似た者同士1





(千葉哉斗)



6月に入って少しした時の話。部活はというと、インターハイの県予選が始まっていて、出場する選手は会場のある北別市へ遠征に行っている。

俺はというと、今回の大会には関係ないので普通に学校に行って授業を受ける。
部活も3年生はもちろん、2年生もほぼみんないないので、人が沢山いない中の部活だ。しかもコーチも、顧問の池田先生もいないので、副顧問の先生2人しか付いていない。




放課後に部活行こうとした時に1人で廊下を歩いてると、「千葉くんだ!」と声をかけられる。


「あ、穂佳先輩」
「やーっと学校で見つけた」
「見つかっちゃいましたね」

この先輩、穂佳先輩は柊弥先輩と同じ中学の人で、俺も先輩繋がりで前に遊んだことがある。とても明るくて話しやすい先輩だ。

国際科の先輩ということで、俺の在籍している工業科とは教室が近いが、まだ学校で会ったことなかったりしていたのだ。


穂佳先輩側も1人だったようで、これから俺は部活だし、ということで星華公園のテニスコートまで一緒に来てくれることになった。というか、先輩の家は星華公園からすぐ近くらしい。



「柊弥と愛菜の話聞いた?」
「あー、なんとなーくは。告白されたみたいですね柊弥先輩」
「早くあそこくっつかないかなー。柊弥のほうの反応も良い感じだったみたいだし」
「柊弥先輩も嬉しそうに話してましたよ」
「おー。これは期待できる」

愛菜先輩とは穂佳先輩と仲の良い友達。愛菜先輩は元から柊弥先輩のとこ好きだったみたいで、それで前に4人で遊んだ他に、先週に遊びに行って、柊弥先輩は告白されたみたい。柊弥先輩は自分の気持ち整理してから付き合いたいって言ってたけど、でもあの様子じゃあ可能性は充分だ。


「千葉くんは彼女いるの?」
と聞かれる。

「あー、俺は…。3月に喧嘩別れして、先月にちゃんと話し合って結局振られました。向こうに新しい男できたみたいだし」
「じゃあ結構最近なんだね。私もだよー。二股されてたのさ。4月の終わりごろに別れたばかり」

つまり俺らは、ここ最近独り身になった者同士というわけか。穂佳先輩の元カレは先輩から見て1つ上の普通科の先輩で、女絡みもわりとあった先輩みたい。


「あ、もうこの辺でいいですよ、」
「お、ちょうど良い、あそこの家なんだよね」

と入口の向かいにある家を指さす先輩。

「めちゃくちゃ近いですねー。試合の時とかうるさくないですか?」
「いや全然慣れてるし、むしろこういう雰囲気好きだから。私もバドやってたけどできなくなっちゃった身だから、羨ましいなって」
「そうだったんですね」

と、先輩は「連絡先ほしい!」と俺に言ってきて、先輩と連絡先を交換した。


「まだ話し足りないから続きはラインで話そ!」
「わかりました!」

という感じで、この日は別れた。






部活に行くと、それを見ていた涼平と歩夢と道哉の3人に、何があったかを迫られた。

「いや、前に柊弥先輩と出かけた時にあの先輩とその友達と4人で遊んだことあって、さっきたまたま話してただけで…」
と俺は必死に説明する。


「分からんよーこいつ、前の彼女の時もこんな感じだったよー?」
と歩夢が言ってくる。

「うるせーわ、」
「ちょっとは可愛いと思ってるしょ?」
と涼平まで聞いてくる。
「思ってないことはないけど…もうこの話やめ!」

確かに穂佳先輩は可愛いと思う。これは最初見た時から思っていた。

出会いほしーわー、なんて騒ぎ出す歩夢と道哉。ちなみに涼平はこれでも彼女いたりするのだ。先月できたみたいで、今は白浜高校でテニス部に入っている中学の同級生みたい。地区予選終わった後に遊んで告白されたとか言っていた。



日曜日の大会の後にもこいつらが柊弥先輩たちにバラすから、なんか、いい雰囲気になってるみたいに思われてるじゃねーか。今のところは別に何も無いのに。今のところは。







日にちは過ぎて、6月後半。テスト期間の放課後。そのため今日から部活はないけど、涼平と修太と道哉が星華公園のテニスコートで打つらしく、俺も誘われて行くことにした。


「つーかみんな勉強大丈夫なの?」
と俺は気になるが。普通科の涼平と道哉は教科数異常だし、修太に至っては特進科だし。

「工業科って教科数少ないの羨ましい」
と道哉に言われる。
「まあ3日しかないしな」
と返すとみんなにぶっ叩かれたが。普通科と特進科は4日間あるらしいじゃん。



少し打つ程度だったので、17時になろうとした頃にはもう終わり。やっぱテスト期間でもテニスはしたいなーって思う。



今日は歩夢がいるわけじゃないから帰りも1人だ。いつもなら歩夢と帰ってるけど、歩夢あいつ、今日本当は来る予定だったのに急に来れなくなったみたい。


自転車で帰っていると、途中で
「あー!千葉くん!」
と大きな声で呼ばれる。あれ、この声は…

「穂佳先輩ー。声大きいですよー。」
「うるさいなー。帰り?」
「そうですよー、先輩も帰りですか?」
「ちょっとスーパー寄ってから帰るのさ!」

たしかにここは先輩の家の方向ではない。


「おつかいとかですか?」
「おつかいっていうか、お母さんの仕事が夜だから、その日は弟のご飯とか作ってるんだよね。」
「めちゃくちゃいいお姉さんじゃないですか。俺の姉ちゃんもそういうのしてくれたらいいのに…」


と、流れで俺もついて行くことになった。先輩歩きだし、荷物運びぐらいならって思って。弟は小学3年生らしい。

俺の姉ちゃんはこの春社会人になったばかりだけど、家のこととか何もしないもんなー。





「ついでにうちでご飯食べてく?」
とも聞かれる。
「いいんすか?」
「いいよー、たまには一人増えるのもいいかなって。」

と、俺は先輩について行くことにした。



この日はミートソーススパゲティを作るみたい。弟のリクエストらしい。


「こいつ、弟の聖吾。最近テニス始めたんだよねー、」
「え、ほんとっすか?どこのチーム?」

と聞くと、聖吾くんは答えてくれた。
「南聖ジュニア!」
「ほんと?!じゃあ石岡コーチ?」
「石岡コーチ知ってるのー?」
「俺も南聖だったの!」

市内にはジュニアチームが3つある。俺の入ってたチームは拠点が南聖中近くの南公園という4面のテニスコートのある公園で、南聖中や南が丘中に進む近辺の人も多いが、星華の子も数人いた。それこそ、現在同じ部活の道哉も小6でテニスをはじめて、1年は同じチームだったのだ。俺は小3からやってるけども。

もう2つ市内にはジュニアチームがあり、北斗中や中央中にに進む人が大半のチームや、第二中や第一中に進む人が大半のチームがある。


「え、今西星の人誰かいるの?」
と穂佳先輩に聞かれる。

「2年生だったら長島先輩はいましたよー。あと工業科の福島先輩と。」
「あー、泰聖は小学校からやってたわ!」
「でも西星の人はわりと多いですねー。」

まあ、南聖中と星華中がわりといるからうちの部活。



それからの時間は、先輩の部屋でテスト勉強することになった。俺も家にいると勉強全然しないタイプだから、正直助かった。


「あ、千葉くんの後ろにある引き出しの中にB5のルーズリーフ入ってるんだけどとれる?2番目の棚にある」
と言われた通りに引き出しを開ける。

B5のルーズリーフは引き出しの奥にある。取ろうすると、物がひっかかり、その物を避けようと手に取った。

…けど、手に取ってはいけないものだったみたい。


「あー、入ってるの忘れてた」
と呑気に言っている穂佳先輩。

何が入ってたってコンドームなんだけどさ。まあ俺が今更反応するような物ではないんだけど。


「先輩自分で持ってるんすか?」
「そー。最初は元彼の持ってたの使ってたけど、付き合ってしばらくしてから全部私だった。まあ結果的にもう別れてるから、今は使わないんだけど」

どうやら二股かけられてたのも関係あるみたい。最後は結局、「俺との関係は身体だけ」って言われて、穂佳先輩は怒って別れを告げたみたいだが。

「言動聞いてたら千葉くんもなんか経験豊富そう」
なんてニヤニヤしながら言われる。
「うるさいですー。それ以上言ったら襲いますよー?」
「だって全然そんなことしなさそうだもん」

笑いながら言う先輩のことを、俺はキスをしてそのまま押し倒すようにベットへ倒れ込んだ。そのまま俺の右手は先輩の胸へと行くが、先輩から離れた。とりあえず、自分の中ではセーフだ。

「んー、実際はこういうこと考えてるクソ野郎ですよ俺は。」

雰囲気せいなのか、ついカッコつけてしまう言い方だ。意外すぎたのか、穂佳先輩は言葉も出ない。

「あんまり俺をその気にさせないほうがいいですよ。先輩が俺のことどんな印象ついてるのか知らないけど、俺の方が年下とはいえ所詮俺も男なんで、こういう思考の人間なんで。」


きっと先輩の元カレもそういう人なんだろうなって。って、別に俺もそんな色んな女とやってるわけじゃないんだけど。1人しか経験ないし。


「とりあえず、今の行動はすいません。」
「いいよ全然。慣れてるし。でも、正直今はこういうことに抵抗持っちゃってるから」

と、先輩は元カレと付き合う時の話をしてくれた。

「去年の夏休み前に部活で大怪我して部活も辞めて、しばらく保健室通いだった時に知り合ったの。励ましてくれて、仲良くなって。遊んだ時にヤって付き合ったみたいな感じ。でも、本当に好きだったよ。優しいし。」


泣き出そうとしている先輩に、俺は軽く抱きしめた。

先輩は好きだった元カレにとって自分は身体だけって思われてた、だからこの行為に自然と抵抗が出てしまう、とのことだ。それは、本当にすまないことをした。


俺も最近に失恋した身だ。ちゃんと話されたのをきっかけに吹っ切れてはいるけど、1年付き合ってたから思い出も色々とあるんだ。


恋愛って本当にわからないね。怖いこと、辛いこと、嬉しいこと、本当に沢山を経験する。ひとつの恋をしているだけで。







家に帰っても、先程のことばかり考える自分がいた。何故あんなことをしたのか、あんなことを言ったのか。考えていくうちに、とうとう気づいてしまったことがあった。


正直認めたくなかった。


俺、穂佳先輩のこと好きなのかもしれない。