酷く疲れきった様子の光秀を見かけたのは、その日の勤務時間を終え職員室に顔を出した時だった。聞けば数日まともに睡眠を取っていなかったらしく、目頭を押さえながらもパソコンに向かおうとする光秀を半ば引きずりながらも帰宅させたのはついさっき。
なぜか俺は光秀の下敷きになって身動き取れないでいた。
背中に感じるのは柔らかな布の感触。そう、俺はスプリングの効いた大きなベッドの上に居る。
視線をずらすと胸元には少し癖のある茶色の髪の毛が見えた。指を通せば存外に指通りが良く、ふわりとしている。そのままいつも俺が光秀にされるように、くしゃりと混ぜるとくぐもった呻き声が耳に届く。やがて聞こえ始めた規則正しい寝息を確認すると、再びその感触を確かめるように髪の毛へと触れた。
病院を出るまでは「大丈夫だ」「大丈夫じゃない」とお互い譲らず光秀と口論を続けていたが、車の鍵を奪い助手席に無理矢理押し込んだことで渋々ながらも大人しくなった。
「全く……人のこと言えないじゃないか」
「あ?」
ふてくされたように踏ん反り返って座る光秀を見やる。
(……子供みたいだ)
その様子に口元を緩めれば、それに気がついたのか若干苛ついた声が返ってきた。
「なに笑ってンだよ」
「いや、ずいぶん不貞腐れてるなと思って」
「誰のせいだよ。それより、さっきのヤツはなんだよ?」
「さっきの?」
「人のこと言えないとか言ってたじゃねぇか」
「あぁ……光秀は俺にちゃんと飯食えだの、休めだの、寝ろと言ってくるが、お前はどうなんだって言いたかったんだ」
「可愛い可愛い部下の管理も仕事のうちだろ?ましてや恋人とあれば、な」
「っ!そうじゃなくて!……お前が倒れでもしたら」
「そんなヘマしねぇよ」
そう言って光秀は車窓を少しばかり開け、煙草に火をつける。
信号が赤になり車内には静かなエンジン音が聞こえるばかり。
光秀の言い分も分かる。――それでも。
「光秀のこと心配なんだ」
ポツリと呟いた言葉は思ったより車内に響いた。
信号が青になりアクセルを踏む。隣に座っている光秀の表情は確認出来ないが、少なくとも動揺しているであろうことは、ぎこちない動きで分かった。
「いつも人の事ばかりで、自分の事は後回しじゃないか」
「そりゃあ、手のかかるヤツが多いからな」
「茶化すな」
「実際そうじゃねぇか……放っておいたら仕事に没頭しすぎて飯食わなかったり、かと思えば七輪でボヤ騒ぎ起こしたり」
「今それは関係ない事だろ!」
光秀はゆっくりと紫煙を吐き出す。
「わぁーってるよ。テメェの管理ぐれぇ出来ねぇで、外科部長なんざやってられっかよ」
「だったらちゃんと休め」
「へいへい」
やがて小さく笑った光秀は、持っていた携帯灰皿へと煙草を押し付けた。背もたれにゆったりと体を預け、軽く目を伏せる。
「真琴」
「なんだ?」
「ありがとよ」
「ん」
改めて礼を言われるも擽ったさが込み上げてくる。途端に甘い空気を帯びる車内に、俺は光秀の話に耳を傾けつつ車を走らせた。
光秀の部屋に辿り着き、ドアを閉めたとたん後ろから抱きすくめられた。存在を確かめるようにキツく、けれど包み込むように回された腕が温かい。首筋にぐりぐりと額を押し付けられ若干擽ったさを感じる。
(……大型犬みたいだ)
大型犬といってもじゃれてくるだけの類とも言えず、獲物を狙う獰猛なあの瞳を瞬時に思い出してしまい慌てて平静を装う。
(いまはそんな事考えてる場合じゃ……)
勝手知ったるというように、玄関を抜けリビングへ向かう。車の中でもだいぶ眠そうだったからひとまず仮眠をとらせた方が良いだろうと思考を巡らせ、その足で寝室に連れて行くことにした。
「光秀歩きにくい」
「おー」
「おい……言ったそばから体重かけるな!重い」
「もっと体力つけたほうがいいんじゃねぇの?」
「っ、るさい!落とすぞ」
「はぁ……オメェの匂いたまんねぇな」
「なっ……バカ!嗅ぐな!」
首筋に掛かる吐息が妙な熱を帯びている。すうっと息を吸う僅かな音さえも拾えてしまうほど、身近で光秀の存在を感じ取り頬に赤みが差す。
「腹減った」
「うっ、ぁ、耳元で喋るな」
「真琴……悪ぃ」
やけに色っぽい、艶を含ませた低い声で囁かれ、背筋にゾクリと甘い痺れが走る。
これ以上は拙いと体を反転し光秀の胸元を押し返そうとした瞬間、それ以上の力が俺の方へと加わり、いとも簡単にバランスを崩してしまった。
「もう限界だ」
二人分の体重を受け止めたベッドが鈍い音をたてる。
「光秀っ、いきなり何……って……寝てる?」
あまりにも性急な様子に文句を言おうと思ったが、俺ごと押し倒した張本人は寝息をたてている。先ほどの噛み合わない会話も眠気故のものだったと分かると、途端に羞恥が込み上げてくる。
(眠かっただけか……恥ずかしい)
最初から仮眠を取らせようと思っていた。だからこれで良かったのだ。
誰が見ているわけでもないのに思わず顔を覆ってしまう。顔から火が出そうだ。
そんなことがあったのがつい数分前。俺の気持ちなんかお構いなしに眠っている光秀が憎らしく思えてくる。その反面、滅多に見せない無防備な姿が嬉しい。
(甘えてくれているんだろうか?)
少しばかり重いが引き剥がすのもなんだか勿体無く感じ、シーツを適当に引っ張って被せてやる。こうやって光秀に甘えられる状況は、いつも子供扱いされてばかりの俺にとってはまたと無いチャンス。少しでもこの状況を楽しもうと顔を綻ばせたのだった。
ふと意識が浮上する。優しい温もりに包まれ、ふわふわと満たされた気持ちになる。
(……あれ?俺、いつの間に寝ていたんだ?)
体を起こそそうとしたところで気付いた。確か俺は光秀に押し倒される形で下敷きになっていたはず。それが今はどうしたことか形勢逆転し、光秀の胸元に寝そべるように抱き抱えられていた。
寝室には煌々と明かりが灯っている。
(しまった、電気を消し忘れていた)
視線を巡らせ時刻を確認すると明け方の四時過ぎ。どうせ二人共今日は非番だ。起きるには早いし二度寝してしまおうと、電気を消すべく体を動かした時だった。
ドクりと心臓がやけに大きく脈打つ。ぞわと全身に鳥肌が立ち、呼吸も荒くなる。
(どうしよう発情期が)
「は、ぁ……ン」
襲い来る感覚に気持ちは焦るばかり。
(と、とりあえずどこかで処理を)
「ん……真琴」
「!」
小さく身じろいだ光秀だったが、背中に回された腕の力が強まった。起きたのかと表情を伺うが、その目はしっかりと閉じられており口元がモゴモゴと動いている。
「寝言か……」
安堵の息を吐きその表情を眺める。口を僅かに開け寝息をたてる姿は年齢よりも少しばかり若く見える。その目の下にはうっすらと残る隈。
そこに触れたのは無意識だった。
(……ッ、やば……い)
「はっ、ぁ、も……無理」
下肢に熱が集まっていく。
光秀の存在に煽られるように加速する。『光秀に発情している』そう頭の中で思ったのと同時に、その証である栗色の耳と尾が現れた。
抑えが効かなくなる。羞恥が、理性が。そう認識してしまえば、あとはポロポロと脆く剥がれ落ちるようだった。
「あっ、は……光秀っ」
息を吸い込めば煙草の香りに混じり光秀の匂いがする。発情したことにより敏感になった嗅覚が伝えるものがダイレクトに全身に響き、染み渡る。
腰が揺れる。ふいに触れた光秀のそこが既に反応を示していることに気が付く。
(な、なんでもう……こんなに)
「……エロおやじ」
ぽそりと呟いた口元は知らず緩く弧を描く。俺を抱きしめて寝ているだけでこんなになって。それ程までに求めてくれているという事実に嬉しさが込み上げる。それを認めただけで光秀を知る箇所がきゅうと収縮した。
スラックス越しにそっとそこに触れる。そのままゆっくりと撫でると同時に、俺はなるべく音を立てないようにベルトを外していった。
***
正直驚いたというのが俺の率直な感想だった。
俺は今真琴に襲われている。
「ぁ、ん……はぁ、ぁ」
「んぁ、あ……光秀」
いくら寝ていたとはいえ、さすがに直接触れられたら気が付く。
ねっとりと絡みつくそれは覚えのあるもので、下肢に熱が集まっていくのを感じた。
最初は夢かと思った。最近は学会の準備と激務が運悪く重なり、睡眠時間を削っての勤務でそろそろヤバいと思っていた頃に今日の真琴のアレ。ご無沙汰だったことも拍車をかけて都合の良い夢でも見ているのかと。
薄らと目を開けたところに飛び込んできたのは、俺のものをしゃぶる真琴の姿だった。下を向いていて俺が起きたことには気付かず、チロチロと赤い舌をちらつかせ頬を染めながら奉仕する姿を見て声を発さなかった自分を褒めてやりたいと思う。
暫くして、くちゅりと水音が響き顔を歪めた真琴。後ろも弄っていることは安易に想像出来た。
(エロいな……って、発情してンのか)
常にない状況に納得いったと同時に、ちょっとした悪戯心が芽生える。
(せっかくのチャンスだし楽しませて貰おうか)
再び目を閉じその身を委ねる。狸寝入りを決め込み、俺はこの状況を楽しむことにした。
(へぇ……視界塞ぐっつーのはこんなにも感覚が変わるモンなんだな)
相手が次どんな動きをするか分からない。視界を閉ざされたことにより想像力がより働き感覚が鋭利になる。
(今度真琴に目隠しでもしてみるか)
ギシりとベッドの軋む音と、次いで腹に添えられた手。自身の先端に触れる熱いものと、添えられた真琴のものであろう手に期待が膨らむ。
「んぅ……ぁ、はぁ……」
「やぁ、おっき、い」
我ながらまだまだ若いなと思いつつも、はちきれそうな怒張がゆっくりと、熱くキツいソコに呑み込まれていく。
(やっべ……気持ちいい)
思わず腰が浮きそうになるのを必死に抑えた。
鼻にかかった甘い声が鼓膜を揺さぶる。発情して理性が飛んでいるのか、普段から声を抑える癖のある真琴の声が今日に限ってよく出ている。控えめで照れて声を抑えるのもそそられるが、俺としては気持ち良いモンはイイって素直になったほうがより楽しめると思っている。
「んんっ……は、ァ」
一番太い部分を含んでしまえば少し楽になったのか、震えながらも真琴は着実に猛りを咥え込んでいった。呑み込んでは少し腰を引き、またゆっくりと呑み込んでいく。
(あー……思いっきり引き寄せてぇ。掻き回してぇ)
「ぁ、と、すこし」
ぴとりと肌と肌が合わさった事から全て収まったのだと分かった。殊更ゆっくりと挿入されたことで、熱くうねる内部をより感じられる。
真琴がはっと短い息を吐く。腹に添えられた手が僅かに震えていて、爪を軽く立てられる。次いで腹に感じる飛沫。
「ぁ、ン……ぅ、あぁっ!」
(っ、ぐ……)
「は……ぁ、イって、しまった……」
(突っ込んだだけでイったのかよ……ったくどんだけエロいんだ)
軽く達してしまったことによる締め付けに、グッと腹に力を込めてやり過ごす。それでも発情は治まっていないようで、パタリと動く尻尾が足に触れる。
暫くして落ち着きを取り戻したのか真琴が再び動き出した。
「んっ、は!ぁ、っあ」
「はぁ……っ、光秀、ぁん」
腰を引いては落とす。その繰り返し。
「ぁ、う……みつひでぇ……」
(あー焦れってぇ)
真琴のペースでやっているから当然といえば当然なのだが、とっても焦れったい。俺を使っての自慰を見ている。いや実際に見てはいないが、そういう気分だった。
やがて上下の律動から、腰を落としたまま左右に円を描くように動き始めた。それもじっくり味わうようなゆっくりとした動きで。
「んぅ……ひっ、ぁ」
「はぁ、ン……ぉく、きもちい」
「あぁ、ぅ、光秀、みつ、ひで」
ぐぷ、ぐち、と嬌声に混じり卑猥な音が響く。
「ぁ、ぅ!ひっぁ、ぁ、また、イっちゃ……」
一際声が高くなる。同時に尻がきゅうと締まり、何かを擦るような粘着質な音が増えた。
(おいおい、まさか)
奥まで咥え込んだ状態で僅かに腰を揺らしながら、あろうことか真琴は自身を扱いていたのだ。
「んぁぁ、は、ぁ……光秀」
(マジかよ……完全にオナってるじゃねぇか)
「はぁ……みつひでぇ、おきろよ……ばかぁ」
(ッ!!くそっ)
完全に煽られた。
寝たふりをしていたことがバレたらきっと怒るだろうが、勝手に襲ってきたのはそっちだ。そう言い訳をしながら、しなやかな腰に手をかけた。
「ひぁっ、ぁ、やぁぁ!!」
ぐり、と最奥を張り詰めた怒張で抉る。腹に飛沫を浴びたが気にする余裕などない。
「え?……んぅ、みつひで?」
「愉しそうなことしてンじゃねぇか」
「や、あぁぁ!まって、やらっ、イってるからぁ!ひぁぁ!」
「気持ちいいんだろ?奥」
「ァ、あ、ぅぁあ、またクる」
騎乗位で腰骨と尻がピタリとくっ付いている状況にも関わらず奥を穿つ。逃げるように腰を上げようとする、肉の少ない腰を掴み容赦なく引き寄せる。
「おらっ!イけよ」
「やらぁ、むり……っ、ぁ!」
「無理じゃねぇだろっ、突っ込んだだけでぶちまてたくせによぉ」
ニヤリと口角を上げれば、みるみる目の前の顔が蒼白になる。
「!!」
「どんだけエロいんだか」
「な、お、起きて……」
「おー」
「……いつから」
「しゃぶってるとこ」
「っ〜〜!!」
ぼんっと音がしそうなほど真っ赤になった真琴。両手で顔を覆い隠し縮こまっていく。
(やべぇ、可愛い)
感情が素直すぎるぐらい下半身に直結するらしく、ちょうどそれを真琴も思い知り、余計に羞恥を煽ったらしい。
「ッ、ひ!おっきくするなぁ、ばか!」
「しょうがねぇだろ」
「えろおやじ」
「あぁ?」
「やぁっ!!」
涙目になりながらも減らず口を叩く恋人を、繋がったまま押し倒す。
「俺にしてほしかったんじゃねぇの?真琴」
「う……」
「なぁ?」
頑なに顔を覆う腕を退かし、頭上でゆるく拘束した。
「どうしてほしかったんだ?ん?」
潤む瞳をまっすぐ見つめながらゆっくりと腰を引く。
「は、ぁっ……くぅ」
途端に目を細め、真琴は切ない吐息を漏らした。それと同時に出ていくなとでも言うように、きゅうきゅうと締め付けてくる。
抜け落ちるギリギリで腰を止め、ゆるゆると小刻みに動かす。
「ここが気持ちいいのか?」
「んやぁ、あ……はぁっ」
目元を潤ませ緩く首を振る。涙に濡れた睫毛が酷く煽情的で、つくづく綺麗な顔の作りだなと、熱に浮かれた頭でぼんやりとそんなことを考えていた。――その綺麗な顔を快楽で染め上げて自分だけのものにすることが、この上ない極上の楽しみなのだが、そこは男の浪漫というところだろう。
「ここか?」
「あっ、や、そこっ、じゃ……っ!」
「そうは言うが、気持ちよさそうじゃねぇかよ」
「そ、だけど……んっ」
「だけど?」
「……はっ、ァ……いじわるっ!」
「ちゃぁんと言わなきゃ分からねぇだろ」
わざと真琴の好きな場所を外すようにして揺さぶる。淫らに腰をくねらせ欲しがってくる癖に、決定的な言葉を告げようとしない。
本当に強情で、意地っ張りで、恥ずかしがり屋で、可愛い。
早くその仮面を取っぱらって、何もかもさらけ出しちまえ。
(俺だけに、俺だけの……)
「真琴」
引き寄せ、耳元でひとこと。その名を呼ぶ。
「……ぁ、ぅ……みつひで」
途端にきゅんと締め付け、離さないと絡み付いてくる内部。
あぁ、本当に可愛い。
「奥に、ちょうだい」
「奥?」
「ん……はぁっ、おく、きもちい……から」
「そうだな。あとは?」
言いながらゆっくりと腰を進めていく。
「あっ、ぁ……あぁぁ!おくっ、はいって」
「おう。ほら、ちゃんと言えって。してやっから」
「あと、は……ッ、んぁぁ、ぐりぐりって」
「いつも嫌だって言うじゃねぇか」
「らって、ぐりぐりすると……おかしくなる、からぁ」
「気持ちよすぎてか」
「ん」
片足を肩に担ぎ、ぐっと体重をかける。途端にヒクリと後孔が戦慄く。
「ひあぁぁ!や、ぁ、やっ!」
「嫌じゃねぇだろ」
「あぅ……ぁ、ぁ、ァ」
口をついて出てしまうのは癖みたいなものだろう。さして気にすることもないし、表情を見れば本気で嫌がっていない事も分かる。
案の定吐き出した言葉もそうらしく、悲鳴に近い嬌声を零しながらもコクリと小さく頷く。
渇いた唇をひと舐めして、口角を釣り上げる。
「ほら、気持ちイイだろ?」
「んぅ、ぁ、っく!……もっと」
「もっと?」
「みつひで、もっと……ぐりぐりって、して?」
「はっ……ぁ、真琴」
最奥まで押し込み、そのまま円を描くように腰を動かす。時折しこりを押しつぶすように奥をこじ開けるようにしてやれば、水に打ち上げられた魚のように真琴の体が跳ねる。
「ひぃぃ、ッぁぁぁぁ!」
「っ、はぁ!たまんねぇな」
「ひうっ!ぁ……みつひで、みつひで!」
首を仰け反らせ、惜しげも無く晒される白い肌に戸惑うことなく舌を這わせる。声を上げる度に震える喉仏に口付けと甘噛みを繰り返すと、それさえも快楽にすり変わるらしく、殆ど力の入らない手で制される。
全身が性感帯になったかのように感じ入る姿がたまらない。
限界を訴える自身を開放すべく、真っ赤な舌を覗かせながら誘ってくる小さな唇にしゃぶりつき、溺れていった。
「だぁから謝ってンじゃねぇか」
「……」
「はぁ……そもそも真琴が襲ってきたんじゃねぇか」
「っ!」
「うぉっ!叩くな!わ、わかったから枕を離せ」
あれから数刻後。
目の前にはようやく発情が収まったが、シーツにくるまって手負いの獣のように威嚇してくる真琴の姿がある。
「……発情してしまって我慢できなかったんだ」
「おかげで良いモン見れたけどなァ」
「うっ……も、元はと言えば光秀が寝るときに押し倒したからだろ!」
「俺のせいかよ」
「おまけに寝たふりまでして!」
「あれは悪かったって」
真琴が顔を真っ赤にして、まくし立てるが正直言って目に毒だ。
シーツを被っているが情事の痕を色濃く残す身体を全て隠せるわけではない。良からぬ欲望が再びぶり返してきそうになるが、これ以上無理させるのは流石に忍びない。
「あ、あの光秀……」
「なんだ?」
「その……疲れてるのに、我慢が効かなくてすまなかった」
前言撤回。
本人はそのつもりはないだろうが、上目遣いでそんなこと言われて我慢出来るわけがない。文句は後でいくらでも聞いてやることにして、今は目の前の獲物を美味しく頂くことにする。
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