初恋の女の子の存在@
(溝口亘)
部活仲間見てたら、みんな良い恋愛してていいなぁ、って思うのね。
高校ではまだ恋はできていない。多分この様子だとできない気がする。女の人が何を考えているのか本当にわからない、それが怖い。自分が信用していた人に、裏切られた時の絶望感。それをまた味わう可能性もなくはないと思うと、怖い。
中学時代、2年生の12月に告白されて、3年生の10月まで付き合った女の子がいる。部活の一つ下の後輩、真辺梨華という人だ。
俺は最初、もう話す機会がないと思っていた初恋の女の子を忘れられなかった。そんな時に梨華に告白されて、ようやく別の女の人を好きになることができた。
でも、別れた原因は、梨華が別の男の人と仲良く二人きりで一緒にいる、という現場に俺が遭遇してしまったのがきっかけだ。ショックで言葉も出なかった。と同時に、あいつへの信用を全て失った。
その後結局上手くいかなくなって別れを告げるも、最初は別れさせてもらえず、俺が逃げるように別れを告げて、っていう感じだ。その後もしつこく話しかけられたけど、以降は悪い態度でしか接していない。
俺は1度裏切られたり嫌いになったりした人は二度と関わりたくないタイプだ。だからもう、梨華のことは視野に入れない。 別に好きじゃなくなったし。あんなのことされたらね。
だから女子に恋心抱かなくなったのかな。まあ、高校生のうちは部活に専念するよ。
星の里高校の男子ソフトテニス部、今は本当に恋愛に活発だと思う。村瀬先輩も彼女とラブラブだし、岳人と飛鳥は中学から続いている。特に飛鳥なんて遠距離なのに。駿芽もソフト部の年上の人に恋していて、3月に問題にはなったけど今も何やかんや関わってるらしい。
そして2年生の6月の今現在、つい最近まではお互い恋愛なんて捨てる、なんて言い合ってた同級生の畑中空真まで、女テニの結芽先輩に恋しているという話を最近聞いた。みんな、羨ましいな。
時は戻って3月の話。俺の地元の明峰市で県大会があり、その時に試合観戦に来ていた元カノの梨華に再会してしまった。
「亘くん、だよね」
と声をかけられる。
「……何。」
「何。ってひどい。久しぶりに会ったのに」
「もうお前には用はない。話しかけんな」
「何でそんなこと言うの。ラインも全部無視してじゃん」
あー、会って早々イライラするわ。無視してんのは、相手にしたくないだけだからっつーの。
「俺の事裏切ったのそっちだろ。なのに何、ノコノコと俺のとこ来やがって。早くどっか行け。顔も見たくないからもう話しかけんな」
馴れ馴れしく話してくる様子で、本当にイラついて、その場でガチギレしてしまった。顔も見たくないから、こいつの顔を見ずに俺は話す。
そして俺はその場をスタスタと去ろうとすると、村瀬先輩が俺を追うように付いてくる。すいません。
「お、おい、俺を置いてくな!」
「…すいません。」
その時は先輩からは特に何も聞かれなかった。じゃあ、戻るか、ということで、現在は平松志村ペアが試合をしているというので、応援席に行くことに。
の、途中。
「亘。梨華が亘に会ったって言って泣いてたけど。」
と、突然走ってやってくる先輩がいた。
「耕作先輩。放っといてください。」
「久しぶりに会ったのにおいおいー。冷たい後輩だな」
「今そんなテンションじゃないです。すいません。」
幼なじみであり、同じ中学のひとつ上の先輩の南雲耕作先輩だ。まあ、一連の話は知っている。俺が話したから。
「まあなんでもいいけど、梨華あいつ北高受かってテニス部入る言ってたから、今後もしかしたら県とかで会うかもよ、ってことを伝えに来ただけ」
「?!……まじですか」
一つ下の梨華はこの時は受験を終えたばかりの中学3年生だった。明峰北高の女子ソフトテニス部は何年前からも県大会常連の部活だ。俺もジュニアの時お世話になった先輩とかいるし。
「南雲くん、でしたっけ?明峰北高の」
と村瀬先輩は耕作先輩に声をかける。まあ、俺がよく耕作先輩のこと話してるから、村瀬先輩も分かるんだけどな。話してみたいって言ってたし。
「あ。亘のペアの村瀬くんでしたっけ。多分同い年…?」
「そうだね。昨年のインドアの時すごいなーって見てたから」
「それは光栄です。」
なんて、会話を交わす2人の先輩。耕作先輩は、先輩より1つ上の桐山千尋先輩と組んでた昨年のこの大会で、ベスト16に入って、西支部大会の出場も決めた人だ。
「亘の恋愛結構面倒なことになってるんで、多分今後こんなこと多いかもしれないけど、こいつのこと大目に見てやってください。」
と、耕作先輩は村瀬先輩に言う。なんだこの感覚。かつての先輩と、現在の先輩が話しているっていう。
「普段から面倒くさい奴だから慣れてる」
「ちょっと村瀬先輩それはひどいです」
「嘘。」
「今本当にそういうノリに乗れるテンションじゃないんですって」
…まあ、耕作先輩とは少し話して別れ、村瀬先輩にはその後日に、俺の過去の恋愛について全て話した。全てちゃんと聞いてくれた。
まあ、耕作先輩からそんな忠告を受け、学年が上がり次の県大会が6月の県総体。会場は西の森市。
個人戦を終えて、ペアの村瀬先輩と共に仲間のところへ戻ろうとすると、やはり、梨華を見つけてしまったし、すれ違ってしまう。
そして、話しかけられる。
「亘くん」
「だからもう話しかけんなっつってんだろ。目障り。」
「だから、なんで」
「もうお前の全てが信用できないんだよ。だからもう話しかけんなって、3月も言っただろ」
思わずきつい言葉が出てしまうけど、別にどうでもいい。これぐらい言わないと気が済まない。
梨華はその場から逃げる。と、そんな梨華を追うようにこの場を去ろうとしたもう1人の女の子に俺は声をかけた。今までずっと梨華の隣にいた人だ。
「待て、栞。」
「は、はい?!」
彼女の名は、宮原栞という。小学校は同じで、中学に上がると同時に別の地区に引っ越してしまってそれ以来だ。俺も久しぶりに見たが、すぐに分かった。
俺の、初恋の人だからなぁ。
栞も一つ下だが、小さい頃から本当に仲が良かった。妹のように可愛がったし、ずっと一緒にいた。幼稚園の時にずっと、大人になったら結婚しようね、なんて2人で言いまくってた。懐かしいや。テニスも俺がやってるから始めるって、少年団入ってきたし。
「私のこと覚えててくれたんですか…?」
「当たり前。ごめん急に。栞も北高なんだっけ?」
「北高です。…まあ、一連の話は全部聞いてます。梨華と亘くんが付き合ってたことも。」
そりゃ知ってるか。北高なんて俺と同中多いもん、男女共に。近いからさ。
「あいつなんか俺の事言ってた?」
と、俺は栞に聞く。
「あー、なんか、もう一度振り向かせるだの何だの言ってますけど、放っておいて大丈夫だと思います」
「は、それはきしょい。無視したいけどしつこいから面倒なんだよなー」
「南雲先輩曰く、亘くんが星の里進学して有名になってかららしいですよ。こんなこと言い始めたの。」
「つまりはその俺と付き合ってた事実を誇りにでも思ってんのか。」
「すぐ自慢するような人ですからね。」
そういうことか。なら、本気で御免だ。
確かに村瀬先輩とペア組み始めてから県大会でも勝ち進んだりレギュラー入ったりしてるけど、今考えて見たらそうだ、その時期ぐらいからだろう。連絡来たのは。全部無視してるけどさ。
「亘くんは復縁する気は…無さそうですね」
「もういいわあの女は。」
「まあそうですよね。私の方からも、説得してみます。」
「頼む。栞しかいない。」
まあ別に梨華も付き合ってる時は良かったし、俺もちゃんと好きだったよ。1年近く付き合ったんだし。でもあんな裏切り方されたら、もう信用ならんから。もう戻ろうとは思わない。本当に都合良い女は嫌いだ。人の事考えないで。
「じゃあ亘くんも、頑張ってください。明日の団体戦も応援してます。全国での活躍も聞いてるのですごいなって思ってますし。」
「ありがと。栞も未侑と組んでるからレギュラーか?」
「そうです。一応3番ですけど出させてもらってますよ!」
「流石。栞も頑張れよー。」
「ありがとうございます!」
そんな感じで、栞とは別れた。
小学生の時から市内の同世代のトップだった栞。そんな栞のペアは、俺とは中学まで同級生で、栞から見て1つ上の2年生の尾崎未侑。そして高校上がってから耕作先輩と付き合ってて、もう1年経つんじゃなかったっけ?耕作先輩が中学の時からずっと片想いしてたから、俺がくっつけさせたようなもんなんだけど。懐かしいな。
そしてやはりその流れを隣でずっと黙って見ていた村瀬先輩。本当に毎度のように、ごめんなさい。
「今の子は?」
と村瀬先輩に聞かれる。
「前に言った、初恋の女の子です。」
「あー。中学離れたっていう」
「そうです。栞は良い子ですよ。テニス始めたのも俺の追っかけだし」
前に、村瀬先輩とかその他色々なメンバーと初恋の話をしたことがある。その時に栞の話をちらっとみんなにしている。から、村瀬先輩は話が分かる。
まあ今は、もう何とも思ってないけどね。…多分。
「亘も大変だね、なんか。」
と、村瀬先輩には笑われる。
「いや笑い事じゃないですよ。というか早くみんなのところ戻らないと」
「あ、やべー。今誰残ってんの?」
「平松先輩たちだけですかね?駿芽も負けてたし。」
どこうろついてたんだよー、なんて岳人には叩かれるが。自分たちの出番終わってから今までの短時間濃すぎたわ。ある意味。