中学のテニス部
(野川春太)
この日は日曜日。中学生が中体連の地区大会を目前にした日曜日で、南聖中のソフトテニス部のOBは、毎年この直前の日曜日に行われるハードな練習日に呼ばれるのが恒例だ。
高校生のOBを中心に集まっていて、今の中学3年生ともかぶってない自分たちの学年もいる。北戸野本ペアと、野川浅沼ペアと。他にもけっこういるが、今年は来ないみたいだみんな。続けてない人や、引退してバイト始めた人もいるからさ。
そしてその一つ下、高校2年生からは西星高校へ進んだ玲一や、南陵高校の2年生エースの小山に、白浜高校へ進んだ清川平苗ペア、今の高校1年生からは主将ペアとして団体県優勝を導いた三原藤井ペアと、西星高校へ進んだ千葉など1年生の代は沢山来ている。
俺は昨日まで緑陽で大会があって、ホテルに泊まって朝出発して今帰ってきたところだ。その大会も全国トップの選手と当たったため、俺らはあっけなくリーグ敗退したが。
南公園のテニスコート。ここもとても広いテニスコート。中学生も練習を頑張っている。この中体連前の練習が辛いんだよなー。1年に1度と言っていいほどの。合宿のほうがまだ気楽かもしれない。
俺らがいた時の原野先生は今年で第二中へ異動し、俺らが卒業したと入れ違いにやってきた福島先生が指導。実は玲一の父さんだ。
一般の大会でも何度か当たったことのある人だから、俺らも知っている。
中学生の練習後、OBで少し打つことになった。引退してから打ってない人もいるし、軽く運動程度だけど。
「なんでお前昨日全国トップ相手に2戦もしてるのにそんな動けるの」
と悠真に聞かれる。悠真は中学の時のペアだ。俺がまだ後衛やっていた時の。
「いや、逆にいい経験した次の日だからじゃない?」
「そっかそういうことか…じゃなくて相変わらず春太は疲れないんだな」
「昨日終わったあとはクソ疲れたけどねー」
本当に、全国トップ相手に2戦した直後は死ぬかと思った。とにかく体が動かない。全国トップって本当にすごい。昨日の試合で学ぶことも沢山あり、いい機会になったと思う。
「春太もう引退しても毎日テニスやってろ」
と真司からも言われる。
「真司は引退してからテニスした?」
「1回中浦先輩に連れてかれて星華行って打ったぐらい」
真司はインハイ県予選で引退。まだ3年生が出れる大会は残っているが、この先の大会も出ないみたいだ。
ってまあ、俺も実質引退してる身だけど、出れる大会かなり残ってたおかげで結局最後まで残ることになったよ。来週も県の一般の大会あるし。
「元ペア対決しよー!」
と突然智が言い出す。
「え、てことは俺のペア悠真でしょ?俺後衛?前衛?」
俺後衛しばらくやってないけど、中学の時は後衛で、ペアは前衛の悠真だった。
「たまには後衛の春太先輩も見たいかも」
と、大輔にまで言われる。
「まじか。まじかよ。」
まあやってみるか。
意外と動けていた自分がいた。中学の時はどちらかというと悠真のほうが攻めて俺はそれを支える感じだったが、この高校3年間で俺のプレーも変わったのか。積極的に動くようになった気がする。コーチには昨日、それが俺が高校で成績伸びた1番の理由って言われた。
昔水泳やっていたからか、自分は長距離などが得意で持久力あったのがあり中学は後衛になったが、高校では途中に前衛を勧められて。
久々に悠真とペアで、北戸野本と打ってみた。この感覚久しぶりだな。
「もう俺春太と組めねえわ。俺が下手すぎて申し訳なさすぎるいろいろと」
「そんなこと思わなくていいよ俺も全然まだまだだから」
「いやー、昔組んでたやつが全国選手になるもんなー。」
って悠真も俺に言うけど、こいつも全然上手いと思うよ。高校でも2回くらい当たったことあるけどさ。こいつみたいな迫力のあるプレーを俺も目指していた部分もあるし。
「俺も去年から春太に勝てなくなって、インハイの地区予選で決勝勝てたの死ぬほどうれしかったわ」
と智にも言われる。
「中学の時は決勝とかで当たったりとかしたら必ず負けてたのになー。」
「はいこいつうざーい」
話したり打ったりとても楽しかった。あっという間に夕方になるが、彪冴が突然、「飯食いに行く人ー!」なんて呼びかける。
集まったのは俺と悠真と真司と大輔と彪冴と歩夢と千葉の7人。それに対抗して智と玲一は2人でラーメン食いに行ったが。智らしいことしやがるな。
「そういえば千葉って別れたの?」
なんて千葉に聞く彪冴。
「あー、とっくに別れてますよ」
と千葉がいうと横から歩夢が
「こいつまた年上狙ってますよー。」
と入ってくる。
「お前年上好きかよ」
と悠真もつっ込む。
千葉が前付き合ってた元カノも千葉から見てひとつ上の人だ。そして今もいい感じの人が、年上の人らしい。泰聖や柊弥が同じ中学だったと。そして俺は千葉の話を聞いてて今まで気になったことがあった。
「そういえば千葉が今いい感じの2年の子って普通科の3Eに元カレいる?」
「あー。そうらしいですよね」
「いや、千葉の言ってる女の子の名前なんか聞いたことあるなーって思ったら、華月が教えてくれたのさ。」
千葉が今好きなのであろう国際科2年生の新井さん、俺と同じクラスの奴と付き合っていた。でもそいつは教室でもその子の悪口言ってて、スタイルは良いから身体だけでいいとか言ってたし、最終的には二股していたのもクラスで言ってたから、それをクラスのバド部の女子が女の子本人にチクって発覚して別れたみたいだけど。それでしばらくE組荒れてたんだよな。自業自得って言ってやりたいけども。
「西星のソフトテニス部って最近年上と付き合う率高いんですね。真司先輩も」
と気になっていた彪冴が言う。
「俺はまあ、仲良い部活の先輩のおかけで知り合えたというかそんなんだけど…」
と真司が答える。真司も彼女は年上だ。
あと華月と泰聖と、年上好き多いなこの部活。
「多分この中で何もしてないの俺と歩夢だけだよ、」
と大輔は歩夢を見ながら言う。
「いやー。出会いほしっすわー。」
「それなー。」
歩夢も何気に彼女できたことなかったっけ。こいつの姉ちゃんは中学から恋愛経験あるほうだし、今も1年以上付き合っている彼氏いるみたいだけど。
そんなこんなで話して、中学の時の部活の話になった。懐かしい話ばかりだ。
「中体連か…うっ、悪夢が…」
と真司が想い出すように言う。
「あー、県大の時の伝説のダブルフォルト連チャンね」
俺が言うと、
「うるせー。その後も俺が足引っ張ってあっけなく敗退したわ」
と真司も笑いながら言う。
あの時の真司はほんとに調子悪かったのか緊張してたのか知らんが、ダブルフォルトを連チャンで決めてきた。個人戦で県第二シードだった北戸野本ペアだったが、登場した2回戦で緑陽中央中ペアに敗退していた。
俺もこの時県大会は出たけど2回戦で負けたな。しかも江南北中の全中出場ペアに負けたなー。それこそ現在は星の里高校の藤守くんと谷本くんペアに。って考えたら高校で1回だけ藤守くんに勝てたのは本当に嬉しかったなー。
「北戸先輩のダブルフォルト連チャンは今の後輩にも語り継がれますよ、原野先生のせいなのと、その時たまたま見てた福島先生もそれ知ってますから」
と千葉が真司に言うと、真司はとても嫌な顔をしていた。伝説刻んでんな真司こいつ。
福島先生はこの時は星華中の先生で、この県大会には永井金井ペアが出場してたし、この2人と一緒にこの試合を見たのも覚えている。その時に福島先生もいた気がする。
「ほんとに、中学の最後の最後があの試合とか後悔しかなかったわー。」
ちなみにあの後の真司は萎え萎えだった。
「去年はそれに負けない出来事起こりましたけどね、千葉が」
と歩夢が話を持ってくる。
昨年の南聖中のチームは、冬の新人団体戦で県大会優勝するという強者チームだったが、中体連では地区大会決勝で三番勝負の末、南が丘中に敗退したという結果だったみたいで。昨年は南が丘中と南聖中が強かった代。
「決勝で1番手だった三原藤井が負けちゃって2番手の広間篠永が勝って、それで3番手だった俺らが決め手だったんですけどね」
と千葉は思い出したくなさそうに説明はじめた。
「あの時は俺もボロボロだったけどさー。長江強すぎなんだってー。」
歩夢たちが負けたのは南が丘中の長江山岡ペア。個人戦でも県大会へ出場し、団体戦では県大会優勝して全中出場に導いたペアだ。その長江は今は西星高校で、早速大紀と組んでインターハイ予選も個人戦で県大会出ていた。
「ファイナルで追い返して追い詰められての状態で、南が丘ペアがマッチポイントの時に俺は最後の最後でスマッシュを打ったはいいけど華麗に外してアウトかまして終わりました」
と、千葉が言ったあとに歩夢が動画を見せてくれた。
「いやー、千葉に悪いけど面白いなこれ」
と彪雅もめちゃくちゃ笑っている。
「どうせこれも一生笑いもんになりますよね」
南聖中ソフトテニス部は中体連で何かしらの伝説を作るということはわかった。んっとに最高だな南聖中。
また南聖中ソフトテニス部で集まれる日があるかな。先輩後輩関係なく、とても暖かい。なんだかんだこのメンツ、大好きだわ、俺。