北別遠征の夜3
インターハイ県予選も終盤を迎えようとする日。次の日で団体戦が終わる。
遠征最後の夜、泰聖と陽介と柊弥と玲一の4人は、一緒にロビーへ行く。今回の宿泊は一人部屋の割合が多く、でも陽介と玲一は2人部屋だということだ。
泰聖「ちょっと柊弥」
柊弥「今の泰聖はインスタ映えだわ」
泰聖「そーやってお前は」
柊弥「泰聖専属のカメラマンなったる」
どうやら泰聖撮影会が始まったようだ。
柊弥はスマホのカメラアプリにある一眼レフ機能を愛用していて、良い写真も沢山撮るのだ。
玲一「なにこれ」
陽介「知らん」
と、ロビーのソファに座りながら話している彼らのところに、他の学校の人がやってきた。
宙「あ、失礼しましたー」
泰聖たちの様子を目に入れてしまって一瞬固まって去ろうとしたこの人、実は、南春日市の赤平学園大学第三高校、略して赤平大三高のエース、松島宙だった。
泰聖「あ、なんかこちらこそすいません」
宙「あれ、もしかして西星ですか?」
陽介「ここ4人全員2年生ですけど西星ですよー。」
宙「おー2年生か。」
と、宙は一瞬去ったが、近くにいた仲間を引き連れて戻ってくる。
泰聖「え、あれ赤平大三の松島宙さんだよね?」
陽介「それな、びっくりしたんだけど俺」
と、こっそり話すこの人達。そしてそれは当たってる。
宙は3人ほど連れてきた。
駿介「あ、陽介じゃん、久しぶりだー。」
陽介「駿介じゃん!びっくりした!」
川中駿介くん、この4人の中で唯一2年生。陽介とは中学で当たった時に、親しくなったとか。でも話すのは中学の県大会ぶりみたい。ここでなぜかと連絡先を交換しはじめた2人。
蒼依「これなら他の奴ら連れてくるべきだったな、村江は特に」
玲斗「とりあえず連絡してみるか、ロビー来いって」
宙「んーでも何気に西星高校の人って今まであまり関わりなかったかも。春日高なら是永先輩とは親しいけど俺」
と、赤平大三高の方々が言ってるように、西星高校との関わりはない。でも、どちらの高校も活躍がたくさん見える学校なので、お互いの存在はみんな知っていた。そして松島宙、大谷蒼依ペアは昨年度インターハイ経験もある。
陽介「むしろなんか、ここで俺達が騒がしくしちゃってすいませんしか言えないっす」
蒼依「いいんだよ全然。で、花田くんと長島くんと福島くんだっけ!ごめんもう1人わからない!」
玲一「え、俺の名前知ってたんすか!」
宙「わりと俺ら西星の試合見てるからねー。選抜予選の決勝リーグはバッチリ見てたよ」
柊弥「俺は今回が高校初の県大会なのでしょうがないっすよ。中学も団体しか県出たことないし。」
泰聖「こいつの兄ちゃんは多分有名人ですね」
柊弥「藤木悠斗って分かります?俺の兄ちゃんなんですけど」
玲斗「南田藤木ペアの?」
柊弥「そうです!」
玲斗、宙、蒼依の3人は南田藤木ペアの試合を見たことある。というのも、昨年のこのインハイ予選県大会で、彼らの先輩ペアが個人戦で南田藤木ペアと当たっていて、彼ら3人もその試合を見ていたのだ。
宙「いや、俺と蒼依のプレースタイルと似てて注目してたんだよね。あのペアは。」
陽介「むしろ西星の中でもあの先輩達くらいでしたからね、あんなややこしいことをこなしてるの。」
南田藤木ペアはとても注目されるペアだった。上の大会でも結果を残していて。
駿介「あ、村江たち来ましたよ」
と、駿介が気づくと、その先には赤平大三の村江一成・山中竜太ペアがこのロビーへ到着。
宙「あれお前らだけ?」
竜太「岸尾は風呂はいってて、楢野は見たいテレビあるからしがみついてて、鈴波は2人行かないから行かないーだそうですよ、」
一成「って、西星高校のみなさん?!」
どうやらこの2人、宙たちが西星の数人といることを知らされていなかったようだ。
蒼依「4人とも2年生だからあんたらタメだよ」
一成「まじすか、っていうか先輩たちいつの間に…」
駿介「あ、こいつ、遠くなかったら西星行きたかったって言ってたぐらい西星推しだから」
村江くんは、中学1年生の時に兄の試合を見に選抜予選へ行った際に、たまたま西星高校の団体戦の試合を見て、とてもかっこよくて惚れていたみたい。当時の西星高校は相田秋田ペアという、西星高校ソフトテニス部の歴史をたくさん刻んだペアが主将で、他にも当時の先輩後輩ペアである大久保広瀬ペア、そして当時1年生の水原安川ペアなどがレギュラーだった。
相田秋田ペアは2人とも星華中の先輩でもあるので、学年は離れているが泰聖たちは関わりもある。
一成「いやほんとに、南春日から遠すぎて…」
柊弥「下宿とかにもしなかったんだね」
一成「私立の上にそこまで金かけられないって親が…」
泰聖「しかも西星、部活強いとこ多いのに学生寮存在しないから、下宿も探すところから始まるしねー。」
西星のソフトテニス部に地方の人がいない理由はここにあるかもしれない。と思った泰聖たちであった。
宙「でも西星行ったら出会い多そう」
柊弥「そうですねー。人も多いんで」
玲斗「俺たち男子校だからさ。テニス以外の女子とあんまり関わりなさすぎて」
玲一「って言ったら、俺は工業科なんですけど、男しかいませんよ。」
柊弥「いーやこいつこう言ってますけどいい感じの女の子いますよ」
泰聖「それお前もだろ」
柊弥「話が違うぞ」
たしかにまあ、西星高校は割と恋愛が盛んだ。テニス部も、彼女持ちは多数いる。
蒼依「西星ってコーチとか顧問とかどんな感じなの?」
宙「蒼依お前いろんな学校の人にその質問してるよな」
蒼依「言われてみれば東支部の時に緑陽栄の人にも聞いた気がする」
駿介「んーまあ、三高の顧問はちょっとひねくれてますからねー。」
蒼依「でも西星は前から試合とかで見てたけどフレンドリーに感じていたし。てかSSTクラブの平さんでしょ?」
わりと先生への愚痴がこぼれるみたいの赤平大三高。松島大谷ペア、昨年の秋季選手権大会で平さんと当たったことがあるみたい。その時に、平さんのことを見たことあると思った蒼依は、この人西星の先生だ、と気づいたらしい。
泰聖「そうです!コーチは平さんですよ!」
陽介「結構ノリが若いというか…。でも練習中は厳しいし怒らせたらやばいっすあの人」
玲一「でもどちらかというと顧問の池田先生のほうが正直イラつく時あるというか…」
泰聖「それはある。」
まあ、この人達も何か色々先生に思うことはあるらしいが。
泰聖「でも前に俺と春太先輩とコーチの運転で北別遠征行った時は恋バナ盛り上がりましたよ」
柊弥「池田先生は俺が恋愛で悩んでたこと部活終わりに聞いてくれたことありましたわ。」
宙「そういうのいいよねー。」
竜太「まあ中野上先生そんな若くない…」
玲斗「むしろ俺らの顧問に若いのはいない」
柊弥「池田先生はまだ20代ですけど平コーチは全然30代半ばですよ?子供も中学生になりましたし」
蒼依「え、全然見えない」
泰聖「まあノリの良さは全然現役と同等ですからねあのコーチ」
とりあえずノリが良い西星の先生。やっぱテニス部のノリというものなのか。自然と合っているあたり。
陽介「でも!!副顧問の先生は本気でイラつきますよ!!あの60近くのオッサン!!」
玲一「陽介ほんとに三田先生嫌いだね」
陽介「あの先生さえいなくなればテニス部もパラダイスなのになー。」
玲斗「三高の中野上先生も60代近いけど、俺らの話聞いてくれないこと多いよね」
竜太「英検の二次試験あるって前々からちゃんと言ってたのにその日の大学との合同練習休んで怒られるし」
一成「あと勝手に色々と決めますしねあの先生」
蒼依「都合良い時だけ部長お願いーとか言ってくるし」
駿介「多分言い始めたら止まらなくなりますからやめましょ」
宙「でも蒼依はあの先生へのストレスめっちゃ貯まってるよね」
蒼依「でももうすぐ解放だぜ?やった」
赤平大三高の部長は蒼依。普段はあまりイライラとか見せない蒼依でさえイライラを見せてたりしていたのだ。
陽介「赤平大三の先生どんな先生でしたっけ」
玲斗「明日見てみ。俺らのほうにいるオッサン先生だから」
駿介「なんかこの辺だけ禿げてるジジイって説明すればわかりやすいと」
宙「お前それ先生に聞かれてたら殺されるよ」
柊弥「とりあえず、明日探してみますね」
と、顧問トークをしていたところでもうすぐ22時。いい時間なので、ここで解散だ。
宙「ありがとなー!あと急にお邪魔してごめんよ!」
泰聖「こちらこそ!楽しかったです!!お互い明日頑張りましょう!」
玲斗「いやー、1回は西星と当たってみたかったね」
駿介「もし今後俺らと当たることあったらよろしく!」
陽介「こちらこそ!」