密かに、本気にA






(平松源太)


6月も中旬。今週は試験期間ではあるが、週末には緑陽市で開かれる、全国交流大会へ出場も決まっている。東支部予選で勝ち抜いて優勝し、出場権を手に入れた。


先日、自分たちのインターハイ予選を終えた。結果は、個人戦は優勝。団体戦は準優勝。団体戦は1チームしかインターハイに進めることができないので、団体は敗退。まだあのチームで団体戦、やりたかったなぁ。






月曜日の朝。試験前だから部活はないんだけど、大会に出る3年生3人と、2年生の内藤吉岡ペア、俺たち5人は部活に参加している。というか今週は水曜日と木曜日には西星高校と北宮高校との大会前の合同練習になるし。試験期間の大会もきっちいね。

朝練も別にテスト期間行かなくていいんだけど、結果出場メンバー全員来てる上に、大会に出ない大橋や健一たち大勢も、部活やりたいって朝練も部活も来ている。だいたい星の里はこういう奴ばっかだけど、みんなテスト大丈夫なのかよ。

あ、人の事言えないって?それは禁句。ね?


まあ、そんな朝練も終えて、いつもより早い時間に、同じクラスの蓮と一緒に教室に入る。

荷物を置いて、とりあえず今日の試験の勉強をしなきゃと。今日は数学Vと、コミュ英と、社会か。いやテスト初日から殺す気か。ちなみに社会は選択制だが、自分は地理を取っている。


1時間目は地理なので、ひたすらプリントを見て復習。すると、後ろから声をかけられた。


「ねえ、このプリントの答えある?」
と。

「あー。これ?」
「そうそう!貸してー」
「いや俺今使ってたんだけど、」
「あ、じゃあ急いで写すー。忘れてきてさー。」

と、慌てて回答を写し始めた彼女。俺の好きな人、百菜だ。ちなみに百菜も、社会は地理を取っている。



先々週は俺が県総体で西の森に行ってて、先週は百菜が県総体で南春日に行ってて。つまりは、2週間も会ってなかったんだ。そして3年生に上がったくらいから、お互い休日も忙しくて、あまり遊べてもいない。だから正直、心も寂しい。
まあ、仕方ないけどね。お互い部活でこの学校入って、あともう少し、っていう時なんだから。


「ねえ、今日の放課後部活あるの?」
と、唐突に聞かれる。

「部活ってほどではないけど、木曜日から大会あるから自主的には行ってる」
「流石だねー。何時くらいに終わる?」
「大体昼過ぎかな?テスト終わってそのまま学校のコートで打つから。今日は先生いないし」


明日は先生いるから普通に部活みたいな感じになるんだけど、今日は薄井先生は部活来れないって言ってたから。

それに大会前だけど練習ばっかしてないで勉強しろって言われてるから、あまり長く練習したら余計に怒られる。多分ソフトテニス部の中だと、特に3年生の俺と蓮が心配されている。大学はある程度決まっているものの、ちゃんと勉強しろって言われてしまってるから。
ちなみに志村は勉強できるのであまり問題視はされていない。




「じゃあ今日家行っていい?」
と、百菜にこっそりとした声で聞かれる。

「は、なんで今日?」
「むしろ今日しかなくない?」
「そりゃ、そっか」

俺もしばらくコイツと何も出来てないから、色々と溜まってるなー。






とりあえずまあ、俺もしょうもない男だ。こいつ相手すると。
テスト中も部活中もふと、考えちゃうよね。いや俺、地味に楽しみにしてるじゃん。


本当に、二人きりになるということ自体久しぶりだ。特にゴールデンウィークに入ったあたりからは予定が合わなかったし。ソフトテニスとバドミントンって、大会が入れ違いのようにあるんだよね。面白いことに。







昼過ぎとはいえ14時過ぎ。急いで自転車を漕いで、自分の家の近くのコンビニに行く。そこで、待ち合わせしてるから。

学校近くだと人目に遭うから、今はこうやって合流していたり、百菜が直接俺の家に来てくれたり。ちなみに学校終わってから今まで百菜は、同じクラスの女子ソフトテニス部であり、結構この近所に住んでる、牧田萌絵の家にいたらしい。萌絵も、俺らの話知ってるからね。俺もだいぶ、この件ではお世話になってるし。






家に着き、俺の部屋に上がると、とりあえず俺はベッドに横になった。単純に、疲れてんだわ。


「そういえば、お互い県総体お疲れ様だね」
と、百菜に話を振られる。


「そうだね。俺は個人戦優勝したしインハイ出るけど、団体はギリギリで逃した」
「え、私と逆じゃん。」
「ってことは個人戦負けたの?団体は出るよね?」
「団体は行くよ。個人戦、ダブルスはインハイ掛けで負けた。第1シードだったのにー。もうめっちゃ泣いたわ」
「俺も団体負けてギャン泣きしたな。」


というか俺は、帰りのバスの中でギャン泣きしてたんだけどね。試合後も泣いて、写真撮る時は全然なんともなかったんだけど、その後のミーティングの時に、先生からの言葉を頂いた時に気持ちが込み上げてきて。
その時、俺から一言言わなくちゃいけなくなかったんだけど、泣きすぎて全然言葉発せれなかった。なんてことも人生で初めてだった。

先輩をインターハイ連れて行けなくてごめんなさい、って、普段泣くところを滅多に見せない2年生の徹也がずっと隣で落ち込んでるから、あの時俺までギャン泣きしたの絶対あいつが泣きついてきたせいだ、なんて。
まあ徹也も駿芽も、2年生ペアながら勝敗を左右する3番目に出て、最後まで粘って頑張ってたよ。本当に、あと少しだった。






「ソフテニ、女子も惜しかったんでしょ?さっき萌絵から全部話聞いたんだけどね」
「あー、俺は見てないから詳しいこと分からないけど。でも男女で準優勝だからね。女子は広島学園が、やっぱ強いんだよね、」
「あ、ソフテニも広島学園強いんだ?私がダブルス負けた相手も広島学園だなー。あのペアそのまま優勝したし」
「ソフテニは女子だけしかないけどね。やっぱ強いところはなんでも強いのか」

まあ実際、星の里高校もそうだ。





俺達は1年生の時から、こうやってお互いの部活の話が弾んでいた。だから結構、お互いの部活の様子とか、知っているんだよね。そして、いつしか部活の悩み事とかも、話しやすい存在に。俺は男子ソフトテニス部の主将で、百菜は女子バドミントンの副主将。お互い体育科でのクラスの役割は学級委員。

百菜は明るくて元気で、何事にも頑張っている人だ。部活も、学校生活も。クラスの人気者的存在で、女子からもかなり慕われている。




「そういえば、8月にさくら市で県大会あるんだって?」
「あー。国体予選あるよ。俺達はそこで正式に引退」
「そうなんだ。いや、日にち聞いたらさ、私丁度インハイ明けだからその時お盆休みって分かりきってるし、友達に行かない?って言われて」
「あー。百菜の親友ちゃんでしょ?俺達の話知ってるとすれば」
「そうそう!」



さくら市出身の百菜は、中学までバドミントンでペアを組んでいた子とめちゃくちゃ仲良いんだけど、その子の彼氏が、一つ下で西星高校のレギュラーでもある、千葉哉斗くんみたいなんだよね。俺は選抜予選で千葉くんと当たってるから、その時の動画、百菜経由で送られてきたんだよね。穂佳ちゃんだっけ?俺はまだ会ったことないけど。

まあ、千葉くんも県大会常連だし、そういう話になるわな。千葉くんはこのこと知ってるのかな。なんて思っちゃう。って俺、西星の人で話せるのって言われても、玲一くらいしかいないや。



「てか西星で思い出したけど、百菜と同じ中学って言ってた花田陽介、インターハイ決めた」
「え、嘘?!!」
「マジマジ。そのまま俺の後輩に勝ってベスト4」
「いやすげえなあいつ。泰聖は?長島泰聖」
「長島くんは早いうちに負けてた気がする今回。」


星華中だから、西星のレギュラー何人かとも親しい百菜。西星からは今回、福島花田ペアが、西星男子初のインターハイ出場を決めた。

ちなみに西星といえば長島くんの印象強いけど、今回ベスト32だっけ?あの組み合わせだったら全国掛けで内藤吉岡と当たると思ってたから、駿芽たちも内心ホっとしてたけどね。




「そういえば女テニもう恋愛解禁してるんだね。萌絵から話聞いたけど」
「あー。7組の藤野結芽いるじゃん?あの人、俺の後輩…というか畑中空真と付き合ってるし」
「あ、この前見た見た。女テニもう負けたから引退してるってこと?」
「そうだね。インハイ出る3年が真菜だけだから。まあほとんどの人は大会は残ってるけどね」



男子は3年生3人ともインターハイ個人戦を決めているのだが、女子は3年生は1人だけ。女テニの主将だった浦田真菜のペアは2年生だから。




「いや、私ももしあそこで団体負けてたら引退だったからさ。それだったら今頃…ってふと思ったわけよ。」

と言われる。まあ確かにそうだ。インターハイを逃せばそこで、引退だったんだから。
ちなみに百菜は国体予選を勝ち抜いているので国体には出るんだけど、でも部活としてはインターハイで終わりみたいだからね。



「まあ確かにそれはあるけどさ、俺的には、百菜にインターハイで頑張って欲しい気持ちのほうが強いから。」
「……かっこいいこと言うじゃん」
「まあ、お互いスポーツやってる身だからね。だから俺も頑張れる。」


話していると、百菜から突然、抱きしめられた。


「…何?」
「久しぶりに、したい」
「そのつもりで今日来たんじゃないの?」
「そうだけど。」

実際俺もその気だったしさ。ちょっと、部活トークが弾みすぎた。俺達部活の話するといつも止まらなくなるからさ。

俺はキスをした後、百菜のことを見つめながら、体を触る。


「んっとに、源太もこういう時顔変わるよね、」
「欲が抑えきれないから?」
「分かりやすいから良いけど」



やっぱり、好きだなあ。この人が。


「ごめん、多分今日自分勝手にやりそう」
「いつもじゃん」
「んなっ…。まあとりあえず、」

結局俺も、すぐやりたがるし、そして、こいつのことが大好きだ。

まあ、今のうちはこれが幸せだと思うから、いいか。










もう夕方になり、百菜を途中まで見送ろうとすると、たまたまコンビニに行ってたという萌絵に会った。

「やっぱり2人だったか。なんか遠くから見たことある男女いるなーって思ってて」
なんて笑われながら。


とりあえず萌絵もいるから問題ないんじゃないか、という流れで、俺は百菜を学校近くまで見送ることにした。まあ、萌絵も一緒だけど。



「やっぱお似合いだよね2人。1年生の時から思ってたけど」
と、萌絵にいわれる。

「1年生の時から思ってたの?」
と俺はつい笑いながら返す。

「息ピッタリで仲良さそうだったから。普段からよく話してたし。くっつきそうって思ったら、本当にくっつくとはねー」

と言われて、俺ら二人ともつい、照れてしまう。



「いやーでも、こっちが虚しくなるからやめてねー。」
萌絵は嫌味のように言う。萌絵は特に好きな人いるわけでもなく、そもそも出会いもないと言っている。



まあ、今も今で楽しいけど、本当は放課後一緒にどこか行ったり食べに行ったりプリクラ撮ったりとかしたいし、でもこれはあと少し、我慢。

今はお互い、インターハイに向けて最終調整。それからだ、俺達が幸せになれるのは。