とてつもなく疲れた。今回の任務はなんだったんだと首をひねる。まあ、勝手について行ったわたしが言うのもなんだけど。
「いやでもあれは…」
小太郎さんが突如襲ってきたのを思い出して、ぶるりと震えた。あいかわらずよくわからない分身を大量に出すのは本当にやめていただきたい。
しかもそれだけで終わらないのが今回の恐ろしいところ。
「どうしたんだい、浮かない顔してるじゃないか」
肩に乗った手の重みに驚いて目を見開いたわたしを覗き込んだのは、垂れ目の色男。
「びっ、くりした。凌統さん、どーしたんですか?」
「それはこっちの台詞だっての。なんかあったのかい?」
ん?と首を傾げる彼に、しゃべりたい欲求が高まってうずうずする。
「聞いてくれますか!」
彼の腕を取って意気込むわたしに少し面食らった様子をしたものの、頷いてくれた凌統さんは優しい。さすがフェミニストと名高いだけはある。わたしの中でだけど。
「変な力を持ってる人がいるって聞いて、気になってついて行ったんですけど…」
氏康さんが小太郎さんに話していたのをたまたま聞いたのが始まりだった。李典さんも行くっていうから、わたしも喜び勇んでついて行ったら、そこにはなんと変な髪型のおじさんがいた。
「しかも変なのは髪型だけじゃなかったんですよ」
「いや、髪型はとりあえずおいときなよ」
「でも変ですよね?」
あの髪型はどうなっているんだろうと思いながら尋ねる。髪型とひげで星を表現してるんだろうか。毎朝セットするの大変だろうに。
「まあ変だけどさ」
すんなり共感してくれたことに満足して続ける。
「なんか奇跡とか言って分身するし、火は出るし、挙げ句の果てには雷まで落ちるし!! 」
見る見る凌統さんの顔が渋いものになっていく。言ってて自分でも寒気がしてきた。雷が落ちたときなんて、当たるんじゃないかと気が気じゃなかった。本気で死ぬかと思った。実際当たりはしないらしいんだけど、わかってても怖いものは怖い。そしてなにより、自然現象なのに当たらないなんてそんなことなかなか信じられるわけがない。
「途中で小太郎さんも分身して張角さんたち襲い出すし、李典さんは奇跡信じ始めるし、もー意味わかんなかったですよ!」
「そりゃまた…災難だったね」
不憫だと言わんばかりに、凌統さんの眉が下がる。こんなときになんだけど、その顔はセクシーだ。
「でもまあ生きて帰って来てよかったよ」
よしよしと頭を撫でられて、怖かったのかなんなのか、よくわからない気持ちが膨らんだ。ひーんと泣きつくわたしの背中を、凌統さんは子どもをあやすようになでてくれた。
は、もしや毎朝の髪のセットも奇跡?