∵neta∵

04/21
ラブラバの個性って可愛いよね
俺の家系は代々呪術師を輩出している。
俺には相伝の術式は備わっていなかったが、それなりに希少な術式を持って生まれた。

前線で戦うことは難しいがサポートとしてかなり重宝されている。俺の術式を使えば生存率がおよそ4割上昇するらしい。その情報が無ければ俺はあまり術式を使わなかったかもしれない。



だから俺も今日も嫌々術式を使うのだ。

「傑くん!今日も大好き!かっこいいよー!愛してる!超好き!!らぶ!」

はあ、恥ずかしい。



俺の術式。
それは正しく『愛』。
愛を告げるとその対象を強化できる。気持ちの重さが強化量に比重する。だからといって、出会って2ヶ月の夏油にそんな激重感情生じるはずもなく。

夏油も五条も俺の術式を大したことないと言うけれど、なら俺に愛されるように動けよ。
もっと俺に愛されろよ!

ちなみに同級生で一番愛してるのは家入だ。我が術式ながら語弊しか生まないな。
家入が俺に一番優しい。だから好き。これ以外に理由はない。というか他の二人がぶっちぎりで嫌いだ。理由をあげればキリがない。
さっきも言ったが人の術式を馬鹿にしてくるし、無駄にモテるし、なのにいざというときに俺を庇おうとするところも嫌いだ。
俺は呪具で戦う以外に攻撃手段は持たない、強くもない。だから弱者として庇護の対象になるのだろう。それも無意識だというのだからタチが悪い。




俺の術式をより効果的に使用するためにある縛りを設けた。これにより強化量は1.5倍程増加する。
しかし縛りだけあって、中々しんどいものがある。
特に父親に使った時が一番最悪だった。

そう、縛りというのは「名前で呼ぶこと」

反抗期バリバリの中学2年の時、「のぶあき(父の名前)〜!愛してるよ!」と声を上げる俺の顔は無だっただろう。真顔ではなく、無だ。
ちなみに父はしょっぱい顔をしていた。地獄かよ。



「悟ぅ〜!好き好きチュッチュ!今日も愛してるよー最高!かっこいいよ!大好き」
最早棒読みに近い。だが大事なのは気持ちであり、言い方では無いので問題は無い。気持ちも無い。

五条も慣れたように後ろ手で手を振っていた。
初めの頃は術式を知っていても「は、はぁ?愛してるとか言われても嬉しくねぇし!」といった新鮮な反応をしていたのに。当時後ろからでも耳が赤いのは見えていたが、言わなかった俺偉い。



知り合って半年も経つと段々彼奴らに愛着も湧いてくるもので。
「なあ、今日何か違ったんだけど。なんつーか身体が軽い感じ?」
任務終わりに五条に呼び止められ、伸ばした人差し指で頬をつつかれながら尋問を受けた。
俺の術式の悪いところがまた出てしまった。
困ったことに相手への好意が伝わってしまうのだ。
まあ気持ちの強さによって強化量が変わるから仕方ないのだが。
「気の所為じゃん?」
「は?なわけねぇだろ答えろよ」
顎を掴まれ親指と人差し指で頬をえぐるようにつついてくる。
やめろやめろ。

「五条察してやれよ、ポンちゃんお前のこと好きなんだよ」
「さすがの家入でも殺すぞ」
適当なことを言う家入にムッとする。
「照れんなって」
「死ね」
五条まで調子に乗り出すと厄介だ。夏油が任務中でよかった。

ちなみにポンちゃんというのは俺のあだ名だ。ポンちゃんまでがあだ名であり、“ちゃん”は別に敬称では無いらしい。由来は知らない。五条が勝手に呼び始めて浸透した。まあ浸透も何も俺含めて同級生4人だが。





「ポンちゃん、今日映画でも見ないかい?」
毎度の事ながら夏油の口からポンちゃんと発せられると違和感しかない。
「いいけど、五条は?」
「悟と映画を観るのはやめたほうがいい。第一声でネタバレするよ」
夏油があまりにも切実そうに言うので笑ってしまった。経験者は語るってか。
「んで、何観んの?」
「悪魔のいけ○え」
「俺らホラーよりもホラーな日常なんだけど?」
「それは確かに」

所謂“お約束”な展開の映画だが悪くない。
ただ呪術師としての弊害か、ホラー映画が怖くなくなってしまった。けれど友人とスナック菓子を片手に観る映画は格別だった。
…五条の乱入が無ければ。
「此奴死ぬよ」はまだ許せる。死亡フラグ建ってたし。ただ「最後この女生き残るから」は許せない。
夏油のでかい溜息が開戦の合図だった。



「行け!!」
「ざけんなっ!」
俺の飛ばした赤い甲羅が五条を襲う。
ざまあみやがれ。あ。
「悪いね、ポンちゃん」
「てめっ!スターは卑怯だろ!!」

やってやられて、やり返して。

気が付けば朝の6時だった。



後日。
「悟!傑!!超好き!まじらぶ!!愛してるよー!」

「ポンちゃん!なんかすげえ身体軽いし、呪力消費が少ねぇんだけど」
「悟も?やっぱり以前よりポンちゃんの能力上がってないかい?」
映画見たりゲームしたり楽しかったので。
まあお前らの事は嫌いじゃねえからな。



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