最初はあんなに嫌々言われながらもしつこく引っ付いてごめんね」
「だから、今があるんですよ。その結芽先輩のしつこさがなかったら多分、好きになってませんでした。」
「え、今好きって……」
「好きですよ。結芽先輩のこと。次第に惹かれていました。」
俺はここで、結芽先輩を力強く抱きしめた。
やっと抱きしめることができた。
「ありがとう。」
と言われて、先輩も俺の事を抱きしめた。
「いや、お礼を言うのは俺の方ですよ。色々と、励みになりましたし。インターハイ頑張ってきます」
「本当に、年下とは思えないくらい逞しいし、かっこいいよ、空真って」
「ありがとうございます。」
そのまま先輩の近くに顔を向け、そのままキスをする。今の俺、とっても幸せだ。
「結芽先輩の残りの高校生活も、それ以降も、一緒に過ごしたいです」
と俺は言う。
「もちろん。一緒に過ごしたい。」
と、先輩からも快く言ってくれた。
「なーんか空真、素直になった?」
「確かにまあ、前よりは?」
「やっぱりツンデレさんだったのかー」
「うるさいでーす。」
何だか、前まではあまり素直に接することができなかったんだ。でも本当にここ最近、自分でもわかるくらい、素直に接することができている気がするのさ。自分の気持ちを認めてしまってから、かな?
最初はまあ、自分の気持ちを認めたくなかったっていうのもあるけど。
「あと俺、すぐ手出すので気をつけてくださいね?」
「いいよ、嬉しいから」
「むしろされたいんですか?」
「空真ならいいよ」
「じゃあ、遠慮なくいきますね」
素直なのか何なのか、分からないけど、可愛いすぎる。
やっと、という思いで、この日は沢山キスをしたり、くっついたり。とっても幸せ。
もう時間になり、帰ろうとしても、すぐには手放してくれなかったり。可愛いなぁ。
「あ、そうだ。話す時タメで大丈夫ですか?」
「いいよ。むしろ敬語使われるよりタメで話した方が親近感はあるし」
「よっしゃ。じゃあ、よろしくね。結芽。」
「名前呼びは良いとは言ってないけど…」
「って顔真っ赤にして言うこと?」
「……正直嬉しい。」
っとにもう、一々俺の心臓もたないわ。
まあ早速、敬語も外し、呼ぶ時も結芽と呼ぶようにした。今までずっと先輩として関わってたから、正直慣れなけいけど、今後は恋人として、関わっていくんだ。なんか、恥ずかしいや。
「あ、そうそう。入院決まったのさ」
「え、足??」
「うん。手術決まってさ。もう明日から入院だから暇な時来て」
「しょうがないなー。」
来週までは入院してるらしいので、まあ、暇な日あれば行こうかな。お見舞いは。って思ったけど土日大会で北春日にいるから厳しいかなー。日曜日終わるの早いからその後行けるかなーとか思っちゃうけど。
まあ結局俺も、俺だ。
高校生のうちにもう一度幸せになれる日が来るとはなぁ。
今後も大変だと思うけど、結芽、よろしく。