御幸先輩とお話したことはないけれど、御幸先輩を誰よりも思っているこの気持ちは本物だ。
だけど沢村くんにこれを話すと全否定される。
「あの人、マ・ジ・で!性格わりーから!」
でも協力はしてくれるみたい。人の頼みを断れない優しい沢村くんはまるで王子様のような人だ。
でも私の求めるタイプの王子様は御幸先輩なの。もし私が怪我をしたらお姫様抱っこで保健室まで連れてってくれるだろうし、雨の日に傘を忘れたりしたら相合傘で家まで送ってくれる。たぶんそんな素敵な人。あれ似たようなこと沢村くんが同級生にしてるの見たな。おんぶだったけど。あ そこよ、そこの違いよ。沢村くんはおんぶタイプで御幸先輩がお姫様抱っこタイプ。
もちろん御幸先輩とお話してことなんてないよ。これは冒頭で言った通りホント。勝手に見てるだけ。でもいつも見てるんだもん。もう見るからに王子でしょ、顔ら辺が。
「たのもー!たのもー!誰かー!2年B組の方の誰かー!たのもー!」
2年B組のドアの前で、仁王立ちしている沢村くんの後ろで身を固くして待つ。御幸先輩を呼び出してくれるんだって。なんとなく訪問のやり口が間違っているような気がする。まあこれが野球部のノリってやつなのかと思っていたけれど、たのもー!の一辺倒をかれこれ5分。
「おのれ御幸一也め無視しやがって…」
これじゃあ埒が明かないと気付いたらしい沢村くんは目一杯息を吸い込む。その方法はまさか、
「御幸一也ぁあああああああ!話があるっす!」
「さっきからウッセーんだよ沢村!」
バーン!と扉を開けて出てきたのは待ちに焦がれた王子様。丸めたノートで沢村くんの頭にハエ叩きかのようなツッコミを入れた。見事なフォーム。登場からワイルドでイケメンです先輩。
「さあさあ、気を取り直しましてですね、」
「お前人の教室の前で騒ぐなっつったろ目立つんだよバカ」
「いやーかたじけない!こちらへドーゾ!」
「は?べたつかないでくんない?」
先輩は、まるでサラリーマンの接待みたいに振る舞う沢村くんを思いきり不審がっている。あれ なんか想像してた反応と違う。もっとこう…ワッツアップするような軽い感じを期待してただけに少し動揺してしまう。まあ状況が状況だし御幸先輩にだって機嫌の悪い日くらい何日かあるよ!女子の生理みたいなさ!
「お前ホントなんなの?つーか怖いんだけ…ど?」
そしてイライラを隠さない御幸先輩は私に気付き更に疑いを濃くした。
しかし私にとってここまで先輩と接近できたのは初めての快挙だ!念願だった対面!事件の容疑者を見る目で見られてるけどめちゃくちゃ嬉しい!近くで見る御幸先輩ほんとイケメンすぎだわうーわやっべヨダレ垂れるわじゅるり
「愛してます御幸せんぱい!これよかったらどうぞ!きゃっきゃ」
徹夜で作った愛のかたまり(クッキー)を差し出すと、先輩は恐る恐る受け取って気まずそうに笑った。
「あー サンキュ」
そして私に疑念を込めたジト目を向けて一言。
「……ヨダレとか入ってないよね?」
百年の恋も冷める一言でした。
170920 ※思ってたのと違う※人の話は聞きましょう
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