秀吉さんが孫悟空、五右衛門さんが猪八戒、凌統さんが沙悟浄。そんな話をしたらしい。
「俺が沙悟浄なんて酷いと思わないかい?」
拠点の飯店のテーブルで向かい合って、肩をすくめて見せる凌統さんは、そう言う割にはひどいと思っていないように見えた。むしろなんだか楽しそうだ。
「でもその3人なら、妥当だと思いますよ?」
「うーん、まあそうなんだけどさ」
お似合いなようなばらばらなような三蔵御一行に、ふふふと笑いが漏れる。
「あ、なに笑ってるんだよ」
「だって楽しそうじゃないですか」
と言ったところで、へいお待ち!と店のおじさんがやってきた。お盆にはいちおしだとすすめられた杏仁豆腐が2つ。杏仁豆腐食べるの、なんだか久しぶりだなと思いながらスプーンでつつく。
「あ、おいし」
独特のこの感じ、たまに食べるたびに新鮮な感じがして好きだ。目の前の凌統さんも、なんだかんだうれしそうにしてる。これはたしかに店主おすすめと言うだけある。ノリのいいおじさんだから、来るたびにおすすめも変わるんだけど、それも込みで嫌いじゃない。
あれ、そういえばさっきまでなにを話してたっけ?
「あ、そーだ。わたしもその三蔵一行に入れてくださいよ」
あやうく杏仁豆腐でそれまでの会話がぶっ飛ぶとこだったと思いながら、話を戻す。
「ん?んー、そうだね、あと残ってるって言えば…」
「いえば?」
それ以外のキャラクターって誰がいたっけ?とわたしも記憶を探すけど、あとは敵くらいしか思い出せない。
「白竜」
スプーンをこちらに向けた彼が出した名前は、聞いたことがあるようなないような。ぱっと浮かんでは来ないけど、なんだかかわいらしいんじゃない?
「どんなのでしたっけ?」
「三蔵様の乗ってる馬」
「え…うま…」
馬…馬か。
「ぷ、ふはははははは」
わたしがそんな変な顔をしてたのか、凌統さんが笑い出した。
「そんなひどい顔しましたか、わたし」
「悪い悪い、困った顔してるあんたがなんだか可愛くてね」
この場合のかわいい、は喜んではいけないやつだろう。とは言っても、イケメンにかわいいと言われていやな気はしない。イケメン恐るべし。
「うーん、でもわたし、三蔵さんを乗せられる自信がないんですが…」
そう言って杏仁豆腐を口に放り込む。
「むしろわたしより、三蔵さんのほうが鍛えてて体力あるような…」
細身だけど、ちゃんと締まった身体をしていそうな彼女を思い浮かべる。そして杏仁豆腐をもうひと口。
「否定はできないね」
ですよね、と肩をすくめると、凌統さんが頬杖をついて目を細めた。
「ま、あんたが倒れても俺がおぶってあげるから安心しなよ」
「う、力尽きるまではがんばれってことですか…」
うなだれるわたしに、彼は声を上げて笑う。
「それじゃあ、最初から俺に抱きかかえられてるかい?」
挑発するように弧を描く口元が、やたら色を帯びて見えた。
それはそれで恥ずかしいですけど