文鴦-趙雲 仲間化
城を歩いていると、文鴦さんの声が聞こえてきた。なんだかいつもより声が大きい?珍しいなと思いながら声のする方へ進むと、見知った大きな背中が見えた。彼の隣には、先ごろこちら陣営へ戻ってきてくれた趙雲さんがいる。
「憧れ続けた英雄が、今私の目の前に…!」
趙雲の再来と言われる彼は、幼い頃からその勇姿に憧れていたという。わたしにはそんな人はいないから、彼の気持ちが本当の意味でわかるわけじゃない。だけど、とても嬉しいことなんだって、それはわかる。
だってどちらかといえばいつも静かな文鴦さんが、こんなにテンション高くして、しかもそれを隠そうともしないなんてけっこうなことだ。
「それはすごいな。どこにいるんだ?」
「ぶふっ!! 」
これっぽっちも自分のことだとは思いもしない趙雲さんの天然発言に、わたしは思わず吹き出してしまった。
2人がこちらを振り向く。
「凪殿、よいところに!」
文鴦さんが輝かせた瞳をこちらに向けた。
「こちら、趙雲殿です!」
「あ、はい、知ってます」
彼が敵陣営にいた頃から、噂は色んな人から聞いている。味方になったときも、どれだけ湧いたか。
わたしですら名前を聞いたことがあるくらいの有名人なんだから、同じ世界の人で、しかも文鴦さんの言葉からするに後世の彼からすると、本当にすごい人なんだろう。その興奮がいまいちわからないのが残念なくらいだ。
「幼少より趙雲殿の武勇に心躍らせ、書物を何度も読み返し、時も忘れて過ごしたものです…」
「うふふ」
微笑ましさが爆発しそうで、どうしても顔が緩む。趙雲さんは自分が英雄視されていることに、半ば困惑気味だ。
「文鴦さんは趙雲さんのこと大好きなんですね」
「な!そんな恐れ多い!! 」
顔を赤くして否定する姿は、いつもの彼からは想像もできない。見たらだめな部類だろうか。まあいいか。
わたしがそんなことを思っている間も、2人の会話は進んでいた。
「『趙子龍、参る!』と一言いただきたい」
文鴦さんがなんだかよくわからないお願いを繰り出している。趙雲さんは、困惑しながらも聞き入れ、「これでいいのか?」と首を傾げた。
「ああ…、なんという幸せ!あなたと共に、文次騫、参る!」
現代風正統派イケメンだと思っていた文鴦さんの、ミーハーな一面を垣間見たひとときだった。
イケメンだから許されるんですよ、それ