県外への遠征
5月のゴールデンウィークも終盤だ。春季大会が終わるとすぐに、県外への遠征へと出発した西星ソフトテニス部。AチームとBチームの合計16人の選抜メンバーだ。
3年生は将斗以外になるが、2年生は長江、千葉、道哉、晃斗の4人、そして1年生も6人いる。これが、高校総体地区予選に出るメンツでもあるのだ。
道哉「俺去年の夏の遠征はメンバー外れたから初めてなんだよなー。」
晃斗「そんな気がしない」
道哉「馬鹿にしてる?」
泰聖「でも流石道哉だわ。気づいたらここにいた」
道哉「気づいたらいましたね。」
2年生と3年生は昨年も経験しているのでわかるんだけど、そのうち道哉は昨年はメンバー外れて学校に居残り組だったのだ。そんな道哉も柊弥先輩とペアを組んでからは県大会も出場したりと、活躍している。
今回の1年生のメンバーは、南聖中出身エースが3人。個人戦で全中にも出場した森木啓斗、そして中学でペアを組んでいた2番手の北守愛也、早見恭太。
そして、第三中出身の藤松恵介に、南が丘中出身の中屋悦二、第二中出身の瀬名玲音、というメンバーだ。
恵介「あ、これ兄ちゃんのやつだ」
と、恵介はどうやら荷物をガサゴソしてる。
宏斗「どうした?」
恵介「スマホの充電器これ兄ちゃんのです。帰ったら怒られるー」
宏斗「兄ちゃんってどっち」
恵介「涼介のほうです。まあいいや、彼女とラブラブしてるしー」
藤松恵介は、5人兄弟の末っ子だ。1つの兄は現在東聖商業高校で2年生ながらレギュラーとして活躍している瑛介だが、更に上の兄は、西星ソフトテニス部にも入っていたらしい、4つ上の涼介のことだ。
泰聖「藤松先輩全然部活来てなかったから、俺も話したことないなー」
恵介「自分で幽霊部員って言い張ってましたよ」
宏斗「俺は学科一緒だったから関わりあったけどねー。でももう2年前か。俺の2つ上だから」
そう、藤松涼介は幽霊部員だったのだ。
そんな彼のみ知っている人にとっては、弟である瑛介と恵介の活躍に最初はびっくりするみたいだ。
修太「そういえば緑陽支部の春季大会の結果知ってます?」
陽介「知らない」
修太「今年は北陽が不在だったみたいですけど、優勝が平松志村ペアなのと、準優勝がなんと、大橋小松ペアです」
玲一「え?飛鳥?!」
修太「どうやら、畑中本間ペアに勝ったようで決勝進出したみたいです」
泰聖「詳しいね、流石」
修太「飛鳥の母さんがすぐそういう話してくれるんですよ。近所だからよく会うし」
哉斗「山岡は?」
修太「んーとちょっと待って。結果の写真……と、あったあった」
長江くんは、緑陽支部の春季大会の結果の写真を開いた。送って貰ってたようだ。
修太「あーあいつはベスト16。西陵総合の佐野平屋に負けてる」
玲一「平屋って緑陽西中のだ」
陽介「あー。そりゃ強いね」
玲一「俺まだ高校で平屋と1度も当たってない。リベンジしたいけど機会がないんだよなー」
哉斗「俺たちインドアでそのペアと当たりました。」
修太「当たったな。勝ちましたけど、単純に上手すぎてもうあそことはやりたくないです。」
緑陽市の西陵総合高校には、佐野平屋ペアというエースがいる。その平屋くんは、緑陽西中という強豪出身で、3年生の時には県大会で団体3位、個人5位と惜しくも全国には届かなかったが、とても強くて有名だった。
泰雅「思ったのがさ。小学生や中学の時から当たってきたり大会で見てきた人と試合とか色々できるのもあと少しなのかなーって」
玲一「悲しくなるからそんなこと言わないで」
泰聖「やーでも、分かるよ?就職や専門行くから続けないって人もいるし、続けても県外行ったり県内でも一般や学生やら色々とバラバラになるじゃん。」
陽介「確かになー。だって、俺らは国体あるから8月引退だけど、早い人はもう今月じゃん」
もう5月に入ってしまっているので、高校総体の地区予選があと半月ほどでスタートする。早い人は引退だ、もう。
哉斗「先輩方は進路どうなんですか?」
泰雅「とりあえず俺は大学行くよ。どこ行くかはまだ迷ってるけど」
泰聖「俺も陽介も進学するし。玲一は結局どうなんの?」
玲一「今学期の成績次第」
泰聖「あっ…」
玲一「でも期末の日丸々大会でいないから、勉強する暇…」
玲一は工業科の中でも勉強は大したできるほうではないので、勉強の頑張り次第で進学できるかできないかが決まるのだ。
晃斗「工業科から4年大学も珍しいんですかね?」
宏斗「珍しいよー。本当に頭良い人とか、部活続けるって人ぐらい。」
玲一「正直宏斗のほうが成績は良いからね」
宏斗「玲一に負けたことはない」
玲音「大宮先輩、中学の時も成績良かったじゃないですか?」
宏斗「いや、そこまででもないよ?」
玲一「クラスで5位ぐらいにいるよこいつ」
恵介「じゃあ頭良いんですね」
宏斗「恵介はどうなの??涼介先輩も高校の時工業科で学年トップだったらしいけど」
宏斗は勉強はできるほうだ。部活で西星高校へ来ている人ですからね。白樺商業高校に通っていた兄よりも成績は良かったらしい。
そして恵介の兄、涼介は高校時代は工業科で学年トップだったらしいのだ。
恵介「まだテストやってないのでわかりません」
晃斗「瑛介よりは?」
恵介「同じくらいですかね?中学の成績は」
玲一「じゃあ頭良いわお前。東商は入れるレベルってことでしょ?」
恵介「まあ一応。兄の先輩とかに誘われましたけど、商業の学科に進むつもりなかったので行かなかったんですが。」
ちなみに今年の1年生は、工業科が非常に多い。恵介と玲音もそうだが、他にも多数。
哉斗「啓斗と愛也も中学の時成績良かったよね?」
愛也「啓斗は良いですよ。南陵入れるレベルですし。俺は桜樺が精一杯です」
泰聖「しかも特進だし2人とも」
啓斗「あ、でも恭太は本当に西星しか入れないレベルです」
恭太「うるさーい」
玲一「最初に西星行きたいって言い出したの恭太だったもんな」
愛也「そりゃ、西星しか行けないってわかりきってたからじゃ…」
恭太「そういうことじゃない!部活で行くって意味!!」
啓斗「どちらにせよ南聖のレギュラー1バカなのは変わりない」
恭太「こいつら…」
南聖出身の1年生組も、仲良しなようです。
啓斗「実際俺らの中で1番頭良いのは堀部です」
泰雅「星の里行っちゃったもんねー。」
啓斗「高校のうちに堀部だけは当たりたくないなー。」
修太「その気持ちわかる」
啓斗「あー。山岡先輩いますしね。仲間ですね俺たち」
修太「山岡の場合は西星一緒に行くって途中まで言ってたんだよ!!」
愛也「あ、裏切られたパターンですね」
修太「飛鳥が星の里の体験入学に山岡を引き連れるから…。その後特待の話来たのもあったけど」
悦二「小松先輩は元から星の里行きたいって言ってたんでしたっけ」
修太「そうそう。あいつはね。しかも小学生の時から国本小松なんて強かったしね」
悦二「ですよね。って長江先輩も変わらないじゃないですか」
道哉「いや、それ」
南が丘中出身のえっちゃんこと悦二は、1つ上の先輩達が団体で全中出場した偉大な先輩にお世話になっている。長江くんとも中学……いや、少年団の時からお世話になっている。
というか、西星高校はそれこそ長江くんたちと同じ南聖ジュニアという少年団出身の人が多い。近郊の星華中、南聖中、南が丘中に進む小学生が多いかな。
修太「堀部も西星入って欲しかったな…」
哉斗「歩夢も同じこと言ってた」
修太「だってあんなエグいやつがさ」
啓斗「俺も堀部以外の人とペア組むの久しぶりすぎて緊張しました。」
修太「悪かったな、俺で」
啓斗「そういうことじゃないです。てか長江先輩も凄い人です。」
今年度、長江くんのペアは1年生の森木くんへと変わったのだ。川岸先輩引退後はずっと千葉くんとペアだったけど、とうとうペアが崩れたみたいだ。
哉斗「まあそのおかげで俺がこんな害児とペア組むことになったんだけどな」
恵介「害児だなんてひどいですね、千葉先輩」
哉斗「このイキリ野郎」
宏斗「千葉、もっとやれ」
哉斗「わかりました」
と、宏斗の言葉に、千葉くんは恵介のことを引っ張る。
千葉くんの新たなペアは、恵介だ。
柊弥「1年生で西星のAチームに入るバケモノって野本先輩以来らしいから頑張れよそこの1年2人。」
啓斗「そうなんですか?じゃあ3年ぶりとか…」
柊弥「そうだね。その上もちらほらいたけど、その時は上が全然部員いなかった時代らしいから。最近は人も増えてるし。って兄が」
宏斗「俺的には恵介に番手抜かされたのが納得行かないけどな。恵介っていうのが」
恵介「先輩みんな俺の扱い酷くないですか?」
会話で分かるように、恵介は騒がしくてノリの良い人だ。すぐに先輩とも親しくなり、同期にも話しかけ、1年生のコミュ力の塊が全てここにあるんじゃないか、と。
泰聖「俺らが1年生の時は先輩の壁が凄すぎたよね。」
泰雅「あの代だってレギュラー誰一人入れ替わってないじゃん。」
陽介「玲一がギリBチームじゃなかったっけ?」
玲一「あー、華月先輩と組んでた時?」
泰聖「そうじゃない?」
今の3年生の2つ上の先輩世代はレギュラー誰一人として入れ替わっていなく、その上、1つ上の先輩方は人数が多かった。
道哉「てか北陽と星の里って1年生誰入ったの?」
哉斗「長江、さっきの緑陽支部のドロー」
修太「了解。」
やはり、強豪校に誰が入ったのか気になるみたいです。
愛也「堀部のペアが北春日北都の中原くんだってことはわかります」
恵介「じゃあダブル後衛?」
愛也「今はそうらしい。あと星の里は、北別向陽の岩本くんと、東江南の大谷くんがペア組んでて既に大活躍してるとかで。俺が聞いたのはここまでです。」
愛也は、星の里高校に進学した堀部くんに聞いていたことだが、周りはびっくりしていることが1つ。
玲音「岩本大谷は強いって。えぐいって。」
愛也「いや、それな」
悦二「あそこペアはやばいって」
恭太「ただでさえあの二人とも単体でもすごいのにね」
と、驚く1年生たち。
修太「ん。これ志村さんの弟ですかね?星の里の。」
啓斗「あー、そうだと思います。」
泰聖「そういえば志村って弟もいたな」
なんて、強豪校に入った新一年生から知ってる人を見つけようとするみんな。そりゃまあ、気になるよね。
哉斗「って考えたら同じジュニアだった人が3人も星の里行ったんだなー」
修太「俺と啓斗に至っては元ペアだし」
玲音「南聖ジュニアの強い秘訣ってなんですか。」
悦二「コーチが良い人すぎる」
愛也「それはある」
玲一「石岡コーチだって元々すごい人だったんでしょ?」
この中にも南聖ジュニアという少年団出身が多いんです。
柊弥「平コーチと高校でペア組んでた人って言ってたっけ?」
泰聖「しかもインターハイ出てるし。東商だっけ」
修太「そうですね。たしかその時の東商って選抜も出てたはずです」
悦二「子供もすごいですよ。」
修太「ってか石岡コーチの息子、俺の弟とペア組んでるからな」
長江くんの弟は小学五年生に上がったみたいだが、今までも数々の県大会で活躍している見たいで。そのペアが、少年団の、コーチの子供だとか。
愛也「コーチの娘は中学3年生なんですけど、冬の中学シングルスで入賞してますから。全国は逃したんですけど」
玲一「そして俺の妹のペア」
宏斗「てことは南聖中?」
玲一「そう。」
彼らの下世代にも、県大会で通用する選手がいるみたいだ。
悦二「でも石橋コーチの息子と長江先輩の弟って中学離れますよね?」
修太「そうだね。南聖と南が丘。でももしかしたら俺の弟も南聖行くかもって話」
晃斗「中々珍しいパターンだね」
恵介「あんまり聞かないですよね。北春日とかでは当たり前らしいですけど」
修太「南が丘は強い人が入れば強いけど、波があるしなーって。今の5年生世代のジュニアに南が丘行く人は俺の弟しかいないし。」
哉斗「逆に長江たちの時は南が丘5人も…」
修太「そうなんだよね。だから南聖3人しかいなかったじゃん」
と話していると、不貞腐れたように道哉がこっちを見ていた。
道哉「星華は俺の代1人なんですけど」
泰聖「何でか星華って減ったよね、ジュニア経験者」
柊弥「元々ジュニア上がりと中学上がり半々だったけど、今は中学からが多いよね多分。」
陽介「実際俺も柊弥も中学からだし」
泰聖「陽介は小学校違ったからあんまりソフトテニスとは縁なかったからだと思うけど」
陽介「まあそれは、ある」
星華中は、今はジュニア経験者が減っている。昔は、結構いたみたいだが。
玲音「って考えたら、近場に環境あるって、ある意味恵まれているのかなって思いますね」
恵介「ちなみに俺と玲音は一緒ー。」
愛斗「しかも市内のジュニア人口も増えてきてるしね。どこも」
恭太「そもそも1年生半数以上そうだし」
悦二「多分ここにいる1年全員」
玲音「あー、確かに」
ちなみに2年生は5人、3年生は3人、ジュニア経験者なのだ。
晃斗「まあ、頑張って西星に呼び込め」
泰聖「今も強い子多いもんねー。」
修太「そうですよね。」
というわけで、話はまだまだ盛り上がっているようだ。