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 サイタマはなにを考えてるのかよくわからない、とお前が言うから「俺はいつもお前のこと考えてるよ」と返してやる。
 目の前の男は「うれしいな」なんて言うけど、それはほんとうにうれしいと思って出た言葉じゃない。上っ面の社交辞令に騙されるほど俺はばかじゃないけれど、わざわざ「うそつき」となじるほどひどい話でもないだろう。だってそんなのは今さらだ。
 ゾンビマンは俺のことを好きだと言うくせに俺の言葉を信じなかった。置いていかれることに慣れた男はとても臆病だ。一片の偽りもない剥き出しの愛を晒しても触れずにそっと眺めている。
 浮かべられる笑みはさびしげで、俺がどれだけ近づいても、ゾンビマンのそばにはいつも孤独がいた。
 好きなやつの言葉さえ信じられない哀れな男の赤い瞳はいつも涙の膜に覆われている。ゾンビマンのことだけを考えている俺は、その濡れた瞳を隠すために、お前がいつも厳しい眼差しをしているんだと知ってるよ。
 なんだかむなしい関係だな。でもやっぱりそれも今さらだろう。変わらないものはなにをしても変わらない。だから、お前の瞳は今日も薄く濡れている。
 ゾンビマンが「好きだ」と言うから、俺は愛を返したのだ。だけど「好きだ」と言ったきり、ゾンビマンが俺に触れることはなかった。





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