ある女の子との関係2
(竹原道哉)
その次の日、一学期の最後の登校日だった。普通に学校が終わり、終業式では先輩が伝達表彰されていたりしていた。
学校が終わり部活に向かうと、俺を見つけた千葉が、とても何かを言いたそうにやってきた。
「なあ、聞いた?」
「何を?」
「生田真緒が昨日彼氏じゃない男と一緒にいてキスまでしてたって話。もしかしてお前?」
「あー。そうだけど」
「俺のクラスの奴が通りかかった時に見えて、最後までずっと見てたって」
まあ俺はバレようが何しようがどうでもいい。問題は真緒側なんだから。って、責任放棄するわけじゃないよ。
どうやら千葉のクラスの人が昨日たまたま真緒を目にして、ひっそりと俺らの様子を見ていたらしい。それが工業科の中でも広まっているとのこと。
「んーでも男のほうが道哉とはみんなわかってないんだけど」
「あーなるほど。」
「まあ、でも彼氏じゃない男といたのは確かだだって。」
「俺と新堂先輩見た目全然違うしな」
新堂先輩は背は低い方で、柊弥先輩より少しデカいくらいだ。俺は一応180はあるから、見た感じで分かるんだろうね?
「道哉めっちゃ余裕ぶっこいてるね」
「いや別に、俺はどうでもいいし。」
「お前やっぱクソ野郎だな」
「何とでも言って下され」
別に終わるなら終わるで良いし、続くなら続くで良いし。ここまで自分でやっといてだけど、自分のわがままで先輩に迷惑かけたくないし、とは。
でもこれ以上接していたら、俺自身も取り返しのつかないことになるから今のうちに、って思って。
真緒が浮気している、という噂は部内でも流れるのは早かった。テニス部、そして星華中からすれば新堂先輩は身近な人だから。
「道哉何か知らない?」
と長島先輩に聞かれる。いや、俺に聞くんすかって。真緒と仲良いから聞いてるんだろうね、俺に。
「まー、その、はい。」
「あ、知ってるんだ」
と話していると永井先輩が俺の耳元でこう言った。
「てかもしかしてお前?」
なんて。
「いや、永井先輩なぜそれを」
「2人のとこ見たって俺の妹が」
「あーなるほど。」
意外と目撃情報多いな。まあ外にも出てるからな。そして千葉にも、もうお前言っちゃえよ、なんて言われる。まあ、ここまで来たら、言うしかないか。
「俺ですそれ」
と、言うと2年生の先輩達には唖然とされる。
「まじで?お前まじで言ってる?」
と柊弥先輩には迫られる。
「もう、終わりにしようと思いますけど。俺もこんな中途半端な状態嫌ですし」
「でもまあ真緒ちゃんが道哉に浮気したことには変わらないんだろ?」
「まあ、そうですけど。」
「んっとに道哉も悪い男だな、さすがだわ」
あれ、意外と受け入れてくれてた。柊弥先輩にはもっと早く相談してもらうべきだったかな、なんて思ったのはおいといて。
時は過ぎ、夏休みが始まって1週間経つだろう。この日は学年別大会という大会が行われ、市内外問わず様々な学校のペアが参加した。
その、後の話だ。
前の日に、明日会えないかということを真緒に聞いた。そしたらOKを貰えた。
合流するも、俺は何も手を出さない。いつも実はこのタイミングで何かしら手を出してたから、真緒からも
「珍しい、何もしてこないとか」
なんて言われる。
「今日はそういうことしない。」
今日は話をしに来たんだ。こんなところで余計なことすりゃあ、今日の意味が無い。
「真緒はこの先、俺か先輩か、どちらかしか選べないとなったらどっちを選ぶ?」
と、俺は聞いてみる。
「それだったら、有希」
「でしょ?だからもう俺とこうやって変に関わるのやめない?会ったら話すだけの友達に戻りたい。俺は。」
真緒の答えは即答だった。正直、悔しい気持ちがこみ上がるが、何もないフリをする。
「ぶっちゃけ、道哉に対して恋愛感情はないし、セフレみたいな関係だと思ってた。散々相手しといてこんな答えでごめん」
「いや、俺の方こそごめん。関係を複雑にさせちゃって。それならこれからは俺のことなんか考えなくていいよ。」
悔しいの思いしか出てこない。でもお互いがお互い、自分で決めたことだ。仕方ない。
「なんで突然そんなこと言ってきた?やっぱ噂になったから?」
「ああ、噂は真緒の耳にも入ってたのか。別にそういう訳じゃないけどさ、その前からずっと考えてたことだし」
ずっと考えてきて、千葉から噂立ってると話聞いて、決心したのが今この状況。だからまあ、うん。
「あと、俺は真緒のこと、本気で好きだったから。」
「…ほんとに?」
「だからこんなことしてたんでしょう、俺」
「そうだったのか。って考えたら本当に中途半端なことしてるから私。ごめんね。」
「いいよ。俺はそれ言えれば何も悔いはない。」
どうやら俺もノリでやってたと思われてたみたい。まあ、最初はそうだったけどさ。
「ごめんね。道哉にちゃんと応えれなくて」
「いいよ、それは。」
俺も今日でやめにする。覚悟してきたことだ。
「じゃ、また、学校でね」
「そうだね。挨拶ぐらいはしてよ?」
ここで関係全く切れるのも嫌だしな、って。
「真緒、ありがとうね。先輩と幸せにね。」
と言って俺は真緒の前を去った。
歩いてると、自然と出てくる涙。
「あれ、俺なんで泣いてるんだろう。ハハハ」
あー、なんだろう、覚悟はしてたのに、いざその場面を迎えると結局悔しさが止まらない。涙も止まらない。俺こんな泣いたことあったっけ。
「好きだったなあ…」
俺、女にここまで本気になったのもはじめて、かもしれないな。いつか本気で、奪いに行ってやろうかな。今回は、一旦身を引こう。
次の日は部活だが、泣きすぎて目が腫れてる。っていうか、目が開かん。
部活終わりに家の方向が同じの柊弥先輩と長島先輩と一緒に帰る。その時に、俺はこの2人の先輩に昨日のことを話した。
「ま、道哉がそれで気持ちにケリ付けれたんならいいんじゃね?」
と柊弥先輩に言われる。
「そうなんですけどねー。やっぱ複雑ですよね色々と」
「気分転換だな、そういうときの」
気分転換、か。今何もしたくないんだよなあ、好きなことも、何も。
「気分転換って、何をすればいいんですか」
「俺が金出すから髪切りにでも行ってこい!」
「うわあ、定番っすね。あと金は自分で払います」
「でも気分スカッとするよ実際。」
と柊弥先輩と話していると、長島先輩は既に自転車を漕ぎ始める。
ここ最近髪の毛は長めだった自分、ここまで切ったのは久しぶりだ。でもなんか、今までの自分とは違うみたいだ。
とりあえず何がともあれ、俺は明日から気持ちを切り替えるよ。