寮の部屋にて




2年生になり、寮の部屋替えが行われ、ソフトテニス部の小松飛鳥と溝口亘は同じ部屋になった。その、最初の夜の話。



亘「ふと思ったんだけど、飛鳥ってなんでそんなに彼女のこと一途になれるのかなーって」
飛鳥「説明が難しい質問してきたね」
亘「単純に、羨ましいなって思って」
飛鳥「でも俺も、前に山岡が言ってた通り、高校上がってからだよ。こんなに自分の恋愛を表に出すようになったの」
亘「逆に1度遠距離になって良かったタイプ、なのかな、飛鳥は」
飛鳥「かもね。この1年で気づけたこと沢山あるもん」


むしろ中学時代は、ここまで彼女大好きさがわかりやすくなかったという。高校に上がってからだ。表に出すようになったのは。


亘「やっぱ飛鳥でも、最初は不安だった?」
飛鳥「当たり前でしょ。」
亘「だよね。」
飛鳥「でも唯里は俺の事ずっと応援してくれてて、行きたい高校入ってやりたいことしな、って。高校決める時に言ってくれたから」
亘「それが励みか」
飛鳥「うん。俺が高校は星の里行きたいって、付き合う前からずっと言ってたことだし。むしろ、その話を前へ進めてくれたのも唯里だから。」


中学三年生に上がる頃くらいに、飛鳥は星の里高校に行きたいということを決めた。その前から興味があったが、やはり市外。迷いに迷ったところを、唯里が支えてくれた、と言う。


飛鳥「最初はね、市外に出て、親元を離れて、という環境に躊躇してたよ。親もあまり賛成ではなかったし。でも唯里には、親にはちゃんと話しな、って背中押してくれた」
亘「いい彼女じゃん。」
飛鳥「だろ。でも唯里はお兄ちゃんと同じ西星で部活やりたいから、西星入ったけどね。お互いやりたいことはやりたいところで存分にやって、会える時に会おう、みたいな思考。俺達はね。」
亘「最初からそうしようって話し合ってたから遠距離でも続くんだね。」


星の里高校は市内外問わず色々な人が来る。男子部も、入学当初は彼女持ちの人が多いんだけど、やはり部活の忙しさが想像以上。それがきっかけでだんだんと離れてしまう人もいる。例えば彼らの同級生、畑中空真もそう。


飛鳥「まあ、離れる前は2人して泣く日多かったけどね。寂しいものは寂しいし、今も本当に滅多に会えないからさ。」
亘「なるほどねー。やっぱりどんな理由でも離れるのは辛いしね。」
飛鳥「でも、離れてもやっぱり大切なのは唯里だし、こんな俺が、唯里と離れてもずっと変わらず唯里のこと好きでいることできるんだなって。すぐ会えないのは辛いけど、お互い支え合っていけてるから。遠距離になって、俺と唯里も2人で成長できたかなって。」

亘「すごいね。考え方が。」
飛鳥「でもこれがあと2年、もしかしたらプラス4年続くかもしれないけどね。」
亘「あー、やっぱ進路によるよね。飛鳥は一応地元には帰らないんだっけ?」
飛鳥「今のところはね。唯里は大学は行かないと思うって言ってたから専門学校かなって。緑陽来るか来ないかはまだ決まってない」



高校の次は、大学。飛鳥は大学は進学することは決めている。




飛鳥「…まあ、今でも正直不安だよ。離れている期間のほうが非常に多いから。でも俺は唯里のこと信じているから。」
亘「なーんか、飛鳥見てたら本当に羨ましくなっちゃう」
飛鳥「なんで?」
亘「俺もそういう恋愛したいわー、って」


亘は中学時代に彼女がいたことがあるが、別れ方も酷かったらしい。



飛鳥「もしかしてあれ?前の県大の時に終わりごろ亘が機嫌悪かったやつ。元カノ絡みで何かあったって村瀬先輩言ってたけど」
亘「それ。村瀬先輩はその場にいたから話知ってるし、全国の時も部屋同じで話聞いてくれたけど、あとは空真と岳人にしか詳しく話してないや。」


亘は、3月に地元である明峰市での県大会にて、観戦に来ていた元カノに会ってしまった。同じ中学でテニス部だった、一つ下の子だ。


亘「向こうが俺の事捨てたくせに、いざ俺が離れたら、しつこくひっついてくる。うぜえから普通に顔見たくないわ、もう。」
飛鳥「なるほどねー。亘があの時機嫌悪そうだったからどうしたか村瀬先輩に聞いたら、亘が元カノに会ってガチギレしてたって言ってたから、それほどのことなのかなとは思ってたけど。詳しいことまでは聞いてないけど」
亘「村瀬先輩もそこまで話したなら全部言っちゃえばいいのにこの前のこと。まああんなところ見せちゃって申し訳ないけど」
飛鳥「でも試合終わってからで良かったね」
亘「サブアリーナだったのが救いだったわ。」


そう。県大会の時にはメインアリーナとサブアリーナが使われていて、村瀬溝口ペアはサブアリーナで試合をしていた。ベスト16で、北陽学園のペアに敗退した。

亘がペアを組んでいる村瀬蓮先輩は、恋愛経験も今の部員の中では1番あるんではないかという人で、様々な人の恋愛相談も聞いていることが多いらしい。




亘「でも、今後が心配」
飛鳥「もしかして高校でもテニス続けるとか?その子」
亘「そう。その後に、中学の時の先輩…明峰北高の南雲耕作先輩っているんだけど、耕作先輩が話しかけてきて、梨華は北高のソフトテニス部入るから、って」
飛鳥「明峰北高って男子は最近聞くけど女子どうなの?」
亘「女子は県常連。明峰の女子は昔からずっと北高が強いから。」


もしかしたら今後も、その女の子に会う可能性もあるという。亘は嫌がってるけどね。



亘「だからまあ、飛鳥たちみたいな恋愛したい」
飛鳥「俺達はまあ、遠距離が辛いけどね」
亘「そうだけどさ。でも意外と飛鳥も遠距離に不安抱えてるんだなーって。飛鳥の心の中探った気分」
飛鳥「いつも部活でも唯里の話ばっかしてるもんね。でも、みんなに話したいんだもん。」
亘「俺もそうやって、彼女のこと大好きって表に出せるようなことしてみたいなー。」



二人とも、今後も頑張りましょう。