法正,賈充,郭嘉に元気づけられるif


ご飯に誘われたのは、法正さんと賈充さんというなんとも珍しい組み合わせの2人だった。
珍しいけど、なんとなく雰囲気は似ているような気もする。ちょっと怖いところとか、ちょっと近寄りがたいところとか。でも実は優しいところとか。
なんて言ったら、きっと2人ともいやそうな顔をするんだろうな。

「なにを笑っているんですか」

「沈んだ顔をしていたかと思えば、よくもそう変わるものだ」

わたしの前に腰掛けた法正さんが怪訝な顔をして、その隣に座った賈充さんは呆れ顔だ。
いかんいかん、顔が緩んでたか。あれ?

「もしかして、わたしが落ち込んでたから誘ってくれたんですか?」

その言葉にすんと表情を消した2人。それはもう肯定としか取れなくてにまにましてしまう。今更っちゃ今更だけど、ある意味ホームシックのような状態ではあった。だけど軽度も軽度、よく見ているなあと感心する。と――

「遅くなってしまったかな」

突然の声に振り向くと、そこには郭嘉さんが立っていた。2人が誘ったのかなと法正さんと賈充さんに視線を移すけど、その眉間に寄せた深いしわはどうがんばっても好意的には見えなくて焦る。

「誘った覚えはない」

「ここにはあなたに靡くような女性はいませんよ」

さっさと帰れとしか聞こえませんが、とひやりとするわたしの隣の椅子を、当の郭嘉さんは当たり前のようにひく。今の言葉、聞こえてなかったわけではないでしょうに。穏やかな微笑みを崩さない辺り逆に怖い。

「凪殿」

ふいに名前を呼ばれ横を向くと、顔にかかったわたしの髪を、彼がさらりと流れる手つきで耳にかける。とたんに心臓がどくんと激しく打ったのがわかった。耳に触れる指の感触に戸惑っていると、郭嘉さんはその目を優しく細める。

「つけてくれているんだね」

一瞬なんのことかときょとんとしたわたしの耳たぶを撫でる郭嘉さんに、彼からもらったピアスのことだと理解する。

「ああ、その…すごくきれ、い、」

いつの間にか頬に添えられた郭嘉さんの手に、自然彼を見上げる格好になって、その瞳に吸い込まれそうな感覚に陥る。

「…だった、か、ら…」

もうピアスのことなのか彼のことなのかわからなくなってきそうだ。
自然近づく距離に、危うく目を閉じそうなったところでわたしの理性が警鐘を鳴らした。
これはやばい、と慌てて身を引こうとしたものの、添えられているだけのはずの手に抗えない。
と、焦るわたしの視界がふいに暗くなり、後ろから柔く抱きしめられる感覚。それと同時に郭嘉さんの手がわたしから離れた。

「それ以上目を合わせると孕ませられますよ」

耳元で低いバリトンが響き、ひゅっと自分の息を吸う音と肩が跳ねるのが連動した。
いやいや、郭嘉さんも郭嘉さんだけど、あなたも大概では?!とは言えず、「法正さん、もう大丈夫なので…」と小さく呟くにとどめる。
そっとわたしの目から離された法正さんの手のひらの奥では、賈充さんが郭嘉さんの襟口を後ろから掴んでいた。
法正さんも賈充さんも、身のこなしが軽すぎやしないだろうか。それともこの世界ではみんなこれくらい普通なのか?こんなところでも己の身体能力の低さを嘆くことになるとは…と半ばどうでもいいことを思っていると、

「法正殿、いつまで抱きしめているつもりだ」

郭嘉さんの襟口を掴んだままの、賈充さんの冷たい視線がわたしの後ろにいるであろう法正さんに向けられる。こっわ。

「もうしばらく遊んでおきたいところですが――」

仕方ありませんね、とまたしても耳元で囁いてから法正さんが離れる。ひい、と心で叫んで鼓膜に残る声を消すように耳を覆ったって、誰が責められよう。むしろよく耐えていると褒めてほしい。
そんなわたしを見て、くつくつと喉を震わせる法正さんは鬼だ。


「お前は警戒心というものを知らんのか」

郭嘉さんを向かいの席に追いやった賈充さんが、わたしの隣りで呟く。

「え?知ってますし、けっこう警戒心強い方だと思うんですけど…」

「それはまた…」
「おやおや…」

わたしの答えが聞こえたらしい法正さんと郭嘉さんが、驚いた表情を作ってから愉快そうに笑う。なにがおかしいんだ?

「そんなことではすぐに喰われるぞ」

そう目を細める賈充さんに、わたしは「えええ?」と首を傾げるしかなかった。

3人してわたしで遊ばないでほしーんですが