こんな状況だけども@
(夏原空都)
何だかんだ結局、俺はあの人の側から離れられないんだろう。
ご近所さんで、物心ついた時には既に仲良くなっていた、同い年の女の子、城守紬。紬とはずっと遊んでたし、テニスも小1の時に一緒に始めたし、お互い全国大会に出場するような選手に成長して行った。
中学1年生の時に、幼なじみという感情から、恋愛感情を持つようになったんだ。俺から告白して、付き合って、以降も色々なことを経験したし、喧嘩だって絶えなかった時もあった。でも結局俺には、紬しかいない。
高校生になると、俺は強豪校の北陽学園高校に進学した。でも、北陽のソフトテニス部は恋愛がダメ。だから俺も最初は、この関係を切った。
俺は紬のこと大好きだったけど、どうせ恋愛できないんだったら、中途半端に関わっていくよりも、忘れたほうが、いいのかなって。
そんな紬も、家庭の都合で、江南市に引越し、高校も東江南高校に通っている。
つまり言うと、江南市と緑陽市は同じ支部なのですよね。この前の春季大会も、隣のコートだった時あったし。
結局俺達は半年以上前に復縁している。結局俺達は何があってもこのままのほうがいい。今はあんまり表に出せないけど、その状況を乗り越えていくことにした。
6月、県総体が終わり、この日は久しぶりの完オフ。完オフなんていつぶりだろうか。
この日は夕方から、中学のソフトテニス部で緑陽支部で活躍しているメンバーでの集まりがあった。男子は俺と菅だけだが、女子は広島学園高校や北陽学園高校に通っている人も多いからね。
その前に、俺は紬の家に行くことになった。
家に入り、紬の部屋にそのまま入ると俺はすぐに、紬のことを後ろから抱きしめた。
「やー、いつもすぐそうやってー」
なんて、嬉しそうに言う紬。
「だってー。しばらくぶりなんだもーん」
俺まで一瞬で、甘えに入ってしまう。だって実は、2年生になってからは、大会でしか会えてなかったから。
身体もだんだんと女の人になっている紬に、中学生の時の俺は反応しないわけがなかった。周りの女子よりも胸は、でかいほうなんじゃないか。最高だわ。あはは。
こいつ相手にしてると俺、どんどん変態になっていってるんだよね。まあしょうがない。
「そういえば、お盆に温泉行く話聞いた?」
「あー、それガチなの?」
「ガチじゃないの?お母さんが楽しみーってルンルンしてたし、圭志も楽しみにしてる」
そう、何だか、夏原家と城守家で、お盆に温泉旅行するとかいう話になっていたらしく、俺もつい先日母親に聞かされた。紬の年の離れた弟、圭志は現在小学2年生になったんだっけ。
小学生の頃もこうやって旅行したことはあるけど、俺と紬が中学上がって部活忙しくなってから1回もしていなかった気がする。
「とりあえずまあ、楽しみにしとくよ」
まあ、この話はこれから決まるらしいのでね。色々と妄想が捗るけど、ふふふ。
2人でなんてどこも行けないし、家族付きとはいえど、一緒に行けるってだけでも嬉しいよ。そもそも、あまり会えないしね。
自分自身でも、すごいな、って思うぐらい、この人に執着心があるなと思う。本当だったら俺以外の男の人と話して欲しくないとか思ってるけど、まあ、俺らの関係の事実上仕方ないから、俺もあまり強く言えない。
俺結構、束縛するタイプなんだねって、中学の仲間によく言われてたし。
だって、好きな人の可愛いところを、俺以外の人に見せたくないじゃん?って思うわけ。もし同じ学校とかに通ってたら、俺どうなってたんだろう。だから高校は、離れて良かったのかなとは思う。
この日はギリギリまでずっと、愛し合っていた気がする。できるなら、この人のそばにずっといたいって、行為の度に思ってる。
でも俺は、これが自分で選んだ道なんだから、ちゃんと、それに従うしかないんだよ。まあ、付き合ってる時点で、従えてないけど。
7月に入るとすぐに、県大会に繋がる支部大会が行われた。この大会は、過去大会で上位に入った選手は支部大会シードされる人も多く、 俺もそのうちの1人。だから今日は、チームメイトの応援に来た。
その時に俺は、知り合いを見つけ、話しかけに行った。
「友輔ー?」
と俺は1人を呼んだ。
東江南高校の男子ソフトテニス部で2年生の、日下友輔。
今はここにはいないが。同じく2年生の土崎朽と今回はペアみたいで。1年生から団体戦でも活躍している。
紬繋がりで仲良くなって、緑陽支部の公立高校の選手の中では1番仲良いであろう。友輔は、2回くらい試合したこともあるし。
「あれ、今日いたんだ」
「試合はないけどねー。友輔どう?」
「次勝てば県行ける。」
「おー。待ってるよ?」
「もう当たりたくだけはないけどな」
こうやって絡めるのも、この地区の人だと東江南の人だけだから、俺も楽しいんだよね。
「友輔、今度テニスな」
「俺はいいけどいつ暇なのよ」
「あーでも、インハイ終わってからになるかなー?」
「じゃあ来月やろーや。」
「その後飯な。」
「金取っとくわ。」
紬繋がりで東江南の人とテニスするようになってからも、友輔と朽などの2年生男子ともこうやってテニスしたり、ご飯食べに行ったりする機会が増えた。っても、ここ半年くらいかな?
「相変わらず、紬から話聞くよ、空都のこと。空都がどんだけ変態だってこともね」
「そんな話ここでするなー?俺が変態ってこと広まるわ」
「あ、認めてるんだ」
「まー、認めなきゃいけないのかな?」
「まあそんな話はいいんだけど。」
と、友輔に話を振られる。
「紬最近、同じ学校の男の先輩に付きまとわれてるんだよね。あ、部活とか全然違う人だから、空都知らない人なんだけど」
「…どんな感じで?」
「ベタベタ触ってくるような人。紬も上手く断ってきてはいるけど、多分あのままエスカレートしてく気がして。2年入ってからずっと。」
「…まあ、チラッとは紬から聞いてたけど」
最近、紬は男の人に絡まれることがあるとのこと。俺も先月聞かされた。
その先輩は学校でも人気な先輩らしく、周りの女子からはむしろ、進められるみたいで、どうしようもないと。
紬が俺と付き合っているのなんて、東江南高校はソフトテニス部しか知らないことだし。
「それに紬が彼氏いるってこと、空都の事情あってまだソフテニ以外知らないし、勿論言えないから、結局どうしようもないんだよねって。」
「まあそうだよね。」
「出来る限りは、ソフテニだけでも協力しているけど。西井先輩と仲良い人だから、西井先輩も頑張ってくれてる」
「そうだったら有難い。俺本当に、表では何もできない身だから、今は」
内心は悔しいよ。彼女のことを助けられないの。西井さんには今度会ったら一声かけよう。あ、でももう会うチャンスって無さそうか。県総体で話した時、もう高校では大会出ないって言ってたし。
友輔と話していると、その場に朽もやってきた。
「おー、空都じゃん」
「朽久しぶり。…てほどでもないか」
「なんの話してたの?なんか深刻そうに」
と朽が言うと、友輔は
「紬の話。例の人の」
と答える。それに、朽は納得した。
「大丈夫、ソフテニみんなは空都の味方だから。こんな弱い俺たちとテニスしてくれたり、仲良くしてくれてるし。俺のくだらない恋愛相談も全力乗ってくれるし」
と朽は言う。
「ありがとね。あ、でも、また何かあったら、言って欲しい。」
「おっしゃ任せた。」
「そしてお前ら、全然弱くなんかないし」
「それは言いすぎじゃんー。空都に勝てたことないのに」
まあ、良い友達持ったわ。この人達と話すの結構、楽しいんだよね。普段とは違った、何かがあって。だから俺も、東江南の人たちとテニスする時間、かなり好きなんだよね。深いこととか何も考えなくていいし。
紬と今も仲良くなってなかったら、この人たちとも出会ってなかったわけだし。
てか、最近この人たちと恋バナしてないな。この2人はそれぞれ、彼女いるからね、現在。
にしても、紬はやっぱりモテるんだな。性格よしの美人で、まあ、体格見ても、男からモテそう。中学の時も、「空都の彼女じゃなかったら近づきたかったー」なんて言ってる同級生いたし。
「なーんか、仲良さそうに話してる」
と、紬がそこにやって来る。
「まあ仲良いし?」
俺は、2人の肩を組みながら言った。
その様子を、紬の隣にいた、東江南の2年生女子、白河望乃に写真を撮られた。
「なんか適当に撮ったら良い写真になったし」
「え、望乃見せてー?」
と、紬は見た後、俺達にも見せてくる。
「え、この写真送って。トプ画にしてやるわ」
と俺が言うと、
「何それめっちゃ嬉しい」
と友輔に言われる。
「じゃあ紬と空都も2人で撮る?」
なんて、朽に言われながらも、写真を撮ることに。
大会で会ったら話してるけど、ここで写真撮るのって、初かもしれない。地区総体の時に、元中メンバーで撮ったことはあるけど。
「…おー、やっぱりカップル感ある」
朽が撮った写真を見ながら言う。
「そう?ありがと」
なんてワイワイして、この人たちとは後にした。俺もう、東江南の人たちの中に、普通に溶け込んでんじゃん。もし俺この高校に行ってたら、こうだったのかな、と。まあ、そんな頭はないっす。東江南高校って、結構頭良いとこだから。
「おー、やってんなー」
なんてやってきた、翔弥先輩。様子を見られたみたいだ。2年生と、3年生何人かには、この話している。
「まあ別に、やかましいこと何もしていないし、ほとんど日下友輔と話してたし、いいじゃないですか」
「表では何気なくやってるとこ、上手いわお前」
「逆に、表に出せてない分、向こうでは問題も起きてるらしいですけどね」
先程の話、紬が先輩から付きまとわれてるっていう話。俺達が付き合っているのが表に出せない以上、何もできないのが悔しい。
「まあとりあえず、今誰残ってます?」
と俺は先輩に聞いた。
「大体残ってるよー。星の里も残ってるから、次の代私立優勢かな?って」
「まあ、そうとは言いきれないですけどね」
「地区総体で南高ペアに負けた奴の発言は違うね」
「交流大会全国権逃しっぱなしだった先輩に言われたくないですねー」
「この生意気な後半め、覚えとけ」
「そんな怖いこと言わないでくださいよー?」
とりあえずあと1年は、この状況のまま、生き延びますかね。