マイクロバスの中




星の里高校の上位選手は、ゴールデンウィークの後半は県外への遠征だ。その、移動時間の話。
飛行機で目的地近くの空港に着き、それから数時間のマイクロバスでの移動になる。運転は、顧問の薄井先生だ。


広夢「ねえそうだ飛鳥、しようと思ってしてなかった話があるんだけど」
飛鳥「ん?」
広夢「彩乃覚えてる?永宮彩乃」
飛鳥「あー、中3の時転校して山岡が悲しんでた」
広夢「ショックだったのは確かだけど。で、彩乃が江南高校通ってたって話」
飛鳥「まじ?」
広夢「この前イオンで会ったからびっくりした。」


山岡広夢の初恋の女の子、永宮彩乃ちゃん。中3になると同時に転校してしまい、広夢もそれ以来だったみたい。

と、広夢の隣にいた亘も話に入ってくる。

亘「え、この前の子?」
広夢「そう。亘は一緒にいたからね」
飛鳥「えー、俺も見たかった」
駿芽「え、永宮彩乃って北中だよ」
飛鳥「うっそ、てかこの辺だったんだね住んでたの」

広夢の前にいた駿芽が振り向き、そしてその隣にいた空真まで入ってくる。
彩乃ちゃんの転校先は、駿芽の通っていた江南市の北中だったのだ。


空真「何その、山岡の話超聞きたい」
広夢「いや、別に何も無い」
飛鳥「こいつが一方的に好きだっただけで特に何もしてねえよ」
広夢「そういうこと。」
亘「初恋の人が転校したって話は聞いたけど、まさかの再会かー。」
駿芽「あれ?彩乃ってまだ彼氏と続いてるっけ?」

飛鳥「あ、彼氏持ち?」
駿芽「中3の終わり頃ぐらいにサッカー部だった人と付き合い初めて、1月の時は1年記念とか言ってたけど最近聞かないんだよね」
飛鳥「こっちでもモテてたもんね。だから山岡が何も動かなかった」
広夢「うるさいわ!!」


好きだったけど、特に行動に移すこともしなかったらしい。


広夢「でも本当に久しぶりに会って話しただけだから、特に何も知らない、俺は」
空真「駿芽はその子とは親しいの?」
駿芽「まー同じクラスだったからね。今月末に中3のクラスの集まりあるから、その時聞いてみる。」
亘「ちょっと気になるからよろしく」
広夢「話の規模が…まあいいけど」





と、2年生が話している前で、駿芽たちの前に座っていた1年生の岩本楓が、隣に座っていた村瀬蓮先輩と、その近くにいた2年生の茂原健一に、自分の恋愛話をしていた。

ちなみに、岩本楓・大谷朱哉ペアというのは、1年生ペアながら、既に星の里高校でも上位選手入りしているペアなのだ。


その話を聞こえた空真が、前のほうに話しかけた。

空真「なにー?なんだってー?」
楓「いつ聞こえてたんすか…」
駿芽「村瀬先輩が声でかいから」
蓮「俺のせい??」
楓「村瀬先輩ー。」

健一「楓の恋バナ聞いてたら、1年前の空真思い出す」
空真「それ禁句」
蓮「でもマジでそれっぽいから」
駿芽「何?実は彼女にべったりでエッチも結構しちゃってるとか」
空真「いやお前、ストレートに言われたら俺まで傷つくから」
蓮「でもそんな感じだよ」
駿芽「楓も彼女大好きなんだね。」


楓の彼女は、中学までずっと同じで、お互いテニスを始めた時期も同じの女の子、矢澤七海ちゃん。高校は、地元の北別花野高校へ進学したそうだ。ちなみに楓は、北別市の向陽中出身だ。


楓「でも俺、今月で2年になるんですよ」
空真「てことはいつから付き合ってんの?」
楓「中2の5月ですね。」
健一「結構長いよね。」
楓「まあ。でも遠距離始まっちゃってこれからどうなるかなーってところです」
蓮「そういう時は小松飛鳥先輩にアドバイスしてもらえ」

と、蓮が後ろを向きながら言うと、飛鳥は反応する。

飛鳥「へ?」
健一「遠距離恋愛の先輩だから、あいつ」
飛鳥「誰が遠距離恋愛中だって?」
蓮「こいつ、楓」
飛鳥「まじですか?今度じっくり話そうな」
楓「わかりました」

まあ今は席が少し遠いから、断念だ。


岳人「え。遠距離恋愛中なの?」

と、大橋岳人まで入ってくる。

楓「やけにみなさん反応してきますね」
蓮「気をつけろよー。彼女大事にしなかったら俺や空真みたいに愛想つかされて振られるから」
空真「さっきから俺にまでダメージ与えてくるのやめてくれませんかみんな…」
岳人「空真の場合はね、中一から3年付き合ってたのに振られたからね」
楓「そうなんですか?!」
空真「この話やめ」


心のダメージがより大きくなった空真でした。


源太「んで楓、お前は実際のところ童貞では?」
楓「ないです。卒業してます」
楓都「いや、ストレートに言ったぞ」
源太「素直でよろしい。」
駿芽「はーい、楓は岳人たち側の人間だな」
健一「でも中藤先輩言ってたよね。北別向陽から入ってくる子も中々の恋愛経験だーって」
岳人「あー言ってたかも。それがこれだ」

空真「いやいや、健一もこっち側の仲間じゃん」
健一「や、それ言っちゃもうそろそろ駿芽あたりは仲間入りする予定でしょ?」
駿芽「お前しばくぞ。」
健一「わーこわーい」
源太「ちょーとまて。健一って結局例の人とヤってたの?」
健一「待ってください、この話みんなの前でしないとダメですか?」
蓮「聞きたーい」
健一「言い出しっぺの空真の話も後でとことん聞いてやるからな」

健一の言葉に、 あ、やべ、という顔をした空真。空真の隣にいた駿芽は苦笑い。



亘「さっきから前の方ではなんちゅー話してんの」
徹也「ねえ、俺も健一の話聞きたーい」
健一「そこまで聞こえてた?」
睦巳「いや、バリバリこっちまで聞こえてますけどー」
楓「健一先輩もう公開処刑されてますね」
健一「俺別に、何も悪いことしてない……」

マイクロバスの1番後列にいた睦巳、徹也、乙也にもバリバリ話は聞こえていたらしい。



源太「あのな、さっきから信号止まる度に薄井先生が俺のほう見て苦笑いしている。」
朱哉「シュールですね」
先生「ここまで恋バナに一致団結するのはこの代が初めてだわ」
駿芽「仕方ないですよー。特に今の2年生はみんな恋してますから」
先生「おー、駿芽が言うことか?」
駿芽「すいませんでした」


駿芽は一時期、恋愛関係で学校で問題になりかけた案件があったのだ。先生には全て話したこともあるようで。



岳人「てか健一の話どこまで聞いたっけ俺」
健一「前に付き合いかけた人とまた付き合いかけてるってことは言ったよね」
楓「それでとうとう……ですか?」
健一「前にその人と連絡とれなくなった原因が、俺が1回やらかしたからなんだけどさ」
蓮「襲いかけるっていう事故」
健一「やー、オブラートに言ったのにやめてくださーい」


健一は高校に上がったぐらいから、ずっと好きな人がいた。同じ中学だった女の子で、名前は星野奈緒ちゃんと言う。今は東陵学園大高校に通っている。ちなみに、名前の通り、東陵学園大学の附属の私立高校らしい。そして部活は吹奏楽部で、そこそこ強いらしいこの高校で、トランペットを担当しているみたいだ。

1年生の時にも親密になっていたが、健一がつい襲いかけてしまったことがあって、それから気まずくなって会えてなかったとか。最近、和解したみたいだが。



健一「やばいね。あれ」
岳人「こっち側の世界へようこそ」
蓮「まーさか健一もこんな早く……ね」
健一「男って所詮こんなもんなんですね。っていうのが感想です」
源太「まあ言いたいことはわかる」
駿芽「俺も、実際好きな人目の前するとダメですよ。」


と話している後ろの方で、長畑怜樹が、徹也に話を振った。


怜樹「そういえば徹也は?」
徹也「なんで俺に話振った?」


この人も、1年生の9月から、同じクラスの新見唯香ちゃんという女の子と付き合っている。長身で爽やかなイケメンの徹也くん。昔からモテるけど、今までは中々自分から積極的ち動けなかったみたい。でも、唯香と付き合ってから、だんだん変わっているらしい。



乙也「つーか、怜樹も徹也も同じクラスでしょ。あと飛鳥も。」
飛鳥「教室でイチャイチャはしてるけどどこまでやったとかは聞かない。よ?」
徹也「なんで飛鳥まで威圧かけてくんの」
飛鳥「羨ましいわ。教室でイチャイチャできてー。」
広夢「徹也、こいつ放っておけ」
徹也「いつものことだ。」


普通科の選抜進学クラスは、1クラスしかないのでクラス替えはない。だから、ずっと同じというわけだ。


岳人「え?徹也どこまでしたって?」
徹也「いきなり振り向くな。別にお前らが期待するようなこと何もしてねえよ」
駿芽「これぞ純粋。羨ましいわ」
空真「え?何、駿芽は」
駿芽「俺も別に何もしてねえよ!!!これ以上何もできないんだわ今は。」


意外とまだ童貞は卒業できてない内藤吉岡。駿芽は中学の時の元カノに、やりかけたことはあったらしいけどね。


楓都「正直、こんな汚い話する部活だと思わなかっただろ」
朱哉「正直思います。」
楓都「だろ。今の代になってからずっとこんな調子」
健一「いや、何言わせてるんですか」
楓都「だって1年生入ったばっかなのに俺らこんな話ばっかしてるの聞かされてて」

蓮「大丈夫、その1年生の中でも岩本楓はこっちの仲間だから」
楓「結局そういうことになるんですね」
駿芽「余裕の表情」
楓「だって事実ですし今更否定するようなものでもないですし。知ってる人は知ってるし。」
源太「なんかそんなこと、ここの大橋岳人も去年言ってたぞ」
岳人「言いましたね。」


岳人も彼女にはとことん色々とやっている人なので、それもテニス部には隠さず話しているみたい。


楓「むしろ恋バナしたいです。話したいです。気が済まないです。」
蓮「見ろ、これがラブラブなリア充だ」
源太「蓮と飛鳥と大橋のせいで慣れた。」
空真「じゃあ楓の恋バナ聞きたーい」
蓮「さっきの話すれば?」
楓「あ、結局は言えってことですね。」


まだ入ったばかりの1年生、楓の話はほぼみんな知らないのでね。


楓「今の彼女…矢澤七海って言うんですけど、テニスめちゃくちゃ強いですよ。北別花野高校行ったんですけど、1年生で既に強い先輩と組んでレギュラー入ってます。」
空真「北別花野って今の代の女子めちゃくちゃ強いんでしょ?女テニも言ってた」
楓「そうです。下田新谷ペアとか県大ベスト4だとか西支部優勝とかしてますし。その、2番手の3年生の角井さんって人と、七海はペア組んでて、先日の春季でも北別でベスト4入ったそうです。」

今や、県内の西支部の女子は、北別花野高校が強い。北別地区は少年団も盛んで、近年は男女ともに全中選手も毎年出している。ちなみに楓も全中選手。七海ちゃんは、全国掛けで敗退したみたいだが。



源太「ちなみに初エッチはいつなの?」
楓「皆さんにわかりやすく言えば去年全中決めた後です。でもその前までも色々とやりかけたことは何度もありましたけど。」
朱哉「彼女見てたんだっけその時?」
楓「来てた。俺たち優勝する瞬間もちゃんと見てくれてた。」

昨年、中学生の大きな大会、全中の県予選で見事県優勝を果たした北別向陽中の岩本野上ペア。

その後に、楓が彼女と遊んだ時に、初めてを経験したみたい。なぜこのタイミングだったのかは分からないみたいだが。



楓「とりあえず今は不安いっぱいですけど、頑張りますー。多分、大会でも会えるかなって。来月西の森で会えたらいいねって話してます」
蓮「会えると思うけどな」
健一「じゃあその時彼女の顔見たい」
楓「あんまり騒がないでくださいよー。」



と、後ろで聞いて飛鳥が、何か思い当たることがあったみたい。



飛鳥「あ、楓、その子西星の推薦断ったって話聞いたけど」
楓「あー、親に反対されてました。本人はめちゃくちゃ西星行きたかったらしいですよ。」
飛鳥「だよね。どっかで名前聞いた事あると思ったら。伊野ちゃんと仲良いとかで西星みんな知ってるって」
楓「隣の地区でしたからねー。伊野さんたち明比の人とは。って小松先輩詳しいですね」

駿芽「こいつがよく口に出している、こいつの彼女の滝下唯里は西星の人だから」
楓「あーなるほど。じゃあ知ってますね。」
亘「思ったけど飛鳥ってこの中でも1番ウザイほど惚気てるのに、1番エッチな話は聞かない気がする」


と、亘の言葉に、車内全員納得した。



広夢「一応一時期うるさかったけどな」
蓮「だって飛鳥って中学の時そういうこと一切やってなかったんでしょ?中2から付き合ってて」
飛鳥「してなかったですね。というか初めてが半年前ですし。」
楓「本当にそれまで何もしてなかったんですか?」
飛鳥「キスまではよくしてたけど、そこからは何も、って感じ。逆に遠距離になってから、そういうエッチなこと考えるようになったのは確かかな。」


ラブラブな話は聞くけど、意外とエッチな話は聞かないのが飛鳥。まあ、全然会えてないのもあるけどね。



空真「大体みんな早くても中3か……」
駿芽「中2の最初で童貞捨てた男」
蓮「え、それは早くね??」
空真「早いなぁって自分でも思いますよ。」



という話を聞こえた1番後ろの列の本間乙也が、何かぼそっと言ったようで、



怜樹「空真ー、今なにか乙也言ってたぞー」

と、怜樹が大声で伝える。

空真「乙也ー?何ー?悪口ー?」
乙也「ちげーわ。空真って中1の時点で既に身長高くて大人びてたからなーって」
空真「まあ逆に中学から身長全然伸びてないけど」
岳人「成長期が早すぎたんだよきっと。」


中学2年生で身長170センチを超えた空真。それも中学1年生の時にぐんと伸びたようだ。
でも今は、175センチだから、中学からそこまで変わってはいない。でも小学生の時は、クラスでも身長は低いほうだったらしい。




健一「中学生で高身長はモテる」
蓮「健一が言うと嫌味にしか聞こえない」
健一「俺なんて今でも160前半ですからねー。駿芽なんて急に差つけてくるし」
駿芽「入学当初は同じくらいだったね」
健一「嫌味かー。」
駿芽「でも俺そう考えると徹也と並びたくない」

駿芽のペアである徹也は、駿芽よりも10センチ以上身長が高い。


岳人「だって、徹也」
徹也「バッチリ聞こえた。もうペア組まないからな」
駿芽「あーそれはすいませんでしたっ」


でも駿芽も身長低いのはわりと気にしています。




源太「って言っちゃ俺と志村でも身長差そこそこあるんだからね?」
健一「でも平松先輩は身長170余裕で超えてるじゃないですか」
源太「……そういうことか。」
駿芽「俺ももうちょっと、平松先輩ぐらいの身長までいきたいです」



ちなみに平松源太先輩の身長は174センチ。まあ、男子の標準なんですかね。ちなみに志村先輩は、この部で1番高い、183センチだ。



まだまだ先は長いが、今回は話が尽きなかったようで。