幸せと愛と




(野川春太)


たまに、ふと考える。
中学の頃の自分はこんなにも幸せな恋愛できていたのだろうか。

いや、できてなかった。
自分のことに精一杯だった。あの時は。
だからあんなことになって終わったんだろう、とは思う。

どちらかが悪い、じゃなくて、お互いがお互いを信頼していかないと、関係は続かない。特に俺と可鈴みたいな2人は。

今になってみれば可鈴のことは大好きだ。いや、決して中学で付き合ってた時は好きじゃなかったとかそういう訳じゃなかったし、中学の時もちゃんと好きだった。でも、本音でぶつかって、付き合ってて楽しいと思ったのは、もう一度付き合ってから初めて思うようになった。





春休みに入って日曜日の今日は、部活も無く、久しぶりに可鈴と遊ぶことになった。俺も向こうも部活生だ。お互い遠征やら何やらで会えてなかった。今日は教科書を買いに行かなきゃいけなくて、そのついでにと駅前行くことに。


家も割りと近いから、バス停から近い俺の家まで可鈴が来てくれる。
そして今日はあったかい。いい天気。

可鈴がこちらに着いたようだが、俺はまだ準備を終えてない。とりあえず、家に上げるだけ上げることにした。


「やっほー」
なんて入ってくるが。

いや、こいつ、こんな、
…可愛すぎだろ。

私服姿こんな可愛かったっけ、いや、初めて見る訳じゃないんだけど、最近部活終わりとか学校終わりに遊ぶこと多かったし。


「何固まっちゃって。」
「今すぐにでも襲いたいぐらい可愛い」

俺は可鈴を抱きしめた。抑えきれなかった。本気で。

「ま、帰ってきたらのお楽しみにしとくけど」
「今日の春太、やる気満々じゃん」
「だって…」

こういう休日しか見ない化粧した姿。いつもポニーテールの髪の毛は、今日はサイドテールで、毛先は緩く巻いている。
そして肩出しのニットとか、本気で俺を殺しにかかってる。エロすぎだろ。


キスをした後、可鈴の首元に鼻息を吹きかける。

「や、今はやめ…」
「大丈夫、今はこれだけ。今は、ね。」

そう、今は。
今日は犯しがいがありそう、なんてね。






駅前に着くと、さすが教科書販売の日だけあって、知り合いだらけだ。西星の新3年生の他に、他校もちらほら。東商の新3年生もだから、可鈴も実は今日だったりする。


「春太のとこ軽すぎない?」
「だって4冊しか入ってない」
「クソじゃん」

って、ほとんど2年生で使った教科書ばかりらしいから、少ない。比べて可鈴は12冊。進路の参考書も入っているみたい。



「あれ、春太じゃん」
なんて声かけられたと思ったら
「うーわ、見られたくない人に見られた」
「いやひどくない?そして俺も同意見だわ」
「瑛太もちゃっかり彼女連れかよ」

そう、瑛太だった。
何気に彼女と2人でいるところを見るのは初めてだったりする。

「え、七葉じゃない?!」
「やっぱ可鈴だよね?」
なんて可鈴と七葉ちゃん話してるけど。

「え、2人知り合い?」
と瑛太が聞くと
「オーキャンで同じ班で仲良くなった!」
と七葉ちゃんが言う。

そういえば可鈴、2月にあったらしい市内にある製菓の専門学校へのオーキャンへ行った時、同じ班にいた西星の商業科の子と仲良くなったとは言っていたが。瑛太の彼女だったとは。




なんか、流れで4人行動することになった。でも七葉ちゃんが夕方からバイトあるらしく、昼食食べて買い物してすぐ帰っちゃうとのことだったが。





飯食って、お店回って時間が過ぎ、瑛太たちとは分かれ、再び2人きりになる。とりあえずフードコートの空いてるところに座る。

「疲れたあー!」
「53分のバスで帰る?」
「そうしよー、春太の家今日泊まれる?」
「んー、母さん夜勤だから分からないけど聞いてみるわ」

俺の母親、介護士をしていて、月に何度かの夜勤がある。それが今日だ。
父親は出張中、見事に親が誰もいない。

つって、俺が彼女連れ込んですぐやろうとするのも親は承知済みだし、特に何も言われないし、可鈴と泊まりはよくあるし、両親もいい歳してイチャラブしてるんだけどさ。妹も彼氏連れ込んでくるし。って考えたら俺の家、緩いのかな。




数分経つと、こちらに男の人がやってくる。

「可鈴ちゃんだー?」
なんて言いながら。

明らかに年上にしか見えない人だが、そういえば可鈴が前にいたセフレってみんな、年上だって言っていたような。

男の人は可鈴の肩に触る。可鈴の服が肩出しのニットのため、肌に直に触られている状態だ。

「ひっ…触らないで」
「ひどいね、半年前まで俺らあんなことしてた関係なのにね」
「それはもう終わった話でしょう?」

可鈴は必死に男の人の手を振り払った。


少しの間黙って見てたけど、話聞く度にイライラするし、可鈴にべたべた触るし、もう俺も見てられん。


「すいません、もうやめてもらえます?」
「あー、彼氏面か?」

本気でイライラして来た。初対面の人にイライラするとか初めてだ。


なんてことをしていたら
「お前何後輩に喧嘩売ってんだよ」
と別の男の人がやって来た。
…ん?

「羽田先輩?」
「やっぱ春太だよな?ごめんねー、こいつ連れてくからあとはごゆっくりー!」

羽田先輩のおかげでとっさにいなくなってしまった。
羽田先輩は春日高校のソフトテニス部のOBだった人で、西星の人との交流も深く、俺も優聖などを通じて知り合った。


「…羽田先輩、こういう空気読むの上手いんだっけ」
なんて思いながらも。何かこんなこと、中浦先輩言ってたような。そのくせ彼女できたとこ見たことないとか馬鹿にしてたけど先輩達。




「ごめん春太、巻き込んで」
と可鈴に言われる。
「可鈴は悪くない。でも今非常にイライラするんだよね。」
「ごめん、もう…」
「とりあえず、家着いたら覚悟してて」

もうバスの時間だ。行かないと。






家に着いて、部屋に上がった瞬間に俺は可鈴を後から強く抱き締めた。左胸を触りながら、後ろからだが、唇へキス。


「…まだ怒ってる?」
「んー、イライラはしてたけど怒ってはないよ」

最初から怒ってはいない。俺が勝手にイライラしてただけ。

「可鈴ちゃん、今日は優しくしてあげないからねー?」
「いつもしてないじゃん」
「えー?優しくしてるつもりなんだけどなー」
「嘘つけ」



可鈴にはよく言われる。エロスイッチが入ったら口調が変わるって。まあ、あんまり意識してないんだけどな。




「今日の春太って余裕ない?」
「最初見た時から余裕なかったけどー?言ったじゃん、今すぐ襲いたくなるって」
「それまで我慢してたのかー。偉いねー。」
「その我慢が今解けたって言ったら?」


いつもより声を出している可鈴。俺の我慢が解けたと同時に、興奮が止まらない。
何だか今日、いつもより抑えが効かない。いつも効かないけど、それ以上。


「ごめん、先に言う、今日は本気で抑えが効かないから、痛かったら言って」
「別に気にしないのにー。激しいの好きだし」
「ヤリマン発言出ましたね」

こういうところも可鈴らしいわ。ま、遠慮なく。










「もう俺動けえね…」
「私もだわ」

俺ら結局何回イった?俺もかなりの回数だったと思うよ。
別にいつもと変わらないのに、どうしたんだ今日の俺。ほら。


「まだ満足してないの?変態さん」
面白る可鈴。うるせえわ。
「その言葉そのままお返しします」

改めて見るお互いの身体、唇の跡の量が半端ない。俺明日普通に部活なんだけどなーー。丸見えだな本気で。


「ん?まだいけそう?」
「こっちは元気なようね」
「その元気に応えます?」
「いいよ」
「俺明日部活なんだけどなー」
「動けなくても人のせいにしないでね」


本当にこの日だけで何回愛し合ったのか。まあ、好きだから。愛してるから。
こいつだからできること。






次の日の部活、クタクタな上に大量のキスマークを見られ、とうとう顧問の池田先生にまでいじられるようになったのは言うまでもないです。
池田先生も若く、一年前に結婚したばかりで、部員の恋バナにもよく参加しているし、相談も乗ってくれる。

「どうせ春太だからとことんやってんだろ」
と先生に言われる。
「ほーら池田先生にも言われてる!」
と航大まで茶々を入れてくる、
「航大、てめえは黙れ」


「どんだけヤったんだよ」
と智にも笑われる。
「俺の中でも史上最高だわ」
「あんなに体力のある春太でもヤリまくったら疲れ出るんだね」
「は、うるさー」

たしかに決勝まで試合する大会よりも疲れたわ。