おなもみ

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「……かんえもん、なんだ、それ」

二年い組の長屋の一室。兵助は、実習から戻ってきた同室の勘右衛門にあどけない声を零した。
成熟しきれていない体で『それ』を背負う勘右衛門は、大きな瞳を歪ませる。

「うー。見ればわかるだろ兵助、一年生だよ。今日のパートナーだったんだ」

二人を含め、二年生は先程まで新入生と合同の実習をしていた。新入生には体験授業を、二年生には初めてできた後輩の面倒を見る訓練ようなもので、兵助もパートナーの新年生を連れて学園を駆け回ったのだが、だからといって、誰がそれを部屋にまで持ち帰るだろうか。
よいしょ、と一年生を背負う腕を持ち上げる勘右衛門の姿は、まるで乳母か何かのようで、兵助はこみ上げる口元を押さえずにはいられなかった。

「そ、それはわかるけど、何で勘右衛門がここまでおんぶしてるんだよ」
「ああうん。おい、名前ー……だっけ、授業は終わったんだぞ。おまえも帰ったほうがいいんじゃないのか」
「やだよう、おはませんぱい……」

名前と呼ばれた一年生は、勘右衛門の背中でその肩を丸める。膝や足首を怪我をしているようだが、既に包帯が巻かれた後だ。

「なにがあったんだ?」

もう一度兵助が首をかしげると、勘右衛門は苦笑い混じりに言う。

「忍者は常にけがに備えて多少の救急セットの印籠は持てって、木下先生が言ってただろ。だから名前が転んだ時に手当てしたら……」
「なつかれたってわけか」

名前は勘右衛門に背負われ、心地よさそうにのしかかっている。

「早く帰したいんだけど、なんか……」
「おはませんぱい……」

勘右衛門は、その場にあぐらをかくなり、膝の上に名前の腰を下ろす。そしてその頭を撫でてやると、名前はもぞもぞと小さな体を更に縮こまらせた。それを光景を見下ろしながら、兵助は苦笑混じりに溜め息をもらす。

「ははあ。なんだかんだで、おまえもそいつのこと気に入ってるんじゃないか?」

そう兵助が得意げに勘右衛門を見たが、そのしたり顔は呆気なくくずおれた。

「おはませんぱい……ぎゅってしてください」
「え、ええっ……じゃあちょっとだけだぞ。ほら、ぎゅーっ」

「聞けよ!!」


'110614