出会いと感情と2
(藤木柊弥)
6月に入ってしばらく経つ日曜日。この日は一般の大会があった。
先日行われたインターハイ県予選では個人戦も団体も惜しくも敗退した西星高校は、 ほとんどの3年生が引退。でも滝下先輩と野川先輩などはまだ出場できる大会残ってるし、他にも川岸先輩や川島先輩など、国体予選も出場する3年生もいるので、全員が引退したわけではない。でもまあ大半は引退してますね。国体までいてほしかった気もする先輩も多かったけど。
そして一般の大会は高校生、大学生、社会人チームの人、そして市外からの参加者もいる大会だ。その中でも社会人チームには俺の兄の悠斗も出ている。俺は今回は1年生の涼平とペアだったが、一般チームのペアに敗退した。
その大会の終わったあとに、俺らが遠征でいない時にあった千葉の話を涼平たちがし始めるから、一部の人はしばらくそのままテニスコートのベンチで喋っていた。
どうやら千葉、先週部活に来る前に、女の人と歩いていたらしい。
「んで誰なのあの人」
と涼平が千葉に聞いた。
「え、あれ星華中だった人でしょ?2年生の」
と道哉が言う。
「ちょっとまて」
とりあえず俺は言う。心当たりがあるぞ、ものすごく。
「はい?」
「もーしかして…星華公園のテニスコート側の入口の近くに家ある人とか言う?」
「あー、言いますねー。柊弥先輩勘良すぎ」
ほーらやっぱり穂佳じゃない。
それを聞いてた陽介も
「まって俺も分かったわ、千葉と柊弥ってこの前遊んだんでしょあいつと?」
と言う。そういえば陽介が中学の時に好きだったっけ、穂佳のこと。振られてたけどね。
「あ、俺が熱出てダウンした日だ」
と歩夢まで。そういやあの日、本来なら歩夢もいたな。
なんて話してると千葉から
「柊弥先輩はどうなんすか?」
と聞かれてしまう。くそ、千葉から反撃くらったわ。とりあえず千葉に向かって、てめー死んどけとは言っといた。
「告白保留したのはいいけどさ、ここからどう話切り出そうかが問題」
と俺は思っていたことを言う。ちなみにこの中だと陽介と千葉しかこの話知らないから他の1年生は何の話かさっぱりわかってない。
「え、先輩もしかしたら彼女できそうなんですか?」
なんて歩夢にも聞かれるし。
「俺がイエスって返事すればね。でもイエスで返すつもり」
「お?!」
いやみんなうるせーよ。陽介に至っては「2年生の非リア率どんどん減りやがる」なんて落ち込んでるし。まあぶっちゃけあと陽介ぐらいだろ何も無いの。玲一もなんだかいい感じみたいだし?
「いずれ陽介先輩だけになりそう2年生の非リア」
と千葉が陽介に言うと、陽介は千葉のことをぶったたく。
「本当に90%の確率でこうなること目に見えてる」
「うるせえよ柊弥の裏切り者」
とりあえず陽介いじりはこの辺にしとこう。
いつ返事を言おうか、完璧にタイミングがわからない。俺も部活、愛菜はバイト。なんとなく連絡してみると、お互い部活もバイトもないテスト期間に少し会えないかということになった。まあ、少し話すくらいなら。
告白されて返事するのも初めてではないし、むしろ数回経験あること。なのに、何だろう。やけに緊張する。
でも、あそこまで真っ直ぐな告白は初めてだった。だからなのか。
「ごめんね、せっかく告白してくれたのに、俺の勝手で長い期間保留しちゃって。」
「いや全然!」
「でも正直ソワソワしてたしょ?絶対」
「…しないわけないじゃん」
「だよね、ごめんね!」
たしかに半月以上は経っている。こんなことしたのも初めてだった。本当にすいません。
「俺もいつのまにか惚れてるんだなぁ…、」
と、俺は手を握りながら言う。
「え?!」
「まあ、正直最初から気はあったほうだよ。でも、心が追いつけていなかった…って言ったら言い訳か」
「そんなことないし、むしろ嬉しいよ?」
「はは、ありがと」
とりあえず、話だけして帰るのも何かというわけで、カフェへ向かった。この前とは違うところだけども。
「ここ私が1番好きなとこなんだ」
と紹介してくれる。ここ、俺も聞いたことはある。あ、前に宏斗がつぐみと行ったって言ってたっけ。土日は超混みだよって言ってたな。今日は平日だから人もそこそこ。
「ここ市内のカフェで1番有名なところなんでしょ?」
「そう!昼はランチあるし、学校からも近いし丁度良いかなって」
実は今は、テストで午前で学校は終わるので、バリバリ昼間なのだ。ランチの時間はまだ終わっていない。あ、テスト勉強しろとかそういう気遣いは今はいらないかな。
カフェでスイーツとかは頼むけど、昼間とかに行かないもんだから、ランチは食べたことない。でも、オシャレだな。
「やっぱ色々と行ってんだね愛菜も」
「趣味の一つだからね」
「これからもおすすめのとこ沢山連れてって?」
「市内外色んなところ連れ回すけどいい?」
「金があればね…」
金欠にならないように頑張ろう。バイトしている訳でもないし。
俺はキーマカレーを注文した。この店のキーマカレーが美味しいとは聞いていたから気になってはいた。
「って忘れてたけど、俺ら一応テスト期間だよね」
「現実言わないでよー。夜勉強するからー。」
「ま、今日ぐらいいっか。俺も楽な教科しか残ってないし」
「いいなー。こっち明日数Uあるのさ。」
「あーファイトっす、俺数学は今日で終わったー。」
俺らは学科が違う。俺は普通科、愛菜は国際科。
そこから少し歩くことになった。とりあえず、自転車を置きっぱなしにしてるから学校までは。
歩いてる時、突然雨が降り出した。
「うっそ?!雨とか聞いてねえよ!」
「とりあえず学校すぐそこだから一旦駐輪場で雨宿りしよう!」
と、学校の駐輪場へ着き、雨宿りをすることに。
数分してもやむ気配がないどころか、どんどんひどくなってる。
「1回俺んちくる?ここからは近い方なんだけど、風邪ひくよりは」
「あ、それじゃ行ってもいい?」
「おっしゃ、あと少し飛ばすぞ!!」
俺も本気で自転車を漕いでいるけど、平気な顔してついてくる愛菜。こいつ、体力けっこうあるんだな。俺の方がヘトヘトになりそうだ。
家に着くと、丁度今日仕事休みだった兄の悠斗が、女の人と一緒にいる。というのも、兄も今月入ってすぐぐらいに新しい彼女できて。友莉愛さんだっけ。兄ちゃんの元ペアの南田先輩が高校生の時にバイト先が同じなのと、道哉の姉さんである結奈先輩の友達ということで出会ったみたいだが。
「うわ、お取り込み中だったし」
リビングに入ろうとしたけど2人はくっついていた。
「別に変なことしてねえし、お前も女連れてるし」
「そこは今は突っ込まないで。」
とりあえずリビングには兄カップルがいるので部屋に上がる。ついでにこれ持ってけ、と渡されたのはクッキー。ずっと家に置いてあって誰も食べなかったものなんだけど、ついでだから冷蔵庫にあったぶどうジュースと一緒に持っていった。
「ちょっと、部活のもの散らばってるけど気にせず踏んでいいから」
「畳んであげるか?」
「え、お願いします」
とても綺麗に俺の部活着を畳んでくれている。こういうことされたことないから、感激したよね。
「愛菜ってさ、元カレとかいるの?」
と俺はふと聞いてみる。
「え?」
「いや。意外と男慣れしてるなーって思って」
「まあ、付き合う寸前までいった人ならいるけど…。散々やらされて、最終的には彼女作って逃げたけどその人。」
そうだったのか。聞けば高校入学したばかりの話で、入学前からラインで話していた工業科の同級生といろいろとあったみたい。名前聞いたけど、将斗と小学生から仲良い友達だったわ。そういえば将斗の話だと、女安定してなくて最近は彼女作ってないって言ってたっけ。
「って、柊弥も元カノけっこういるんでしょ?」
「穂佳情報ですかそれ」
「そうだね。中3の時のこととか聞いちゃった」
「いやふざけんなあいつ」
中3の時に付き合ってた人が1番いろいろと進んだだろう。高校生に上がってすぐに別れたけど、初めてヤったりしたのもその時の元カノだ。高校生上がってすぐの話だが。穂佳と仲良かった人だから、いろいろと話聞かされてたんだろうな。
そしてその人と別れたところにやってきたのは、昨年後半に付き合ってた同じクラスの雪乃。雪乃にはあまり手は出してない。同じクラスってのが身近すぎたのもある。だから、同じクラスの人と付き合ってる瑛太先輩とかとても尊敬するなって思って。
「って、私たち付き合うことでいいんだよね?」
「いや、そうだから今日呼んだんだけど」
「じゃあ遠慮なく隣にいれるってことだね」
「そういうことだね。」
って改めて思うと緊張するな。これ。
「じゃあ、もうこうやってくっついてもいいってことだよね」
と俺は愛菜によしかかる。
「考えてみると恥ずかしい」
「ま、これから慣れてこーや。」
俺もやっと、新しい1歩を踏み出せた。
次こそはずっと幸せに、やっていきたい。
なんだかんだ自分が一番、幸せだよね。
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