傾国の美女後


目の前で3人の美女が和やかに話をしている。ように見えるけど、実際は笑顔で女の戦いが繰り広げられている真っ最中である。

「………おそろしい」

「凪殿は混ざってこないんですかい?」

いつの間に来たのか、左近さんが隣に立ってなにやら楽しそうにわたしを見下ろしている。

「左近さんは、わたしにあの中に入れって言うんですか?」

眉間にしわを寄せて、左近さんを見上げる。

「美人が集まってるのは眼福ですからね。ぜひ凪殿も」

くつくつと笑う彼に、わたしはむうと唇を尖らせた。
見劣りどころか足元にも及ばないことは、わたしがよくよくわかってる。3人ともぼんきゅっぼんで肌出しまくり。足の付け根ぎりぎりまでスリットが入ってる甄姫さんが、1番布面積が広いってどーいうことだ。

「それって嫌味ですよね?」

「いえいえ、本心なんですがねえ」

相変わらず本心の見えない男だなと思う。真顔で思ってもいないことを言えてしまえそうだ。いや、たぶん言う。
そのしたり顔を崩してみたくて、戦中にこそりと呟いた彼の言葉を思い出して尋ねてみる。

「左近さんは貂蝉さんがお好みなんですか?」

「は?なんですかい、突然…」

驚いた顔をした左近さんに笑いかける。

「一緒に堕ちたくなっちゃうんですよね?」

事実わからなくもない感情かもしれない。性別関係なく、気になってる人に切ない顔されたら寄り添いたくなるものだ。

「聞いてたんですか、あなたも人が悪い」

人が悪いといいながら、特段困った様子も怒った様子も照れた様子もない。

「たまたま近くにいたから聞こえちゃったんですよう、ひどいなあ」

軽い口調でごまかしてみたけど、聞いたときは左近さんのセリフにどきりとした。なんだかものすごく色っぽかった、なんて。大人の色気とでもいうのだろうか。左近さんにそう言ってもらえる貂蝉さんが、少し羨ましくすらあった。

「…あなたって人は、不思議な人ですねえ」

「え?」

上から声が降ってきて見上げると、左近さんがわたしを見ていた。

「ふいにそうやって大人の顔をする」

彼の言わんとすることが理解できず、きょとんとするわたしに、左近さんははははと笑う。

「やっぱり見間違いですかねえ」

「え、いや、わたし、けっこう大人ですよ?」

いやマジでと言ってみたところで、彼にはいはいとあしらわれる。色気がないのは認めるけど、そこまで童顔ってわけでもないはずだけど。時代が違えば見た目年齢も違うんだろうか。

「でもまあ、凪殿はあの方々とは違うかもしれませんねえ」

頭に手をぽんぽんと置かれ、わたしは真意を測りかねて眉を寄せるのだった。

それはいい意味?悪い意味?