信長さんと伸行さん、決して仲の悪くない兄弟がなんで戦わないといけなかったのか。どうがんばってもわたしにはわからなかった。
伸行さんがもうこの世にいないことを知ったのは、すべてが終わった後だった。わたしなんかが口を挟む余地なんかないのだから、当たり前といえば当たり前。そう、当たり前だ――。
なぜだか涙は出なかった。どう言えばいいのかわからない非現実感。いやもうここにいること自体非現実的なんだけど。だけど、ここにいる人たちはちゃんと生きていて、信行さんもちゃんと存在していて。ちゃんといたはずなのに…もういないなんて嘘みたいで。よく心に穴が開いたみたい、なんて言うけど、そんなはっきりした感じでもなくて。なんだかふわふわしているような、そんな変な感じだ。
特に目的もなく歩いて、たどり着いたのは訓練場だった。
ここに来れば誰かいるかと思ったけど、あいにく今日は誰もいない。しばらく1人ぽつんと佇んで、勝手にわたしの特等席だと思っている、名前も知らない小さな白い花の横にしゃがみこんだ。
「凪?」
どれくらいぼんやりしていたんだろう。かけられた声の方を向くと、勝家さんが立っている。
「あ…勝家さん」
「姿が見えないと思ったらここにいたのか」
わたしの横までやってきた勝家さんを見上げて彼の表情を読もうとしたけど、よくわからない。
「勝家さんはどこに行ってたんですか?お市ちゃんも信行さんも、」
いなかったけど、と続くはずの言葉は出てこなかった。信行さんがもういないことを、全然理解できていないことにわたし自身が驚く。
「、ごめんなさい…」
いや、と言って、勝家さんがわたしの横に腰を下ろした。どこか遠くを見るようなその表情に、なんだか胸がしめつけられる。
「俺も追腹を切ろうと思っていたんだが」
勝家さんの静かな声が響く。
おいばらをきる、という聞き慣れないはずの言葉が、後を追って死ぬことだとなぜだか瞬時にわかってしまって、息を呑んで彼を見る。
ゆっくりこちらを向いた勝家さんの瞳が大きく見開かれたかと思ったら、困ったように眉が下がった。
「そんな泣きそうな顔をするな」
「だって、だめです!勝家さんまでいなくなったら…!!」
「心配はいらん。信長様にも姫様にも、叱られてきたところだ」
なんで世界はこんなにも理不尽なんだろう。勝家さんもお市ちゃんも信長さんも信行さんも、誰も悪くないはずなのに。織田家の人たちだって、不安だっただけのはずだ。
「悪かった」
凪にも怖い思いをさせたな、と頭に手を置かれ、堰き止められていた感情が溢れ出した。
「謝らないでください、勝家さんはなにも悪いことなんかしてない!伸行さんだって戦いたかったわけじゃない!誰も、だれも悪くないのにっ…!!」
言葉と一緒に溢れた涙が、ぱたぱたと地面を濡らす。
「そうだな、誰も悪くない」
わたしの涙をすくいながらそう呟いた勝家さんの声が、苦しいくらいにとてもとても痛々しくて、今までなんで泣けなかったのかわからないくらい、涙が止まらなくなった。
なんで、なんでなんでなんで