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“One adult, Premium”
なんだか聞いたような声だと思って顔を上げて、仰天した。銀幕のスターだった。しどろもどろになりつつ料金を告げると、私の様子を分かって、彼女は妖艶(初めて使った言葉だけど、そうとしか言いようがなかった)に微笑んだ。
「ヒミツよ」
シャロン・ヴィンヤード。世界的な知名度のハリウッド女優に、色気たっぷりなうつくしい日本語でそう囁かれて、どこからどう処理していいか分からなかった。サインくれぐらいは言っていいのかしらと思う。大女優もブロードウェイは見に来るんだなあ。
「日本語お上手ですね…」
「ありがとう。友人がいるのよ」
「だとしてもすごいです」
金属板のアメックスを切って、サインをもらう。あわよくば複製をいただきたいと思って見ていたら、“どうぞ?”と言わんばかりのウインクをいただき、慌てて全身を叩いて探し、自分の手帳のきれいなページを開いてサインペンを差し出した。年齢を感じさせないしなやかな指が少しだけ触れて、相手は女性だってのにミーハーな心は舞い上がる。
”Thanks, sweetie”
ひえー。言ってみたーい。
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