目の前の獣からどう逃げるか画策する。
 じりじりと後ずさるも、後ろ手で探っていたシーツの感触が無慈悲にも途切れてしまったことを悟った。背中を嫌な汗が伝い落ちる。
(ほんとうに……捕食される兎にでもなった気分だ)
「それ以上下がると落っこちンぞ」
「お前が近寄ってくるからだろう!」
「真琴が逃げるからじゃねぇか」
「じゃあ、その手に持っているものを仕舞え!」
「それは聞けねぇな」
 その手に持っているもの……。それは兎の耳と尻尾を模した、所謂大人の玩具だ。
 光秀は「あんな夢見ちまったのは、これを使えって事だったんだなぁ」などと、ふざけた事をほざく。
 本当に馬鹿馬鹿しい。それに惑わされこうして迫ってくる光秀も、それを強く拒否出来ない、俺も。


 滲む視界の中無機質な機械音と、自分の耳障りな声が響く。もうどれだけこうしているだろう。随分長い時間かもしれないし、ほんの数分かもしれない。
「はっ、ぁ……あぅ、ぅ、ん」
「さっきまでの威勢はどうしたよ」
「っ、るさ! ぁ! は、あぁ、ァ!」
 くくっと喉で笑う声。後ろで暴れまわるものが、光秀の手によって角度を変えられる。それがうまい具合に、中で細かく振動する別の物をしこりに押し付けた。人工的な容赦なさに逃げ腰になり、無意識にシーツを蹴り、ずり上がっていた。
「おいおい、逃げんな」
「ひっ、ぁ、も……やっ、らぁ! あぁっ!」
 そんな俺を目敏く見とがめ、引き戻されてしまう。
 ローションを尻の中に流し込まれ、卵型のローターを埋め込まれた。そして、そのまま蓋をするように突っ込まれたプラグ。その持ち手部分には可愛らしい茶色の尻尾が付属している。
 いつも受け入れている光秀のものよりは小振りだが、それでも圧迫感は拭えない。何より埋め込まれているものが、そのプラグだけではない。
「時に真琴クン」
「ひぃっ、あ、ぁ……っ、はぁ、っく」
「コレ、なぁんだ」
 どうすっかな、コレと既に中で振動する物と同じタイプのものを、俺の目の前でぷらぷらさせる。
「ッ、や、ぁ! だめっ、これ、いじょうは……」
「ンな事言ってもよ」
 光秀の視線が俺の体に落とされる。ねめつけるようなそれに、嫌な予感が増す。
 そしてある一点を注視する。
 嫌な記憶がフラッシュバックする。中と外。震えるもので同時にイかされ、光秀のモノをさらに受け入れ、限界まで泣かされた記憶。
「やっ、やだぁ!」
「!」
 光秀の視線を遮るように、震え勃ち上がる自身を両手で隠した。
「はっ、流石にしねぇよ……そこには、な」
「なっ、ァ!? ッ、ひっ!」
 体をひっくり返され四つん這いの状態で、光秀の眼下に晒される。
「このプラグな、ローター付けられるようになってんだ。こうやって、な」
「は……あぁぁっ!? ァ、あ、やらっ、きぁ!」
「お……今の。夢で見たみてえな鳴き声」
 押し込まれた二つのものが、それぞれ違う動きで媚肉を刺激し、カクンと体の力が抜ける。それにより、また刺激される場所がずれ、新たな快感を呼び起こす。
「あぁっ!」
「へばってんなよ」
 ぺしりと小さく尻を叩かれたあと、腰を抱え直される。
「ひぃっ……ま、って! ハ、ぁ……いれちゃ」
「それも悪かねぇけど、今はこっちな」
 そう言い腰を高く上げたかと思うと、太腿の隙間に熱く滾ったものを捻りこんできた。
「く、ひっ!」
「っ、はぁ……動かすぞ」
「ン……はぁ、あぅっ!」
 汗で湿った肌の間を、ズッズッと光秀の熱が往復する。自身も擦れ、一緒に刺激され、再び崩れ落ちそうになるが、腰を掴まれているため足がガクガク震えるばかり。
「こうしてっと、ほんと兎みてぇ」
 むにむにと尻肉を揉まれ、ついでとばかりに尻尾も摘まれ、ぐりぐりと動かされた。その動きで中にあるものが掻き回され、弱いところを容赦なく抉ってくる。
「きっ、ぁ!」
「おっ。かーわいい声」
「っ〜〜!!」
(な、んか……むかつく)
 なおも腰を揺らしながら愉しそうに尻を揉み、尻尾を掻き回してくる光秀。
 腹の底にモヤモヤと溜まる感情。面白くない。むかつく。――光秀が見てるものは本当に俺?


 パシンと光秀の手を払い除けた。
 次いで尻尾を中のローターのコードごと掴むと、それを一気に引き抜いた。
「っく、ぅ、ぁ……!」
「真琴?」
 頭に付けられたカチューシャを取り、それを後ろから覆い被さり、呆けている光秀に向かって投げつけた。
「光秀は……夢の中のおれで、満足なのか?」
「そんなわけねぇだろ」
「っ、だったら!」
 尻たぶに手をかける。
「ちゃんと、ここで……満足させろ」
(ちゃんと、目の前の俺を見て……愛して……)
 見せつけるように、ゆっくりと割り開く。
 光秀からは全て丸見えなのだろう。ひゅっと息を呑むのがわかった。
「……わり」
 腕を取られ正面からぎゅうと抱きしめられ、涙に濡れた頬に口付けが落ちてくる。申し訳なさそうに次の言葉を告げようとする光秀のそれを指で制する。
「どっちの俺がいいか、思い知らせてやる」
 光秀は何も言わない。と言うより、目を見開き、驚いて言葉も出ない様子だった。
 トンと光秀の肩を押す。油断していた光秀をそうするのは簡単だった。反動で尻餅をついた光秀の上に乗り上げ、いきり立つ光秀自身に手を添え、その上に腰を落とした。
「ふっ、あ……っ、ン」
「はぁ……ぐ!」
 散々玩具で弄られたそこは、簡単に飲み込んでいく。全て受け入れたことに歓喜し、うっとりと、長大なものが収まった腹をさする。
(ここに、みつひでが……)
 そう考えるとそれだけで体が熱くなり、光秀を咥えこんでいる部分が切なく震える。
「っは、……ぁ、真琴」
「あっ、は……おっきくなった」
 下腹部に力を込め締め上げると、光秀から荒い息が吐き出される。同時にビクビクと震え、より質量が増し、中を圧迫される。
 腰を掴まれる光秀の手に力が込められる。筋張った指先が力を込めることで白くなり、腰の肉に食い込む。
「くそっ、煽んな!」
(もうすこし、あと……すこし)
 ふっと後孔の力を抜く。ぐちゅっと湿った音がやけに大きく聞こえた。
「はっ、ぁ……ああ、っあ!」
 自重によって深く、奥へと猛りを誘う。腰をくねらせ、足を絡ませる。奥の奥まで受け入れ、堪らなくなり、光秀の逞しい背中に縋り付いた。
 首に手を回し、項をそっと撫でた。
 獣のような呻き声が聞こえてきたと思った刹那、大人しくされるがままだった光秀が激しく腰を打ち付けてきた。
 きっとこうなることも、俺の中でわかっていた。それを甘んじて受けるし、そうして欲しいと、光秀にならどうされても良いと心の何処かで思っている。
(もっと俺だけを求めて、俺だけに夢中になって)
「あぁっ! あっ、ア……あ、つい」
「は、ぁ……っ、嫌っつーほど満足させてやらぁ」
「ひぁぁぁ! ぁ、ふ……みつ、ひれ……っ」
 夢の中の自分にまで嫉妬してしまうぐらい、光秀に夢中になっている。
(ここまで夢中にさせたんだから、責任持って最後まで面倒、見てくれよ?)
 揺れる視界の中、光秀にめいっぱい抱きつき、光秀に見えない所でうっとりと笑うのだった。


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