▼20/1/12: ネタ ネタ
今途中まで書いている明治6年トリップ番外の第1話を途中までネタとして投下します^^;宜しければ追記からどうぞ。
そして続きが気になる感じでしたら教えて下さい…
(今ちょっと手が止まってしまってる…)
夢主名はデフォルトでっす。
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「あ、さつきさんじゃ」
「先生さつきさん帰って来もした」
開墾社で預かっている若者たちの声に振り向いた桐野に、さつきは畦から大きく手を振った。
傍にいたひとりに何事かを伝えると、首にかけていた手拭いで汗を拭いながら桐野がこちらに向かってくる。
「休憩に入るみたい。ちょうど良かったね、おやつここで配ろうか」
その言葉に少し後ろにいた常次郎が頷いた。
ただいまの声におかえりが返ってくる。
唇が自然と三日月を描けば、二日ぶりに顔を合わせた桐野もまた顔を綻ばせた。
「家に戻らんと直接ここに来たんか」
「うん。先にきぃさんの顔見たくて。休憩でしょ?城下でおやつ買ってきたから皆で食べよ」
「ああ、あいがとな。常次郎もご苦労じゃったな」
常次郎は桐野の従僕のひとりで、さつきが城下に行く際に付いて来てくれる事が多い青年だった。
ぺこんとひとつ頭を下げて、お茶入れてきますと常次郎が小屋へと足を向けようとした時、
「お茶入りましたー」
思わぬ声。
若者達が居住している家の方から上がった女声に、さつきは思わず振り返った。
見たことない若い女。志麻より幾らか上だろうか。
(…誰?)
瞳に不審が浮いたのに気付いたのか、近所の娘だと桐野が口を開いた。
桐野は開墾事業にさつきを関わらせようとしなかった。
開墾自体にも若者らの衣食住にも殆どノータッチ。桐野は彼らに自分達の世話は自分達でするよう指導していた。そうとは言え、食事の用意位はと、できる時はしていたのだが。
初めはそれでいいのかなと思ったのだけれど、問題ないと言われた。
遊びにおいでと医学校でウィリスが声をかけてくれた時、その場で桐野は良いと言ってくれたけれど、帰宅してから改めてさつきを前にして言ってくれたのだ。
「俺の手伝いをさせっつもりで汝を連れて来たんじゃなか。ましてや家事をさせとうて連れて来たんじゃなか。そいなら女中雇えば足りる」
「はい」
「さつき、汝は他の女とは違う」
肯首した。
悪い意味じゃない。明治の女性と比べると持っている背景や経歴が特殊だという事だ。
そして桐野は元の世界での仕事の事や東京での事を指摘した上で、俺と一緒にいてもある程度は働く場が欲しいだろうと言ってきたので驚いてしまった。
それに「お前はここの女と同じようにする必要はない」とも告られげて。
「え…?」
「やりたい事があるならそいを優先させろ。駄目な時は俺が止むっで遠慮するな。汝を閉じこめて窮屈な思いをさせたい訳じゃなか。ウィリス先生ん話、よかて思うど」
「………」
「医学校で吉田と違う空気を吸うて来るんも、よか気分転換になるじゃろう」
ウィリス先生の話は渡りに船だなと笑う桐野に、さつきは目を見開いたのだった。
その頃には分からないと思われて面と向かって下卑た悪口を言われるようになっていたから…
桐野といられるのは嬉しかったけれど、少し辛い事も増えていたのだ。
ここには志麻のような存在もおらず、辺見や別府とも少しだけ距離が出来ていた。
ふたりとは相変わらず仲は良いけれど、居住地は吉田からは遠く彼等にも家族がいる。
幸吉も新しい生活で桐野を支えるのに忙しかった。
さつきには東京にいた頃のように気軽に相談できる相手がいなくなっていたのだった。
桐野には心配をかけたくなくて嫌がらせじみた陰口については黙っていたし、それでも最近少しましにはなっていたのだけれど、
(気付いてたんだ…)
「清水馬場の屋敷も風を通さんとならんしな。汝に頼めるか?」
ん?と覗き込むようにして微笑った桐野の優しさにさつきは頷いた。
桐野は言葉通りさつきを自由にさせてくれた。
医学校では、初めはウィリスの話し相手であったのが、学生たちの英語の練習台となり、不効率を見兼ねてOL時代の杵柄で学校の書類整理を手伝えば定期的に頼みたいと言われてしまい、その内事務仕事まで回ってくるようになった。
繁忙期には週の内吉田より城下にいる事の方が多い時まであり、清水馬場に泊まることも増えていたけれど、桐野は何も言わなかった。
「汝の力が求められる所で気張って、笑って帰ってくる顔見る方がよか」
「翻訳頼まれちょる?すごいな、やってみい」
城下では間に合わず、吉田まで洋書を持ち帰って桐野をほったらかしにする事も多々あったけれど、笑って応援までしてくれて。
「きぃさん、私家の事全然できてないよ…」
申し訳なさが高じて謝った事がある。
そうしたら桐野はやっぱり笑いながら、
「俺も幸吉も一通りなんでもでくっぞ」
だから心配するなと。それよりも…
「汝はそういう風に働いとったんじゃなあ」
働く姿が新鮮だったらしい。
「じゃっどんあまり根詰め過ぎっと体を壊す。時間を決めてやれ」
「…ハイ」
「後な、俺との時間も作ってくれ」
そう口にして触れてくる手が愛しくて仕方ない。
毎日一緒にいられるのも良いのだけれど、数日離れて顔を合わせるというのは初めてでお互いに新鮮だった。
離れていた時の話をして、隙間を埋めるように抱き合って。
本当にいつまでも付き合いたての恋人のようなことをしていると笑って。
吉田に来てからいくつかの季節を過ごし、預かる若者も増えていた。
けれど、山下家に応援を頼むことはあっても、桐野が女中を入れたことはなかった。
だからここで女の姿を見ることはないと思っていたのだ。
女がいるとは、思っていなかった。
それも自分が家を空けている間に。
***
こんな感じ!途中まで!