県総体の夜A
インターハイ予選、県総体で西の森市へ来ている部員一同。その、とある夜の話。
3年生の金子翔弥と2年生の夏原空都は今回同じ部屋ということで。結構お互いで恋バナしていたりする仲なので、学年は違えど話も合うらしい。
空都「やっぱりさっき話していた人が元カノさんなんですか?」
翔弥「そう。俺も久しぶりに話したけど」
空都「いや、お似合いだなーって見てました」
翔弥「ありがと。まだこれからなんだけどね、俺は」
空都「結局言ったんですか?」
翔弥「や、日曜日部活終わってから会うことになったから、その時に全部話す」
空都「おお、やっと……!」
翔弥的にも、空都と恋バナは話しやすいようで、空都も結構翔弥の話を聞いている。
と、そこに、3年生部員の滝村竜生がやってきた。
竜生「翔弥ごめん、さっき返すの忘れてた」
翔弥「あー、ありがと。貸してたのも忘れてた」
どうやら、翔弥が竜生に物を貸していたようだ。
空都「今日の翔弥先輩ご機嫌ですよ」
竜生「理由は想像つく。だって見てたもん」
翔弥「うるせー」
竜生「良かったじゃん。いいな、羨ましいわ」
空都「てか多分みんな見てましたよ」
翔弥「まじで?」
竜生「凛太たちが言ってたから」
翔弥「またあいつらかよー」
結局北陽の男子部員はそこそこ見ていたようです。翔弥が元カノと話していたところを。
竜生「実際俺と翔弥なんて似た境遇なのに、翔弥は恵まれてるよ」
翔弥「いや、そう?」
竜生「俺に比べればさー」
翔弥「…それについては何も言えない」
実は竜生も、高校上がる前に彼女がいたんだ。別れると言ってもこの部活に入る以上仕方ないことなので、竜生も最初は元カノとはそれ以降も話してたりしていた。最初はね。
でもその元カノは、今は高校の先輩とラブラブしている。ちなみに、緑陽栄高校だ。
竜生「でも結局、高校で出会った先輩のところにいっちゃったんだよなー。」
翔弥「でも結構長くなかった?」
竜生「1年ちょっとかな?」
空都「都道府県の時に話聞いた記憶あります」
竜生「確かそれ付き合いたての時だった」
空都「あの時の竜生先輩思い出すと心が痛い…」
竜生「翔弥、空都の口塞いどけ」
と、竜生の指示通りに、翔弥は空都と口を思いっきり塞いだ。
空都「すいませんって!!苦しいんですよ、翔弥先輩ガチでやって来るから」
翔弥「彼女と実はまだ別れてないってこと先生に言うよー?」
空都「そーれはやめてください!!」
竜生「クソ野郎が」
空都「いや、俺も一応1回ちゃんと別れたんですからね、」
みんなちゃんと従っている中、1人だけ実は彼女がいるのが空都。でもちゃんと1度別れたようで。
空都「付き合っているって言っても、別にほとんど会えないし、会ったら色々とやってるぐらいですよ」
翔弥「それがアウトなんだって」
空都「ふふふ」
竜生「空都は罪の多い男だわ」
翔弥「しかも大会で会ったら話してるしな」
空都「話すだけなら別に良くないですか?同じ中学なんですし、みんな分かることだし」
竜生「それはみんな分かるけどさ。まあ二人とも全中出てるから」
北春日市出身の空都だが、高校はテニスをやるためにこの緑陽市の北陽学園高校にやってきたのだ。その、付き合っているとやらの彼女は、空都とは同じ中学だが、家庭の引越しの関係で、東江南高校に進学している。緑陽市と江南市の2つの地区は、支部大会は同じなので、よく会うらしいし、それもお互い全中選手だったので、強いんですよね。
竜生「って、俺もうそろ行くわー。浦川のこと1人にしてたわ」
翔弥「あー。バイバイ。」
というわけで、竜生は自分の部屋に戻った。
翔弥「竜生って空都のこの話知ってたの?」
空都「先輩で話したのは翔弥先輩と竜生先輩だけです。竜生先輩とも恋バナになったことあるので。」
翔弥「まあ、あいつも恋愛色々としてきてたみたいだしねー。今は何もないけど」
空都「ですね。」
翔弥「にしても、紬ちゃんだっけ?テニス上手すぎない?」
空都「2年も全中出てますからね。」
翔弥「あんたと一緒じゃん」
空都「そうです。」
翔弥「普通にどこか私立とかでも活躍してそうだなーって思って」
空都「それはちょっと、家庭の事情というやつが…」
翔弥「ああなるほど、」
空都と付き合っているらしい女の子は、東江南高校の2年生の城守紬という。空都とは同じ中学である。しかも、全中選手。
高校でも既に1番手として活躍していて、個人戦でも県大会出場、今年は東支部大会にも出場していたのだ。
空都「まあ本人は、本気で続けるなら相方と一緒に広島学園で続けたかったって言ってるんですけどね。紬のペアは広島学園行ったんですよ。しかも紬は高校上がってからも半年くらいは、テニスダメでしたから。」
翔弥「あー、そうなの?」
空都「それでやっと承諾貰ったのが秋だったので、地区大会もインドアが初めてだったんですよね」
翔弥「それでいきなり東支部はすごくね?」
空都「いやそれは思います。しかもそのインドアの県大でベスト16ですからね」
それほど強い選手みたいです。
空都「翔弥先輩の元カノさんもテニス部でしたっけ?」
翔弥「まーね。でも今の南市の女子は東町高校が強いから、葉月は今回個人戦だけ県大出てる。東町第一中が全中出たメンバーが東町高校にいて、しかも2年生中心に団体も圧勝だって。」
空都「聞いた話だと、誰も私立進まなかったらしいですよ、その代の東町第一中の女子。」
翔弥「じゃあえぐいわ。しかもあんな進学校みたいなところに。ちなみに葉月は緑沢。」
空都「あ、竹岡さんと同じ高校ならそうですよね」
翔弥「だからこんなことになったのかなー。とは思うけどね」
涼成と葉月は、同じ高校でソフトテニス部ですからね。そして、男女主将で。
翔弥「空都って結構会ってんの?紬ちゃんと」
空都「まあ、ぼちぼちですかね?今は全然会えてないけど、土曜日は夕方からの元中の集まりの前に、紬の家に遊びに行くことになってて。」
翔弥「土曜日休み充実しやがって。」
空都「紬の親がいる時に、家に来いって。この前紬の母さんに言われたんですよ。それが土曜日になりました。」
翔弥「そういうことか。てか親は今も付き合ってんの知ってんだね?」
空都「どちらの親も知ってますよ。母親同士仲良いからすーぐ情報伝わるんですよ。俺の住んでるとこ田舎だから余計に、元から近所付き合いのある家でしたし。」
空都の地元は北春日市の外れにある。農地が広がっている田舎町である。空都の家は農家ではないが、両親共に農協に勤めているとか。
空都「まあ結局、離れようが何しようが、自分たち次第だと思いますからねー。本当に好きなままでいたいなら、それなりの行動しなきゃって」
翔弥「それはまあ、俺も反省点だった」
空都「まあ翔弥先輩は、結果的に良い方に繋がったじゃないですか。先輩もずっと一途に思ってたんですね」
翔弥「何だかんだ、ね。俺が自分から行動に出たから今、また話せたんだし」
空都「良いじゃないですか。」
翔弥も自分の行動に後悔はしていないどころか、むしろ良い方向に進んでいる。
翔弥「逆に空都はどう復縁したの?」
空都「まあ、俺も1度別れてからはしばらく連絡取ってませんでしたよ。気づいたら連絡先消えてたし、もうダメかなって思ってました」
翔弥「んで連絡取れたのはいつなの?」
空都「1年の8月ですね。紬のほうから、相談乗って欲しいって連絡来たんです。友達が俺の連絡先渡してくれたみたいで」
翔弥「そして復縁したのがその後……と。」
空都「最初のほうは、紬もその時全然テニスできてなかったので、せめて俺と一緒にテニスしたいって言われてそれに付き合ってたぐらいでしたけど…」
紬ちゃんは1年生の秋までテニスできる環境にいなかったので、紬が部活に入る前までの期間は、一緒にテニスしてあげてたらしい。とはいえ、最近も時間見つけてはちょこっとだけやってるみたい。
その時には東江南高校の男女部員とも打っているので、空都は東江南高校のソフトテニス部みんなと知り合いではある。
空都「で、テニスした時に、俺がもう一度告白しましたね。本当にいいの?って何度も聞かれた後に、勢いよく抱きつかれたんです」
翔弥「まあ、空都ならこの状況でも上手く恋愛できると思うけどな」
空都「俺もあと1年貫き通します。」
空都はまだ2年生。引退まであと1年以上あるのだ。
翔弥「幸せ者め。どうせ土曜日もエッチすんでしょ」
空都「分からないけど、最近ご無沙汰ですからねー。その辺は。まあ会えてすらないだけですけど」
翔弥「お前ならするわ」
空都「正直したいです。」
翔弥「まあ空都たち長いんでしょ。わりと回数も重ねてるってことでしょ?」
空都「まあ最初が中2で済んでますからね。早いとか言わないでくださいよ」
翔弥「いや俺も中3だからあんまり変わらねえよ。」
まあこの2人は、部内でもあんまりいない類にいる。それ言ったゃ、竜生もだけどね。
空都「あ、そうだ、先輩も経験者ですもんね。仲間」
翔弥「っても1回2回だけだよ?」
空都「俺も中学の時は別にそこまでしてたわけじゃないです」
翔弥「高校で急にそんな回数重ねたのね」
空都「いや回数重ねた前提で話してません?まあそうですけど。だって、会えないと…」
翔弥「溜まりに溜まってヤりたくなるんだな」
空都「そういうことですよー」
翔弥「性欲強そうだわ空都。」
空都「紬もなのでどっちもどっちですよ」
翔弥「人のせいにすんな」
空都「いやこれマジなんです」
翔弥「喜びながら言うな、キモイから」
ぺし、と空都のことを叩く翔弥。
空都「先輩本当に俺の扱い悪すぎません?」
翔弥「確かにそうかもな、」
空都「いや認めないでくださいよー、ひどい」
まあ、仲良い証拠なのではないでしょうか。
翔弥「もし復縁したとしたら、どうしてるのかなー。」
空都「多分俺の事言えなくなりますよ?」
翔弥「まあ可能性はなくもない」
空都「まあ、中学で済んでるくらいなら…」
翔弥「俺だって男だからそりゃ、好きな子相手に」
空都「大好きだからこそ、性欲強くなっちゃうんですよね分かります」
翔弥「事実でも空都と一緒にされたくねーなー」
空都「ひどっ、それはないですよ先輩」
とことん言われる空都。でも、構わず返答する。
空都「とりあえず先輩、日曜日会う時に良い結果も報告させてあげたいですね、明日からも頑張りましょう?」
翔弥「言われなくてもそのつもり。」
空都「個人団体共に優勝とかしたらカッコイイじゃないですか」
翔弥「つーかお前にハードル上げられてどうする、個人戦いないからって気楽に言いやがって」
空都「え?優勝するんですよね?」
翔弥「まあ、するけど?」
空都「おー。言いましたね。団体は力になれるよう頑張りますけど、個人戦優勝してくださいね絶対?」
翔弥「お前と約束してどんな意味があるのさ」
2人はずっとこんな調子で、遠征終盤までも仲良しでした。