遠距離恋愛の心境
この日は平日だが、ソフトテニス部は部活お休みの日。長江修太は彼女と久しぶりに放課後遊びに行く約束をしていて、彼女のクラス、2年D組へと向かった。
美桜「あーごめん!!ちょっと先生に呼び出しくらったから遅くなる」
修太「いやお前何したの」
道哉「髪の毛と化粧で怒られてた」
美桜「いや言わなくていい」
長江くんの彼女、美桜はとてもオシャレな女の子。髪の毛もいじるし化粧もするので、わりと先生からはマークつけられてるみたいだが。
このクラスの男子ソフトテニス部には竹原道哉がいて、ソフトテニス部はもう1人、女子の滝下唯里もいる。美桜は部活はやっていないが、中学までソフトテニス部で、この4人全員、同じジュニア出身なのだ。今日は女子も部活がなく、唯里は今帰ろうとしていたところだった。普段は部活ない時は、美桜と帰ってるけどね。
唯里「ったくせっかくのデートなのに馬鹿だよね美桜って」
修太「ちなみに誰に捕まったの」
美桜「石倉せんせー。」
修太「それは馬鹿だな。いってらっしゃーい」
美桜「うわー楽しんでる腹立つ」
長江くんも、とても面白がっている。
石倉先生とは、女子の服装、頭髪、化粧にとっても厳しい、若くて美人な女の先生。検査の時には鬼になると言われている。長江くんの所属している特進科のB組と、この普通科のD組などの国語を教えている先生だ。
美桜が出て行ったあと、残された唯里が、話を切り出す。
唯里「美桜と付き合ってもうすぐ8ヶ月。どうよ?」
修太「どうって言われても。普通にやってますけど。最近忙しくて全然遊んでないけどね」
道哉「いいね、リア充」
修太「お前は道外しすぎだ」
唯里「ヤリチンじゃん、」
修太「これだからテニス部はヤリチン多いって言われるんだ」
道哉くんは、色々な女の子と……っと、この話は触れないでおこう。
修太「そういえば、唯里は遠距離2年目突入か」
唯里「もう1年経ったのかって思うと早い…」
修太「どれぐらいの頻度で会ってるの?」
唯里「飛鳥が帰省してきた時は絶対会ってるし、あとたまーに向こうが1日オフの時帰ってくる。この前も春休み1晩だけ一緒にいた」
道哉「お?泊まり?」
唯里「泊まり。私が次の日の部活が一日練だったから、その日の夜しか一緒にいれなくて」
唯里の彼氏は、星の里高校へ進学し、ソフトテニス部でも活躍している小松飛鳥のこと。長江と唯里と同じ南が丘中で、これまた道哉たちともジュニアも一緒。
星の里高校のソフトテニス部には、春休みに全国大会を終えて帰ってきた次の日は1日オフだった。春は帰省する暇がないソフトテニス部の部員は、この1晩だけ実家に帰省するという人も多い。とはいえ、近場の人がほとんどだけどね。明峰市に住んでいる溝口亘などは、遠くて移動にも時間かかるから、帰省はしなかったらしい。
道哉「まあ、ここまで付き合ってたらエッチぐらい済んでるか」
唯里「それはノーコメントで。」
修太「済んでるって本人言ってたけど」
唯里「そんな気はしてた」
修太「まあ、どらちかといえど山岡が俺らにそれをばらしたんだけどな」
唯里「飛鳥のことだから星の里のテニス部に私のことベラベラ喋ってんだろうけど」
修太「それが当たってるみたいだよ」
南が丘中のレギュラーで集まった日、そんな話をしたらしい。飛鳥本人というよりも、同じく星の里に進学した、長江くんの元ペアでもある山岡広夢がバラしてその話題が始まった、が正しいけど。
修太「しっかし、離れても大好きーって言われてるもんな、幸せ者だわ唯里」
道哉「飛鳥ってそんなキャラだったっけ」
唯里「いや多分遠距離になってから」
修太「それはある」
道哉「昔から騒がしい奴ではあったけどさ、自分の感情ストレートに言う人ではなかったよね」
修太「山岡曰く、星の里の人達にも呆れられてるほどの彼女バカらしいよ飛鳥って。」
唯里「逆に恥ずかしいけど、でも素直に嬉しいって思う自分もいるから悔しいんだよね…」
修太「そこは素直に受け止めなさい」
唯里「はーい。」
何だかんだ唯里も、彼氏の飛鳥のことが大好きだ。
道哉「連絡はどれぐらいの頻度でとってんの?」
唯里「お互い話したいことあったらラインする、って感じ。でもほぼ毎日ずっとラインしてる。たまーに通話するかな。でも飛鳥と同じ部屋の友達もいるから、本当にワイワイ話すだけで終わるけど。」
修太「通話もしてんるだね。」
唯里「うん。今飛鳥と同じ部屋なのが溝口くんで、その前が吉岡くんってテニス部の人たち続きなんだけど、よく飛鳥のバカやらかした話とかしてくれるからすごい楽しい」
電話越しに、飛鳥の部活の友達とも話しているみたい。
修太「飛鳥もなかなかだけど、唯里自身はどう思ってんの。」
唯里「難しい質問してくるな。でも、全然会えないのにいつも私の事考えてくれてて、それこそ飛鳥が友達に私の話沢山してるって聞く時も本当に嬉しいし、そんな飛鳥にもっともっとふさわしい彼女になれるよう頑張りたいなって思ってる。」
道哉「……話聞いてられなくなってきた」
唯里「道哉はもうちょっと純粋に恋愛しなさい」
修太「そうだ?」
まあ道哉はおいとくとして、唯里も内心本当に嬉しがっている模様だ。
唯里「だって。飛鳥以上にこんなに私の事想ってくれてる人ってもう出会わないと思う。こんな遠距離でも、年に数回しか会えなくても、大切にしてくれてるんだからさ。」
修太「相当嬉しそうに話してやがる」
唯里「本当は辛いけどね遠距離。バイバイする時本当にいつも涙目になるし。でも自分たちでこの道を選んだんだからさ。」
飛鳥がテニスで市外の強豪校への進学を、前に進めてくれたのは唯里である。ちなみに、かれこれ2人は中学2年生の秋から付き合っている。
唯里「まだわかんないけど、もしかしたら高校卒業してからもあと4年、離れるかもしれない。でもお互いやりたことはやりたい環境でやるのがベストだと思ってるし、恋愛なんてその次。そこで関係が崩れればそれまでの関係だったってこと。」
修太「なんか飛鳥も同じこと言ってた。」
唯里「2人でこの話題は何回もしたからね。でも私も、本当に遠距離続くとは思ってもなかったからびっくりしてるけどね。」
唯里本人も、最初はすぐダメになるかなと思っていたらしい。
修太「でも遠距離になってからのほうが、2人とも寄り添うことできてるなって思う。中学の時よりは」
唯里「信じているからね。遠距離になって不安のほうが多いけど、でも色々と気付かされるよ、本当に。遠距離になって、後悔はしてないし。」
道哉「確かに飛鳥と唯里は2人とも、お互いを信頼し合えているなって思う」
修太「俺もそういうところは見習わなくちゃな。」
離れていても想いは強い。そんな飛鳥と唯里、まだまだ遠距離恋愛は続くけど、2人なりに頑張ってほしいですね。
と、そこに美桜が戻ってきた。
美桜「ただいま…って、入っちゃいけない雰囲気だった?!」
修太「いや全然。飛鳥の話で盛り上がってた」
美桜「あー。ラブラブだもんね?」
唯里「うるさい。」