「みこと、叔母さんちにこれ持ってってくれない?」
「どうせ暇でしょ」と余計な一言を添えて持たされた大きな袋の中には、かぼちゃやとうもろこしやトマトがパンパンになるまで詰められていた。
「お、重い……」
「文句言わない。若いんだから運動しなさい」
この際若さは関係ないと思うけど、あえて言うまい。
今日はバイトも入っていない。暇なのは確かだし、からっと晴れた太陽によって蒸し焼き器と化した我が家で昼間をもて余すという自殺行為は避けようと思っていたところだ。課題のレポートも一緒に持っていって、冷房のギンギンに利いた図書館で冷た〜いジュースやアイスなんかを小休止に挟みつつ、日が落ちる閉館ぎりぎりまで居座ろう。
「あ、夕飯の買い物頼みたいから早めに帰ってきてね」
嘘でしょ。
***
昼日中の炎天下、『今日も雲ひとつない晴天となるでしょう!くれぐれも熱中症には気をつけてくださいね!』とにこにこ顔のキャスターさんの言葉を思い出した。
申し訳程度の日焼け止めもきっと汗で流れてしまっているだろう。日頃の運動不足も祟って息は切れ切れ、汗という汗が身体中から吹き出ていて、拭き取る先から滲むのでもはや垂れ流しだ。鏡で確認せずとも酷い顔をしているに違いないので、知り合いに遭遇しないことをただただ願う。あ、叔母さんには見られてしまった。死のう。
わたしは中学からの長い付き合いである愛用の赤い自転車をギコギコ漕ぎながら、叔母さんの家に届けたかぼちゃやとうもろこしやトマトの代わりにと持たされた、ひんやり冷えた桃の入った袋を引っ提げて帰路についているところだ。そりゃそうだよね手ぶらで帰すわけないよね、届けがてら図書館行こうなんて甘いプラン立てたわたしが2割くらい悪い。あと8割は恐らく承知の上で送り出した母上だ。もしかしたら逆かも知れない。どっちでもいいや。
「あっっっつい……」
まぬけにも課題を詰めたトートバッグには財布が入っておらず、度々見かけた自販機も恨めしげな視線をやるだけで素通りするほかなかった。図書館着いたらお茶買おうくらいにしか考えていなかったわたしは、出掛けに「ちゃんと水分取りなさいよ」と母上に忠告されたにも関わらず、水筒すら持ってきていなかったのだ。
どうしよう、くらくらする。叔母さんちで麦茶でもご馳走になればよかった。そんなことを考えながら角を曲がるべくハンドルを傾けペダルを踏んだら、
ガシャン。
痛い。と思ったときには既にアスファルトに顔を擦り付けていた。膝もたぶん擦った。痛い。疲れた。喉かわいた。だるい。ねむい。目の前をさっきもらった桃がころがっていく。そういえば桃もすいぶんだ。たべちゃえばよかった。あせをかいた瞼がおもくて、めをあけていられない。
「見つけた」
ふわ、といしきがとおのくいっしゅん、だれかのこえがきこえたきがした。