進路に悩み





(小谷大紀)


とうとう自分は3年生に上がる。高校に入学したのもつい最近のようで、一年後には自分の決めた進路へ進んでるのかな。

その肝心の進路だが、まだ何も決まっていない。工業科にいる自分だが、このまま工業系に進むか何するかも決めてない。そもそも進学か就職かも決まってない。そろそろやばい。

何も考えていない訳ではない。考えてはいる。でも、何も決まらない。



4月の後半頃の話。進路希望調査が配られるが、本当に何を書こうか。

「大紀どうするの?」
なんて同じクラスで部活も同じの竜也に聞かれる。

「決まってねーよ、まだ白紙だわ」
喧嘩売ってんのかー。こいつ1年の時から自動車整備士になるって言ってたから、ずっと前から決まってていいなーって思う。コース授業も自動車だしこいつ。竜也の父さんが自動車整備士やってて、それで昔から車が好きだったみたい。


「大紀この状態のまま秋迎えそう」
「現実になりそうで怖いわ」

本当に気づいたら秋になってそう。迷いに迷って現在3年生になっちゃってるぐらいなんだから。


去年先輩達も進路で本気で悩んでいたな。決まらない人は本当に悩みに悩んでた。






本気でどうしよう。気づけば明日が進路希望調査の提出期限だ。もう白紙で出そうかな、なんて思っちゃう。

部活終わりに、学校へ戻って進路指導室の近くへやってきた。何か、ヒントがないかなって。資料も置いてあるし、昨年の先輩方の進路まで載っている。


「お、小谷、どうした?」
と、先生に話しかけられた。いや、いつの間にいたのかよ。普通にびっくりしたわ。

この先生は松山先生といい、工業科中心に進路指導を担当している先生。教科も工業で、自分も授業で習っている。

「進路決まんないんですよ。だから何かヒントないかなーって」
「調査明日までだもんな、でも焦んなくていいからさ。就職?進学?」
「いや、それも決まってないんです。」
「そうかー。」

先生は一瞬黙ったあと、専門学校のパンフレットを持ってきた。

「北春日市にある工業の専門学校、学科もいっぱいあるし、国立だから学費も私立より全然かからないし、西星からも毎年数人ここに進学してる。あ、小谷ってテニス部だったよな?南田も4月からここ通ってる。」

と、説明される。
あ、薫先輩の進学先か。薫先輩はたしか、建築学科だっけ。

他にもIT系の学科がいくつかと、自動車学科、デザイン学科など、様々な学科があるんだ。へー。

「とりあえず、こんな学校があるよってこと頭に入れてみな?何かあれば南田あたりに聞けばいいし。まあ、あいつも進路決めるの大変だったけどな」
と、先生に言われる。

確かに薫先輩、進路決定の際にモメるにモメまくったんだっけ。

北春日工業高等専門学校、頭に入れて置くか…。





その日の夜に早速、薫先輩に連絡をしてみた。「大紀からメッセージ来るとか珍しすぎてびびったわ」なんて言われたが。

とりあえず聞いてみると、電話で話すことに。



「んー、やっぱ松山先生って北春日オススメしてくるよね」
と言われる。

「先輩もなんですか?」
「そう。俺の場合はどうしても市外に進学したくて、家の人に反対されまくった時に紹介されてここにした。一人暮らしの費用とかはバイトで貯めてるけど、あまり学費かからない学校だし。」

やっぱり国立の学校って私立より学費がかからないから良いのだろう。って、西星高校も私立高校だから、この時点で親にも多額な費用払わせているんだけど。部活奨学生で入ったとはいえ。


「今度オーキャン来てみな?次のオーキャン、多分インハイ地区予選終わってからだし」
「え、いつですか?」
「5月の20日。何もないしょ?」

インハイ地区予選は金曜日までだから、その2日後か。例年通りで行くと地区予選明けの土日は休みだから、きっと今年もだろうと信じよう。


とりあえず進路希望調査は、考え中とのことで、何も書かずに出した。オーキャン行って、考えることにした。






5月に入ろうとしたある日、部活終わりに部室で進路の話で盛り上がっていた。

智と春太は市外の大学でテニス続けるとのことだし、工業科勢は俺以外みんな就職って決まってるし、瑛太と颯は西星大、 航大は公務員で華月は専門学校、と、みんなもう決まってるんだな、と思う。俺ぐらいじゃん。何も、決まってないの。

一応、薫先輩の通ってる専門学校かな、とは言ったけど。

作業療法士になりたい司も市内の専門学校行くか市外の大学でテニス続けるかでかなり迷っているみたい。




「皆ちゃんと決まってていいなー」
と俺はつい呟くように言う。

「今のとこ大起が1番決まってないようだね」
と輝一が言ってくる。
「決まってねーよ。この前先生から薫先輩のとこの話聞いて先輩に直接聞いたぐらい」
「まーまだ4月だ。あと半年は時間ある。」
「どうだろうねー。」

たしかにまだ4月だ。

「とりあえずオーキャンは行くのさ。」
「それならちゃんと答え収穫して来なきゃね」

それと、前日に向こうに行き、薫先輩が家に泊めてくれるとのことだった。ゆっくり学校のこと話せるなら家しかない、と言われ。一人暮らしがどういう感じなのかも気になるけどな、とも思い、賛成した。
ついでに今の部活のこと聞きたいな、なんて先輩に言われたけども。







前日の土曜日になり、朝から移動して北春日市へ向かう。北春日市は昨年の秋の新人戦の県大会で遠征に行ったから、そこまで久しぶりという訳じゃないが。


昼過ぎに着き、薫先輩が待っててくれていた。最初にかけられた一言は、「昨日までお疲れさん」だったが。
まあ俺、今回はレギュラーから外れたから、個人戦しか出てなかったけど。



「つーか、大紀のペアって1年生?」
「あー、長江は1年生です。南が丘の主将でしたから。」
「南が丘去年全中出たもんなー。でも宏斗出てないの意外すぎ」
「それは俺でも思います」

今までかれこれ10ヶ月ぐらいペアを組んで、一緒に上の大会へも何度も進んだ一つ下の宏斗は今回の大会は地区予選すら出てない。
高校総体の地区予選は各校8ペアまでしか出れない。で、今回の俺のペアは1年の長江だった。


「県大どこだっけ」
「北別ですねー」
「遠いなー。さくら市より遠いなー。」
「しかも平日ですからね」
「くそー。行きたーーい」

県大会の開催地は今年は北別市。さくら市からは車で2時間程でつくが、ここから行くと何時間かかるんだろう。


「北春日で県大会やる時お前ら3年生もういないもんなー」
「新人戦は北春日ですもんね」
「いいよー、先生と陽介たちに会いに行くから」


って考えたら、俺ももう引退か。
引退してすぐ進路進路って、あっという間に高校生活終わりそうだ。


「じゃあ俺たち引退する前に部活来てくださいよ」
「予定が合わんなー。もう引退してるの何人かいるしょ?」
「航大とかはもう引退してますね」
「んー、来週の日曜に大会出るから戻るけど土曜日のバイト休んで土曜日から行こっかなー」
「土曜日昼からですよー部活」

どうやら中学時代の先生の入っている一般チームに一応入っているみたい。来週の日曜日は一般の春季大会がある。

先輩と部活の話は絶えないな。南田先輩ほど部活大好き人間ってこの部活にいるだろうか。いや、この先輩を超える人はいないと思う。誰よりも早く、朝練も毎日来ていたし。






そして次の日のオーキャン当日になる。
自分が行くのは薫先輩のいる建築デザイン学科だ。

先輩はオーキャンの当番ではないみたいだが、西星高校を卒業した2年生も今日のオーキャンの当番にいるみたいだ。自分は知らない人みたいだけど。
でも1人で行くのも緊張だなあ。


まずは在籍している先輩方の、この学校へ進学するまでの経験談や、学校のことなどを発表してくれていた。その中でも、最初は進路を何も考えてなくて、この学校のオープンキャンパスを行くのに勧められて行ってみたらとても興味を持って入学したという先輩もいた。


「この学校は様々な学科があるし、オープンキャンパスもかなりの頻度でやってるから、まだ迷っている人は色々な学科を覗いてみるといいよ。」
と仰っていた先輩もいた。


俺も、今日は建築科に来たけど、次は別の学科に来てみようかな、と思った。


そのあとは実際に体験が始まった。高校は工業科に在籍する自分でも、はじめて見たものも沢山あった。やはり専門的だなぁと。




終わり際に、他の学科の説明もサラッとしてくれていた。自動車科やCGデザイン科や、情報処理科など沢山の学科があるみたい。CGデザイン科も少し興味があるかも。


進路、もうちょっと、考えてみよう。








「どうだった?」
と薫先輩に聞かれる。


「ここの学校行こうと思います。話沢山聞いてたら、とても興味持ちました」
と俺は先輩に言った。

「お!よしきた!」
「またオーキャン行こうかと思うのでその時はよろしくお願いします…!」
「任せろ!あと他にも誘える奴誘え?」


薫先輩、しばらくの間進路関係でお世話になります。


もっとちゃんと考えなきゃな、進路のこと。
将来の自分のことなんだから。そう思った今回の出来事。


「まだあと数ヶ月あるから、今決めろとかいう話じゃないから、ゆっくり考えな」
「そうします」