勝己とわたしの関係をみんな知らないの。
中三の時からだからちょうど一年くらいになるかな。なんて言ったってわたし達には記念日ってもんがないからそこら辺曖昧なんだよね。
しかしそんなわたし達の間に割って入る女が現れた。
「爆豪に彼女が出来たらしい」
彼の口から実際に聞いたわけじゃなく周囲の噂からだった。だから本人に確かめたの。
「あの子と付き合ってるってホント?」
最近わたしに触れる頻度が少なくなったのはそれが理由?
「ああ」
興味なさげに頷いた彼を見て、ここで初めてわたし達の関係はエッチ仲間だったってことに気付かされた。
セフレと彼女ってどう違うの?
実際はなにも変わらないよ。
やることやって、一緒にご飯とか食べてさ。たまの休みに手を繋いで街を歩く。
あの子もわたしも変わらないはず。
彼が思春期の時期に関係が始まったもんだから公言しづらかったんだろう。思春期は一日が長く人生で短い瞬間だとママが言っていた。そんな儚い時期にわたしは彼と始まってしまった。今はすこし成長して落ち着いてきたからあの子との関係を公言出来たに決まってる。
わたしと勝己。お互いが干渉しあわなかったし、お互いが一歩踏み込むのを恐れていた。彼といる時は頭の隅でそんな感情が常にあった。わたし達は都合よく愛し合っていたわけじゃない。ただ単にタイミングが悪かった。なんとなくそう思っている。
勝己の彼女だと噂の子と接触を計った。前評判として品の良い子だと聞いている。趣味は乗馬とハープ演奏。ヤオモモと家族ぐるみで関わりがあるほどにブルジョワらしい。長期の休みには家族で軽井沢へテニスでもしに行くんだろうよこのお嬢さんは。
「爆豪と付き合ってるってホント?」
似たような質問をアイツにした気がする。
女は瞬時に顔を赤らめ大袈裟なほどの甲高い声を出し挙動不審に体をクネクネし出した。
「え?あの、そんな、恥ずかしいっ!爆豪くんとは、その…はい、こここ 恋人…と言いますか、あのっえっと…恥ずかしいので、そういった質問は困ります…っ!」
まるで漫画から出てきたような女だった。清純で育ちのよさそうな、でも堅物で面白みもない、喋る言葉にユーモアのかけらもないような。清楚な男ウケだけの、クソつまんない女だった。
だからビンタしてやったの。
殴っていい理由?あるよ。勝己とわたしで平和にブギウギよろしくやってたのに、後から現れたと思えばひょいっとかっさらっていっちゃって。私は立派な被害者なの。悪いのはこのビッチだよ。
ここは目立つ大廊下。騒ぎを聞きつけわらわらと人が集まってきた。
みんな、見た目と状況に騙されないでよ。
清楚で真面目で優等生、か弱い声と男に媚びたような困り顔でへたり込むこの女。そんな被害者ヅラした女を見下ろす派手で不真面目で劣等生なこの私。
わたし達を囲む野次馬の中で、目を開き信じられないといった面持ちでこの光景を見る勝己と目が合った。
ねえ、最高の演出でしょ。
逃さないし逃げられないよ。2つ同時に手に入ると思わないで。アンタにその器量はないんだから。身の程を知りなさい。
舞台は全て整ったよ。あとは選ぶだけ。
さて、アンタはどっちの味方になる?
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逃げられない選択/選ぶモノで人間が見える
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