17歳の誕生日の幸せ
(国本涼輝)
5月9日。木曜日。
部活三昧のゴールデンウィークが終わり、あと1週間では高校総体の地区予選が始まる。なーんか、あっという間に時が過ぎていく。
ゴールデンウィーク中の大会、春季地区大会ではベスト8に入った。新人戦からずっとベスト8の結果を残している。今回は、西星の3年生の、福島花田ペアに敗退。ファイナルまでいったんだけどなー。そこからストレートにやられたわ。流石福島さん、強すぎるってー。
その後の北春日遠征や、市内で行われた県内研修大会など、大会だらけでしたね。課題なんて最後の日にまとめてやったけど、辛かったわ。部活生の忙しさ考えてくれないかなー、先生も。なーんて。
自分が通っている南陵高校は、県内有数の進学校とも呼ばれている。なぜそんな高校を受けたのかと言うと、ただ単に兄の追っかけだ。兄は4つ上なんだけど、南陵高校でも成績トップで、関東の大学の医学部に現役合格した。元々両親も一応高学歴な家庭ではあるが、俺はまあ、この高校でもそこそこな成績だから、受験どうなってんのかね。一応希望は、教員になりたいからね。
ま、まあ、兄と違って部活やってるから……なんて言うのは言い訳か。
だって、中学で全中も経験しといて、今更辞められなかったしね。ソフトテニス。高校に上がるときも、絶対入れって、言われたもん、先輩に。
今日の部活は学校ではなく、星華公園のテニスコートで行われた。男女ともに。
次の日からは大学生の春季大会が行われるらしく、コートの1部は大学生の前日練習が行われていた。県内でも強い緑陽大学のトップの選手の姿も見られる。中々大学生のいる大会を観戦する機会がないから、すごいなぁって思った。
部活が終わると、俺は女子部員の1人と約束をしていた。だから、女子の部活が終わるまであとちょっとかかるので、少しその辺を1人でうろついていた。勿論男子の仲間はみんなすぐに帰った。寒いしね、今日。
とりあえず自分の居場所を、彼女に伝える。すぐにからかわれるから、あんまり大目に逢いたくないかな、今は。
「あ!いたー!」
「ごめん。こんな所に来させて」
俺がいたのはテニスコートから少し離れた、体育館のほう。まあ、俺も気づいたらここにいた。
「ごめんね涼輝、わざわざ呼び出して。」
「いいや。全然いいよ。」
上原杏菜。同じ高校で同じ学年の、女子ソフトテニス部の1人。クラスは未だ1度も同じになったことはないのが残念だが。中学からテニス始めて、今も活躍している人だ。中学は星華中だ。
中学の時から、大会で見かけて、可愛いと思っていた。ちなみに杏菜の中学時代のペアは、俺らと同じ少年団出身で現在の長江の彼女である梅田美桜。
そんな杏菜と同じ高校になり、そしてまさかの、気が合い仲良くなり。そんなことをしてたら、男テニからも女テニからも、お似合いーなんて、からかわれるようになった。
実際俺は、杏菜のことは好きだ。あとはいつか、告白できるタイミングを掴めば、と思っている。
だから今日、誘ってくれたのも嬉しかった。お互い誕生日だからって、ご飯行こうって。あ、ちなみに杏菜の誕生日は3日前だったのだ。だから俺も、遅ればせながら、プレゼントもちゃんと持ってきた。
ということで、近くのレストランに向かう。ここのハンバーグ久しぶりだー。なんて言いながら。チーズハンバーグ大好きなんだよここの。
「そういえば、研修大会ベスト4すごいね。」
と、杏菜から話を振られた。
「ありがとう。もうちょっとで決勝進めたのになー。大菅が強すぎたー。」
「部活終わりに見に行ったら、国本古澤残ってるもんびっくりしたよね」
「優勝したかったよー。」
その大会では、ベスト4。準決勝で西の森産業の矢野大菅ペアに敗退。この西の森産業ペアはそのまま優勝だ。
その前衛、大菅玲司は同い年。そして知り合いだ。中学からよく色々と大会や練習試合や講習会などで会ってたから、気づいたら話してたよね。だから西の森には比較的知り合い多い。
「これでまだ2年生だもん、涼輝たち来年どうなるかね」
「見守ってて。」
「応援している。」
こんな、真正面にいるのに、素直に言われたら嬉しいわ。
「中学の時からずっと、涼輝のプレー好きだったからさ。多分今まで見た男子の後衛では1番好き。」
「何それ照れる。ありがとう。」
「しかも全国経験者が。すごいよね本当に。」
「それはみんな上手いだけ。飛鳥いなかったら俺もきっとボロボロだった」
俺が中学までペアを組んでいた小松飛鳥は、今や地元を飛び出し、強豪の星の里高校で活躍している。なんか、先日の緑陽支部の春季では北陽学園高校が不在の中だったみたいだが、それでもレギュラー相手の同士討ちに勝利し、準優勝したみたいだしね、飛鳥。すげえわ。
食事の後は、自転車を押しながらその辺を歩く。それでも、話は止まらない。
辺りも良い感じに暗くなってきただろう。という時に、公園を見つけ、一休み。近くに自販機があったから、お互い好きなものを買って、ベンチに座った。
「そうそう。はい、これ。」
と俺は、杏菜にプレゼントを渡す。
「え、今開けていいやつ?」
「いいよ。」
「あ、でも待って。私も涼輝に誕生日プレゼント持ってきた!」
「お。ありがとう。一緒に開けるか。」
という流れで、俺も杏菜からプレゼントを貰うことになった。そして、一緒に開封する。
「え、可愛い!ありがとう!」
と、杏菜は物を見て喜んでくれていた。
俺が杏菜に渡したのは財布。選びに行った時に、なんとなく杏菜っぽいなって思って、即決した。
そして俺が貰ったのは、イヤホンとスニーカーだった。
「好みとか知らないで、イメージで選んだけど、気に入らなかったら使わなくていいから」
なんて言われるけど、全然嬉しいし、好みですよ。
「いや、ありがたく使う。このスニーカーとか俺の私服に合ってる」
「って思って選んだ。」
「だんだん分かってきてるね。俺の事。」
それもそれで、嬉しい。そして、とっても楽しいや。
「嬉しい。ありがとう。」
と、俺は思わず、杏菜を抱きしめた。
「わ?!なに、いきなり……」
杏菜も俺の顔をまじまじと見つめる。
ここまできたら、言うしかない。
むしろ今が、チャンスだと思って。
「杏菜のことずっと好きだった。…だから、付き合って……ほしいです。」
とうとう言ってしまった。しかも力尽きて最後は照れてしまった。ああー、格好悪い。
「……後で私から言うはずだったのにー。同じこと」
「え?」
「私も今日告白するつもりで呼んだの」
「…あ、まじすか。それはごめん」
いやでも俺は、自分から言えたからいいや。
「でも…嬉しい。」
俺は杏菜のことを抱きしめたまま、しばらく離れなかった。嬉しすぎる。
「うん。よろしくお願いします。」
「…可愛すぎか。」
この日は、杏菜のことを家まで送ってあげて、それから俺も帰宅した。ニヤニヤが、止まらんわ。
その、杏菜を送った時の光景を、西星高校の長江修太とその彼女に見られていたらしく、次の日の部活終わりに、長江に呼び出された。
「何?結局付き合ってんの?」
って、長江に聞かれる。
「昨日からね。」
「まじ?…ってかお前昨日誕生日…」
「そうだよ」
「色々とおめでとう」
誕生日に好きな子と付き合うことができたって、最高な17歳の誕生日だったわ。
「美桜が言ってた。杏菜って大人しそうに見えて結構攻めてくタイプだよって」
「…まあそれは、つくづく感じてる」
「照れてる」
「うるせー」
これからの毎日が、楽しくなるといいね。