分かり合えた日







彼女の愛菜と出会ってから半年は経つだろう。告白されて、付き合ってからは5ヶ月ぐらい。出会ってから付き合うまでそこまで経ってない期間だったけど、その前から愛菜は俺の事気になってたみたいだったし。


そんなことはおいといて。修学旅行が終わり、行事もひと段落ついた11月の話だ。

つーか、修学旅行一緒に行けないとかマジで恨むわ西星高校。マンモス校と呼ばれるぐらい人の多い高校のため、修学旅行の行動日程が二手に分かれる。愛菜と俺は学科が違うため、離れてしまった。でもまあ、それ言っちゃ玲一と宏斗もそうだし、何も言えないけど。あいつらと代わりたかったわ。





俺は彼女に対して1つ、気になることがある。



最近、様子がおかしい。どういう風におかしいかって、家に帰ろうとしない。


いつも2人で遊ぶ時はどこかに出かけるか、学校から近い俺の家のほうが多い。でも、愛菜の家には呼ばれたこともない。どころか、俺が行ってみたいと言ったら、断わられるんだ。

最初は気にしてなかったけど、愛菜と仲の良い穂佳から言われた言葉から気になるようになった。

「愛菜の家行ったことある?」
と。
「ないよ」
と返すと
「私もなんだよね。行きたいって言っても断られる。お母さんが許してくれないとかで」
「それ、同じ。」


それだけならいいんだけど、俺の家に愛菜のことを泊めることも多い。今日は帰りたくないって、今まで何回あったんだろう。って、やましいことは数回しかしてないよ?

そのことも穂佳に話すと、穂佳側もそうだと言う。穂佳の家で遊んだ後に、そのまま泊まらせたことも何回かあるみたい。


穂佳と意見が一致したのはつい1か月前の話だ。その後部活の時に、愛菜と小学校から同じだった宏斗やつぐみに聞いたんだ。

「確かに、私も小学生の時遊んだことあったけど、愛菜の家は行ったことない。あっても家の前だけ。なんか、お母さんがダメって言ってるだとかで。」
とつぐみは言う。

「俺も同じこと言われる。ましてや愛菜と仲良い穂佳もらしいよ。」
「柊弥も穂佳もなの?」
「うん。」


と話していると、横から将斗も入ってきたが、将斗の持っていた話はとても気に触ることだった。


「愛菜が1年生の時ちょっとだけ体の関係のあった3組の上西っているじゃん。関係持っちゃった理由、愛菜の家の事あるみたい。」

「例えばどういう?」
と俺は更に聞く。
「いや、俺もどうしてそうなったか上西に経緯聞いただけだから詳しく知らないけど、でもお母さんが男関係ひどいとか。すまん、俺もここまでしか知らない」
「いや、むしろありがとう将斗。」

ちなみに将斗は愛菜とは中学は違うが小学校は同じ。その上西くんも将斗と小中高と同じなのである。




俺の家も、俺が中学1年生の時に両親は離婚している。母親が逃げるように地元へ戻って、俺らは父親のところへ残された。兄ちゃん達いたからこそ、色々と乗り越えられた。俺たちの場合はね。

小学生の時とか、親の喧嘩が聞こえる毎日だった。夜も寝れない。兄弟揃って寝室で泣いていた日もあった。






俺も部活が休みで、愛菜もバイトの休みの放課後。場所は俺ん家だが、思い切って、思ってることを全部聞いてみた。

でも、

「全然、何も無いから心配しないで。」
しか返ってこない。

「本当か?」
と聞いても
「本当だって!」
と笑顔で返される。

んな、笑うならちゃんと心から笑えや。




「ちゃんと話さないとダメ。何もなさそうに見えないけど。」
俺は愛菜の両腕を強く掴む。すると愛菜は、突然涙を見せながら、俺に抱きつく。


「もう家にいたくない。毎日毎日、気分悪い。」

しばらく泣き叫んだ後、落ち着いたのか、愛菜は眠りに入った。泣き疲れて眠るほど、何かしら溜まっていたんじゃないか。もうちょっと早く気づいてあげたかった。


愛菜の目が覚めると、我に返ったように「あ!ごめん!」と言われる。


話を聞くと、母親は離婚後、昔から何人かの男の人が夜になると家に出入りしているとのこと。しかも相手は1人に特定されていない。更には家庭持ちの男の人も出入りしてることも多々あるせいで、トラブルが起きた時には関係のない愛菜まで殴られたりしたこともあるみたい。



「3組の上西っているじゃん。たまたま通りすがりにその現場に居合わせたのがきっかけで、あの人の家に1ヶ月ぐらいいた時もあった。結局、向こうにも逃げられて、それがバレてクラスの人からも信頼なくされて、1年生の秋はどん底に落ちてた。死にたかった。本気で。」


愛菜は上西くんの関係で、クラスの人からも良く思われてなかった。今はそうでもないみたいだが。そんな時に助けてくれたのが穂佳だという。


「穂佳のおかげで人生変わった。密かに気になってた男の子が柊弥だってわかったのも、関わり持たせてくれたのも穂佳のおかげだし。柊弥とも付き合えて、精神的には、良くなってる。1年前よりは全然。」

俺と過ごす時も、楽しそうにしている。良くなったのなら、いいんだけど。



「家にいても、年々私の事は放置されるし、嫌な光景しか目に入んない。だからあんまり家にいたくない。ってだけの理由で、柊弥には結構甘えちゃってて、そこはごめん。」

思い切って話そうとする愛菜に、俺は真剣になって聞く。

「全然、むしろ一人でよく頑張ってると思う。俺も父さんの不倫で親離婚してるんだけどさ、当時は夜も喧嘩声で眠れないし、兄ちゃんとずっと泣いてたこともあった。でも俺は兄ちゃんがいてくれたから頑張ることができた。」

と俺は言った。まあ、今振り返っても心に残った傷は全然癒えてないんだけどな。


「だから俺は、愛菜のそばにいて、愛菜のこと支えたい。だから今までみたいに1人で抱えこまないで、俺の事頼って欲しい。」

思わず抱きしめる。もっと彼氏として、できることをしたい。

「ありがとう……!」

俺の胸元でしばらく愛菜は泣いた。こいつがこんなに泣くところ見たことあったっけ。本当に、気づくことできなかった俺が、情けない。




少し落ち着いたあと。


「今日は家帰るの?」
と俺は聞く。
「え?」
「愛菜のこと帰したくない。…ダメ?」
「え?いいけど…」

実際俺からこんなこと言うの滅多にないから、愛菜もビックリしている。しょうがない、俺、こういう雰囲気にもっていくの苦手でいつもチキってたんだよ。今日はこの雰囲気からか、自然と誘うことができた。




今までで1番、お互いを分かることができた日だった。