認めてしまった恋心@






(畑中空真)


自分には中学1年生から3年間付き合っていた女の子がいた。初めて好きになった女の子で、俺から告白した。本当に好きだった。中学生というまだガキっちょな自分だったが、大切にしてきたと思うし、時には体で愛し合ったり。

でも高校生に上がり、隣町の星の里高校に進学した自分。ソフトテニス部に入るために進学し、自分の住んでいる南市の東町地区からも通学・通勤圏内である距離だ。でも朝練とかもあるから朝は早く、夜は部活終わってからだと遅い。土日も部活。そんなことをして会ってない日々が続くと、突然、彼女のほうから別れを告げられた。


その直後は本当に落ち込んだ。でも同じチームメイトの溝口亘と話してて、考えが変わった。もう高校生のうちは、部活に力を入れていこうと。恋愛は捨てよう。と。



そんなこんなで2年生に上がった。今は部活一本に絞れている……

はずなんだけど。







最近、どうも頭から離れない人がいる。まあ、俺は何もしてない。向こうがしてくることが、とても厄介……と言っちゃ失礼か。でも、俺の心を揺さぶってくる。

女テニの1つ上の先輩、藤野結芽先輩。そもそも女テニって恋愛ダメじゃん。
先月なんて駿芽がソフト部の人とコソコソしてるのバレて多少騒ぎになったし、俺はそういうことしたくない。でも。





自分が2年生になって、しばらくした時のこと。部活終わりに、江南市にある大きな本屋で買い物をし、この辺に住んでる駿芽と別れてからそれから電車に乗ろうと江南駅に着くと、1人で歩いている結芽先輩を見つけた。先輩は部活帰りだし、朝日中出身だから、最寄り駅はここだ。


「空真、どうしたのこんなところで」
「あ、いや、本屋行ってただけです。あと駿芽とさっき別れたばっかで」
「あー。駿芽の家この辺だもんね。てかこんなところでばったり会うとか運命?」
「調子乗らないでください。というか、何度も言ってますけど、俺は先輩の気には乗りませんからね。」
「んっとに、冷たい後輩だなー。」
「先輩こそしつこいです。…まあ、いいんですけど。」


気づいたら俺も年上の女の人相手に冷たいこと言ってる気がする。まあ、俺が心を許してる証拠、なんだろう。悔しいけど。

先輩の気に乗らない、というのは2ヶ月ほど前の話。簡潔に言えば、告白されたんだけど。というか、あの時告白されたから先輩のこと意識している自分がいる。

元から、気が合って仲良い先輩ではあった。でも、どうしてこんな俺なんかのことを。









星の里高校のクラス替えは2年生のみ。体育科は2クラスあるが、ソフトテニス部からは昨年クラスが違った岳人と駿芽と同じになれた。やはり普段から、部活メンで固まるよね。


休み時間、俺は浮かない顔してぼけーっとしていた。その時。


「ねえ空真、生きてる?」
なんて声をかけられる。
俺の今の隣の席の女子は、女テニの星合美月。結芽先輩とペアを組んでいて、先輩とは中学も同じ人なのだ。


「生きてますけどー。」
「結芽先輩がなんかした?」

と言われ、俺はつい物音を立てて起き上がってしまう。


「なんで知って……」
「知ってるも何も、結芽先輩の話聞いてるの私だけだし」
「…そりゃそっか。」
「しかも私も恋バナ聞いてもらったから。」
「え、美月も恋してんの?」
「この話はあーとで」


星の里の女子の部活、大半は恋愛禁止言われてるのにその大半は恋してるよな。こいつもかよ。



ちなみにこのクラスの女テニはこいつだけ。昼休みにクラスのソフトテニス部の男女4人で、固まって話すことになった。




「え、まさかお前も?俺と仲間じゃん」
と駿芽に聞かれる。こいつは今どうしてんだよ、そういえば。

「いや、俺は別に何も。結芽先輩のほうから来るだけで」
と俺は言うと、
「絶対内心喜んでる」
と岳人にも馬鹿にされる。


まあ、好きって言われるのは嬉しいことなんだけどね。そこから複雑な心が生まれてくるのだ。



「結芽先輩って惚れっぽいところあるから、優しくされたらすぐ好きになっちゃうんだよね。だから今までダメな人とか多くて、あまり恋愛に成功してない、気がする。しかも高校上がってからも結構ね。男絡みは多いほうだし。」
と美月が言う。


「やっぱ結芽先輩って恋愛に関しては経験豊富なの?」
と俺は聞く。
「まあ、一通りはあるって」
「…なるほど。」


ってまあ俺も、元カノとは色々と経験済でしたけどさ。


ちなみにその後は美月自身の話聞いたけど、俺らの2つ上のテニス部の池口将輝先輩が数ヶ月前に彼女と別れたの、美月が関わっていたらしいね。池口先輩が浮気してたとか何だとか。池口先輩はいつも優しくてかっこいい先輩だけど、まさか…ね。







そのすぐあとの土日には、東支部大会があった。インドアシーズンの大会は男女別に日にちが分けられていたが、今回は久しぶりに、女子と同じ進行だろう。


男子のシングルス、俺の出番はまだあと少しだが、今は志村先輩の応援に入る。


隣では女子のシングルスがやっているが、それも結芽先輩。つい、そちらに目を向けてしまう。

可愛いんだけど、でも元気で明るいプレー。生き生きしてて、かっこいいんだよな。

「空真?」
と隣にいた駿芽には声をかけられる。

「あ、ごめん」
思わず向こうを見てしまった。今は志村先輩の応援をしなきゃ。

駿芽にはバレたんだろうな。俺の考えてること。



個人的に星の里高校の女子の中では結芽先輩のプレーが1番好きだ。先日の全国大会の時もついつい見てしまったけど。女子の中では1番身長が高くて、そして技術も高い後衛選手。俺も後衛だけど、やはり女の人は雑味が少ないから、俺もああいう綺麗なフォームにできたらなぁって。


ああもう俺、結芽先輩のことしか考えてないじゃん。ダメダメ。これじゃダメだ。今は。






この日、自分のシングルスの試合は2回戦で、北陽学園高校の惣田に敗退。負けたけど、惣田とは元から親しいのもあったし、楽しく試合できたと思う。あと1歩だったんだけどなぁ……。やっぱ、強いや。



審判も終えると、駿芽がサブアリーナで試合をしていると言うので、そちらに向かうことになる。その途中に、トイレ帰りの結芽先輩とばったり会う。


「おつかれ。かっこよかった。」
と声をかけられる。

「ありがとうございます。負けちゃったけど。結芽先輩は今どんな感じですか?」
「これから敗者復活戦。緊張するー。」
「あー、それは緊張しますね。」


敗者復活戦か。俺は今回は関係なかったけどな。あと一勝してれば関係あったのかもだったのにな。







東支部大会を終え、この日は現地解散となる。俺の母さんも観戦に来ていたが、なんだか用事あるとかで、俺の試合が終わったらすぐ帰ってしまった。そのため、江南駅までではあるが、駿芽の母さんに送ってもらうことになった。


江南駅に着くと、

「これから暇?」
と駿芽に聞かれる。
「いや全然暇だけど。」
「どっか、食べに行こ」
「あ、了解。」


というわけで、駅すぐそこの、レストランに入ることにした。今は14時半。大会自体は昨日の残りだから、終わるのも早かったのだ。


江南駅から、俺の使っている東町駅までの電車は結構通っている。というか、東町駅を過ぎると電車の本数は少なくなって、だから東町より奥の、西町方面に住んでいる乙也や村瀬先輩は実家から通いにくいから寮生なんだよなぁ。同じ南市なのにね。縦に長い地区だから、西町は地味に遠いし。




「ところで空真、結芽先輩とは結局何がどうなってるの?」
「…やっぱその話聞く?」
「さっきの空真の様子見てたら気になって仕方なくなってきた」

……ですよね。バレてたわ。だから呼ばれた感はあるけども。

とりあえず、一連の話はした。仲良くなったきっかけと、告白されたことと、それからも何だかんだ話していることと。そして俺も正直、先輩に惹かれていることも。

認めたくないけど、悔しいなぁ。
本当に罪な人だわ。結芽先輩。




「ところで駿芽はあれ以降どうしてるの?」
と俺も逆に聞いてみる。単純に気になってた。話題振りにくかったし。


「別にそんな変わらんよ。会ったら話すし。でもこれからゆっくり会いたい時は、しばらくはどちらかの家かなって。結局会うの控えるってことだけは無理だわ。俺みたいなやつは。」

だからバレるんだなー。なんてちょっとヘラヘラしながら言う駿芽。駿芽ってきっと、欲のままに動くタイプなのかな。同じ部活だったら、村瀬先輩と岳人もそうだ。この辺はやはりみんな同類……失礼。



「薄井先生にさ、本当に好きならこんなことで諦めるなって言われたから。遠征の時の夜に、先生の部屋行って話してきて、ギャン泣きして帰ったわ」

いつの間に、薄井先生にもちゃんと話していたんだなこいつ。まあ、学校にはバレていることなので、当然先生も知っている案件だから、黙っているのもなんだけどね。




まあとりあえず、今日こいつと話す機会あって良かったわ。今度は岳人も誘って濃い話したいね、なんて約束して。





俺は結局、先輩に恋しているみたいです。

素直に認めたくなかったけどなぁ。恋心って不思議なものだ。もう高校生のうちは恋愛いいや、なんて思っていたのに、こんなにもあっという間に次の恋ができるなんて。