なんて言ったらいいんだろう。イケメンのはずの郭嘉さんが、なんだかとても残念に見える。
いや、うん。なんとなくそういう人なのかな…とは思ってたけど。
妖魔相手に武者修行している美人さんがいるらしい、なんてうわさを聞きつけてきた張本人である郭嘉さん。お酒と美女が大好きな彼が行かないわけがない。どこにかわからないけど、そんな彼に共感を抱いているらしい郭淮さんも同行する。それから、その美人さんに心当たりのあるらしい星彩ちゃんも。そしてことの成り行きに興味があるわたしも。
郭嘉さんのすごく自分勝手な意見と、郭淮さんの的確なつっこみを楽しませてもらいながら、稲姫ちゃんを見つけ出した後。郭嘉さんはさっそく星彩ちゃんと稲姫ちゃんを口説きに行った。
それを見て、わたしの横に立つ郭淮さんが、郭嘉殿は命がけで今を楽しんでいる、とかなんとか、感動気味に呟く。どこに感動要素があったのかなぞだ。
それにしても父親の目の前で、よくもまあ2人を誘えたなと思う。しかもその父親は張飛さんと忠勝さんだ。楽しむとかそういう問題じゃない気がするのはわたしだけだろうか。見ている分には害はないし、なんだか楽しいからいいんだけど。
そう思いながら、張飛さんと忠勝さんに睨まれた郭嘉さんが、じりじりと後ずさってくるのを笑いをこらえて見守る。わたしの横に並んだところで、彼はひとつため息を落とした。
「凪殿、今日の宴はどうやら二人きりのようだね」
郭嘉さんがさも当たり前のように囁くものだから、あやうくそうですねと口をつきかけた。
いやいや、今なんて?
「ええと、わたし、郭嘉さんと宴の約束、してましたっけ…?」
「おや」
恐る恐る尋ねたわたしに、郭嘉さんは目を開いて首を傾げて見せた。その表情はこちらに非がある気分にさせるけど、そんな約束をした覚えはない。
ふと隣にいたはずの郭淮さんがいないことに気づいてあたりを見ると、わたしと郭嘉さんの少し後ろでこっちの様子を伺っていた。微笑ましそうにするのはやめてほしい。
「凪殿は、私と語らうのは嫌いなのだろうか?」
郭嘉さんの声に引き戻されて彼を見ると、伏せたまつ毛が整った顔に影を落としている。ああくそう、なんてきれいな横顔してるんだ。
「そーいうわけではないですけど…」
「では、ぜひおつき合いを」
ふわりと微笑んでこっちに体を向けて差し出された手に、あきれてため息がもれる。なんつー変わり身の早さだ。ぱちん、と音を立ててその手を叩こうと思ったら、そのままちゃっかり握られてしまった。
「別にいーですけどね、わたしは」
「あなたならそう言ってくれると思っていたよ」
うれしそうに笑う郭嘉さんに、あきれを通り越して諦めにも似た感情が浮上する。
「郭嘉さん、そんなことばっかりしてたらいつか刺されますよ」
それは困ったね、とどう見ても困っていない顔で言ってのける彼が、そこら辺うまくやりそうでなんだか虚しくなってきた。
「…ひどい男ですね」
呟いた言葉が自分で思っていたより切ない響きになって、ちょっと戸惑う。あれ、わたしなんでこんな感じになってるんだ?
「酷い、か」
「あ、いえ、それはもうわかり切ってることなので、その、ええと」
なにを言ってもフォローにはならなさそうで困る。直視できなくて落とした視線の先には、さっきから握られたままの手。そういやこの手はいったいいつ離してくれるんだろう。
「ねえ凪殿。こんな酷い男でも、あなただけは手放したくないのだけど」
「…へ?」
思いもよらないせりふが降ってきた気がして、顔を上げる。
ほんの少しだけその表情が切なく見えるのは、わたしがそうであってほしいと望んでいるからなのか。
「…本当に、ひどい男ですね」
握られた手をゆるく握り返すと、郭嘉さんは愛おしそうにその目を細めた。
最初から頭数に入れてくれてるから、それでいーか