北別遠征の夜A
インターハイの県予選の遠征に来ている西星のソフトテニス部。ほとんどの3年生は最後の遠征になるわけだ。
夜の空き時間、優聖と瑛太の部屋に、華月と春太がやってきた。
瑛太「おー、一人部屋組は暇なんですね」
春太「1人クソつまんねえからお前ら代われ」
今回の遠征、一人部屋の人と2人部屋の人がいる。男子は2人部屋の人の方が少ないが。この2人と、陽介と玲一、 真司と晴日だけだ。男子は今回の遠征は16人と大所帯だ。
華月「つーか優聖、瑠菜ちゃん彼氏できた?」
優聖「あー、先月からできたらしいねー。同じクラスの陸上部の人らしいよ」
華月「いや、この前めちゃくちゃラブラブしてる星華ジャージいるなーって思ったら瑠菜ちゃんなんだもんびっくりだわ」
優聖「んっとに家でもだよ、やめてくれって思う」
華月「てか瑠菜ちゃん何年生?」
優聖「中3」
華月「あー、」
優聖の妹、瑠菜ちゃんには最近彼氏にができたみたい。中学3年生で、テニス部にも入っている。
春太「え、まって、俺の妹と同い年」
瑛太「春太の妹も中3?」
春太「うん。市内の中3の中ですっげえ有名人らしいよ俺の妹」
優聖「ちょっと瑠菜に聞いてみよ」
春太「今の彼氏が星華中の男バスらしいから星華中の人みんな知ってそうじゃない?」
春太の妹は顔も広く知り合いも多く、男子ともすぐに仲良くなるタイプで、恋愛経験も多いみたい。春太同様、思ったことははっきり言うタイプなのでよく妹と喧嘩もするみたいだが。
瑛太「春太の妹の名前なんていうの」
春太「理沙。」
優聖「おっし、聞いてみるわ」
華月「瑠菜ちゃんもけっこう顔広い子じゃない?」
優聖「そーだね。南聖なら知ってそうじゃないかな。玲一の妹とも親しいし。」
と、しばらくすると、優聖は瑠菜ちゃんから返信が来た。春太の妹のことを知ってるか聞いたらしい。
優聖「あー、知ってるって。南聖の女バスでしょ?だって」
春太「あーそうそう!」
優聖「その、春太の妹の彼氏が、瑠菜の彼氏と仲良いんだって、同じクラスだって」
春太「へー。そんな繋がりが」
優聖「でもヤリマンって言われてるって」
春太「ですよねーー。」
春太も何度か見たことあるらしいが。まあ、君も変わらないでしょう、春太くん。
春太「多分来年西星来るよ、理沙」
瑛太「高校決めるの早いねー」
春太「あいつバカだから西星しか行けないんだ。商業科行きたいんだって」
華月「写真ないの?」
と、春太はスマホを出し、妹のSNSのアカウントから写真を見つける。
瑛太「あー、商業科にいそう。」
優聖「でも春太と似てなくない?あんまり」
春太「それはよく言われる。でもこいつ化粧バッチリだから。」
華月「でもなんか性格似てそう」
春太「それは言える」
と、その時に、優聖のスマホに1件の通知が。
それを見た瑛太は、優聖のスマホを取る。
瑛太「おーー??」
優聖「ん?誰からきたの?」
瑛太「優聖の好きな子」
優聖「あー!!おい!!返せ!!!」
華月「何?汐音がどうしたの?」
瑛太「じゃあ来週の水曜日会おうだってーー」
華月「え?なんで?」
優聖が長年片思いしている女の子だ。どうやら会うみたい。
優聖「来週の県大会がさくら市で、ホテルも駅前だから自由時間うろちょろできるし会えるかなって言われた」
春太「大丈夫なやつなのそれ?」
優聖「いやー知らんけど。でもわりとみんな同じことやってるみたいだよ」
汐音ちゃんの通っている星の里高校は、地方からも沢山の入学生がいる高校で、男女交際が禁止されている女子バドミントン部は汐音の他にも、遠征で地元へ行くと仲良い男の子と会っている人とかも多いみたいだ。
優聖「でも禁止されてるのは男女交際だし、先生にバレなきゃいい見たいな感じだから部活の中でも恋バナ多いらしいよ。俺の存在も知られてるもん」
瑛太「一昔前までの西星の女テニみたいなもんだな」
春太「女テニも先生変わってから男女交際OKになったもんね、それこそ智と結愛がその第1者」
西星の女子ソフトテニス部に恋愛が解禁したのは昨年の春だった。顧問の先生が代わったのがきっかけだ。そのすぐに結愛は智と付き合ったし。
華月「優聖のめちゃくちゃ見に行きてー。」
優聖「あー別にいいよ?汐音もペアの子が付いてるみたいだし」
華月「えー、行きたーい!」
優聖「じゃあ言っとくわー。」
突然の華月の参加も決まったわけで。春太と瑛太は、報告を待ち望んでいるようだ。
と、突然瑛太はスマホを見て、嫌な顔をし始めた。
瑛太「うーわ、ふざけんなあの先生」
連絡来たのは瑛太の彼女、七葉からだが、どうやら先生からの伝言を伝えられただけだ。
瑛太「なーんで土曜日に講習あるんだよー、しかも強制とか死んでくれー。もう雨降って大会延期しろー。」
春太「なんだようるせえな」
瑛太「だって金曜日に帰って次の日土曜日なのに講習で学校とかきつくない?」
商業科の瑛太は今月末、簿記の検定を受けるため、土曜日に講習が入ったらしい。
華月「お前この大会終わっても放課後休めねえんだな」
瑛太「そーだよ。でも今まででも大事な大会近いからって講習サボってたのに」
春太「最近瑛太が講習で遅れるなんてなかったけどもしや1日も放課後講習行ってない?」
瑛太「うん。その分宿題大量だったけど」
優聖「こいつ今日も持ってきてるよ」
華月「へー、どんな感じなの」
と、瑛太は持ってきた簿記のプリントを見せる。
春太「なにこれ、どうやってどうやるの」
瑛太「説明しにくいなー。」
華月「え、これどうやって答え求めてるの」
瑛太「仕訳してー、計算してー、」
優聖「商業科わからん」
瑛太「慣れるまでクソわかんないよこれ。もしかしたら大学でやる人はやるかもね」
たしかに、大学行って簿記を勉強する人もいるかもしれない。
華月「なーんか、もう最後の遠征かって思うと早いよね」
瑛太「華月たちはもう今日の個人戦で終わっちゃったもんね」
優聖「結局俺らの遠征ほとんど恋バナした気がする」
春太「確かにそうだな、」
華月は個人戦のみの県大会出場だが、2回戦敗退で終わり。ほか3人は団体戦がまだ残ってるし、大会で上位を残し続けた春太はまだ他にも大会が残っている。
この人達が最後に出れる国体予選の開催は市内なので、最後の遠征となるのだ。
華月「春太についてるキスマがあーだこーだから始まらなかった?」
春太「あー、選抜予選の時の。司まじでうるせえもん広まるわ。インドアの時も西支部の時もみんなして」
優聖「いや、でも恋バナ自体は泰聖の片思いからだから新人戦か」
華月「俺あの時みんなに彼女いること言ってなかったしね」
瑛太「インドアの時が1番恋バナしたよね移動時間暇すぎて」
優聖「あれは泰聖もいろいろとやった直後だったからねー。」
遠征ほど恋バナが絶えない部活。インドア大会の県大会ではバスの中がとても騒がしかったとか。
華月「瑛太は自分の恋バナしないくせに」
瑛太「俺はそういうキャラ貫き通しますー。」
春太「瑛太最近やったのいつさ?」
瑛太「ほーら春太はすぐそういう事聞くー。この変態」
春太「いや普通に聞いてるだけなんだけど」
瑛太「うわガチトーンで言われた。お祭りの後……」
優聖「え、数日前」
遠征前日にあったお祭りのあとに瑛太は彼女と過ごしたらしい。その時に…。
と、瑛太は突然着ていた服を脱いだ。
瑛太「やばくないこれ?」
優聖「七葉って意外とキスマけっこう付けるんだね…」
華月「それは思った」
春太「瑛太もう人のこと言えないな」
瑛太「なんとでも言いやがれ。俺は変わらず春太にも色々言うからな」
今まで春太のことをいじってきた瑛太。瑛太はあまり自分の話をするよりも、人の話を聞いていじってるほうが主。
瑛太「春太はいじりがいがあるもん」
春太「なんでよ」
瑛太「だってなんか言い返しが面白い」
華月「瑛太って意外とSだよね」
優聖「春太も彼女の前ではSだけどね」
春太「んじゃあ瑛太お前彼女の前でもやばいだろうな」
瑛太「やばいって言われてもわかんねえけど。…まあ?」
なんだかんだいつも自分の話をしたがらない瑛太。そして濁すように言う瑛太。意外とこの人も相当やばい人間なのではないかと思ってしまった他の3人。
優聖「まー、みんな恋してますね」
華月「2年なんて非リアが陽介だけになる日も近いんじゃないかレベルだよ」
瑛太「将斗も彼女できたし、柊弥もいい感じの子いるらしいし、玲一も七星ちゃんといい感じだし」
春太「司がどう動くかだけどね七星ちゃんは」
華月「でも玲一のほうが近寄ってる感はあるけどね」
あ、ちなみにこの人達、司が数日前に七星に告白したことはまだ知らない。
最後の最後まで遠征では恋バナが耐えない西星テニス部。なんだかんだ、話込めて良い夜になっていたのであろう。