激務の彼氏に会えない 降谷零





⚠️文中一部にホラー表現があります。⚠️つけとくので心臓弱い方は飛ばしてください
K学全員生存ifです。地雷の方は引き返して
作中に捜査等の表現がありますが、この人一切のド素人なので間違っていてもすーっとお見逃しください

いらんけどなんやかんやで生きてる警察学校組のひとたちの現在一覧以下
・萩原研二:問題の事件ではさんざん怒られた防護服の着用で死亡には至らなかった。変わらず爆処

・松田陣平:萩原は死んでないけど、あまりに毎年煩わしいので爆弾魔逮捕のために原作同時期に一課へ転属希望を出して通った。病院から不審物の通報があったので死亡回避

・諸伏景光:警視庁公安部所属警部補。件の事件では赤井さんが上手に立ち回って死亡回避

・伊達航:警視庁捜査一課所属警部補。あんなつまらない事故では死んでない

・降谷零:警察庁警備局警備企画課所属の警部 そのまんま。ゴリゴリの出世頭


***


 午前二時、バイブレーションではっと目が覚めた。ワンコールで止まったのを確認して、ほっと息をつく。着信であってメッセージではないので、携帯をひらく必要なんかないけど念のために開いて、まちがいなく発信元が零くんの番号だってことを確認して、零くんの写真をみて、寝る。

 夜間のこの着信は、彼の安否状況を示している。ワンコールなら今日も無事で、元気に仕事をしていて連絡ができない。ツーコールなら、のっぴきならず元気ではないが、生きている。スリーコール以上続くなら会話できるので、応答してかまわない。そもそもコールがなく、それから24時間以上なんの知らせも来なかった場合は、危機的状況なので折り返しまたは調査が必要。以上は、今回の潜入捜査がよっぽど長期になりうるということで、初期の初期に決めたお約束だった。今日はギリギリの二時だったので、元気ではあるけどワンコールとツーコールの境目といったところだろう。

 今、どんな顔をしてるんだろう。どこにいるのかな。せめて状況が一段落して、息をひとつつけるだけの余裕があったらいい。贅沢をいえば、怪我をしていないといい。前に会ったときは腕がぐるぐる巻きだった。彼は腕の怪我を怪我だと思っていないふしがある。足とか怪我してくれればまだ、多少は動かなくなってくれるんだろうけど。

 声ぐらい聞きたいとは思うけど、彼をとりまく壮絶な環境をまえにそんな寝言はとても言えないわけで、大昔に撮った動画を見返した。動物園のふれあいコーナーで、置いても置いても寄ってくる大量のひよこに困り果てる零くん。『撮ってないで助けろよ』あ、声、聞かなきゃよかった。会いたくなりすぎてしまう。

 眠気があっちへ飛んでいってしまったから、仕方なく寝落ちするまでパズルゲームで遊ぼうと思ったら、眠気は帰ってこなかった。ゲームオーバーするたびにその声を聞き返してしまったからでもある。私はバカだし、零くんは麻薬。



 「顔ひっでえ。何?」

 学生時代の同期と久々に顔を合わせたら、開口一番これだった。何?はどっちかって言ったらお前の口の悪さだが、クマがひどい自覚もあったので何も言えなかった。

 「うるさい」
 「あ?………あー、ゼロな、心配しなくても死なねえだろ」
 「…何も言ってないですけど」
 「顔にすげぇでっかく書いてあんぞ。零くんが心配〜会いたい〜って」
 「………今世界一会いたくなかったの松田くんだわ」
 「そりゃ悪かったな。もう会っちまったからどうにもなんねえだろ。メシ外にしねぇ?」
 「ちょっと。話聞いてる?会いたくなかったって言ってんじゃん、なんでご飯一緒って話になんの」
 「蕎麦の気分だな。蕎麦行こうぜ」

 ぜんぜん話を聞いてもらえない。手首をつかまれて食堂の列から外され、あれよあれよという間に玄関に引っ張られて、気が付いたら近くの蕎麦屋で面と向かって座っていた。零くんの話をしないんであれば、仲のいい誰かと一緒にいると気がまぎれるのも確かだしいいかな、と思った矢先。

 「で?」
 「何が」
 「ゼロから最後の連絡いつ?」

 聞くなよ。

 思わず食べる手も止めてしまったが、松田陣平がそんなことで尋問をためらうはずがない。ごく当たり前のことを聞いていますの顔でまっすぐこっちを見てくる。

 「…それは声あり?なし?」
 「ありで」
 「………2か月前」
 「まぁじで!?お前それは……」

 言葉にならなくとも、松田くんがその先に言いたいことは分かる。いくら天下の公安様でも、そこまでまったくの無休で働かせるはずがないだろう。電話一本ぐらいかけられるんじゃねえの。当然そんなことは、私がいちばん思っている。でも所属は違えど同じ警察官、公安という部署の尋常じゃない側面をそこらへんの人よりはよく知っている以上、口を閉ざさざるを得ない。そもそも零くんが公安配属になった時点で、その覚悟をしたと一度言った身だ。そうそう簡単に撤回はできないし、したくない。

 「…よく耐えてんな」

 沈黙のあとのコメントは、意外に優しくてちょっと心にしみた。もうひとりの当事者に会えない以上、当然誰にも褒めてもらえない我慢のはずだったから。

 「ありがとう」
 「…眠れてねえだろ。その感じ」
 「昨日だけ、たまたまね。身体はちゃんと疲れるから、今日は眠れるよ」
 「やりきれなくなったら呼び出せよ。班長とかと一緒に騒ぎに行ってやるから」
 「うん」

 職種の性質上、呼び出そうったってそう気軽に呼び出せるものでもないし、呼び出したところで揃いにくい。それでも、零くんとの最初からを全部知っている友人がそう言ってくれることがありがたかった。二人分の食事代を出そうと思うぐらいには感謝したけど、思った以上に同情してくれた松田くんに逆にご馳走されてしまった。



 初めて出会ったのは大学卒業して間もなく、警察学校に入ったときだ。入学式で総代を務めた彼だったので、名前と顔は私のほうが先に一方的に知っていた。顔を見るより前から今年の総代は警察学校史上でも最優秀成績、なんてとんでもない噂が囁かれ、そのうえ壇上に上がればハーフの美形ときたもので天が二物も三物も与えた殿上人だなと思った。けれども、教室に入ってしまえば彼は、ちょっとばかし変に生真面目なだけの年相応の男の子だった。正義感が強すぎるあまり、周囲のいわゆる“ふつう”の生徒と衝突することも多々あったし、いちいち主張はぐうの音も出ないほどの正論だったし、その頭の出来や使命感たるやまったくふつうではなかったが、何か納得いかないことを解決しようとするときに取る手段とかコミュニケーションの取り方は意外に無邪気で幼かったりして、ちょっと安心したのを覚えている。

 近づくようになったきっかけは萩原くんだ。彼はうちの代きってのチャラ男だったので、男女比9:1でどっちかというと男子校の空気が漂っているなかで、男女別で固まりがちだったグループを中和して仲良しで卒業させた偉業があるが、中でもクラスで席が近かった私によく声をかけてくれていたのだ。といっても、

 『香織ちゃーん、ヘアピーン』

 用件はもっぱらこれだったけども。で、そうやって人をヘアピン呼ばわりする萩原くんを、

 『いい加減自分で買ったらどうなんだ』

 と嗜めてくれていたのが、降谷くん(当時こう呼んでた)だったというわけだ。

 そうしてたまたま席が近かったことから、時折彼のグループと一緒に遊びに行くことが出てきて、仲良くなった。班長以外のメンバーに誰にも恋人がいなかったから、飲んでいるときは理想のタイプだの恋人像だの、妄想の結婚式での挨拶だのがよく話題に出て盛り上がることが多かったのだが、ある時の飲み会で、萩原くんが次どうしてもオトしたい女の子がいるから、妄想最高のデートを考えてほしいと私に言ってきたことがあった。泥酔していて細かい記憶はないけど、偉そうに講釈垂れる女に意外と彼らが盛り上がって聞いてくれた、なかなか楽しかった思い出だ。まあそこは前置きで、本題はそのあとの、寮に戻る帰り道での出来事。

 めずらしく降谷くんが酔ったからコンビニに寄りたいと言って私を連れてグループから離れ、ふたりきりになって、私が言ったバカみたいなデートプランをまるまま復唱して、一緒に行こうと言ってくれたのである。

 『最後には観覧車から夕焼けを見て…すごくいいプランだと思う』
 『やだ、やめてよ』
 『いや、本当にいいって思ったんだよ。……香織、』

 ちなみに、彼が私の名前を呼び捨てたのはこれが初めてだ。酒が入っていてぼやっとはしていたけど、ずっと苗字で呼ばれてきた声にとつぜん読み上げられた自分の名前には結構びっくりした。

 『できるだけ忠実に再現するから……その相手、僕じゃダメかな』

 緊張してる顔なんて初めて見たし、私のためにそんな顔をしてくれているのだと思うとばーっと何も考えられなくなった。とても現実のことには思われないぐらい、嬉しかった。

 それで本当に彼は夢のような遊園地デートを、天気まで操ったんじゃないかというほど私が主張した通りに運んで、一日の終わりにていねいに好きだと言ってくれた。それなりに仲がいいとはいえ、私の中でそれまでは“あの”降谷くん、と言うぐらい同じステージの人ではなかったので、もちろんデートの最初は戸惑った。でも、彼の作った半日の時間があまりにも私のために仕上がっていたから、最後には彼の告白を正しい方向から素直に受け止めることができ、晴れてその日から私たちは付き合うことになったのだった。嬉し恥ずかし寮に帰って、私たちがそろっているのを見た松田くんと萩原くんに、『やっとかよ。遅ぇよ!』と囃されたのもまたいい思い出だ。

 それから間もなく卒後の配属先が発表されて、相手は警視庁どころか警察庁だしそれも公安だしで、向こうが恋人としてはどうかと思うなんて弱気なことを言い始めてひと悶着起きたこともあったけど、どうにか破局せずに今に至る。

 「ゼロもさぁ、さっさと結婚しちまえばいいのに」

 たぶん気を遣って誰もここまで言わなかったことを、日本酒を呷った勢いでぼろんと松田くんが口走った。固まったのは私だけじゃなく、同席していた他2名も同様で、数秒あって班長、ハギくんともに思いっきりその後頭部を張った。

 「いってぇ!!ンだよお前らも思ってんだろ!?」
 「公安の仕事内容知らねえわけじゃねえだろうが!繊細な問題を外野が軽く言うんじゃねえ!」
 「ア!?じゃ公安入ったら一生独身決定なのかよ!?んなこと誰も言ってねえだろ!?」
 「はいはい、どうどう。降谷ちゃんにぶっ飛ばされたくなかったら余計なことは言わないんだよ陣平ちゃん。あの男が考えてないわけないっしょ」
 「……チッ」

 今に徳利ごと飲んでしまいそうだったので、そっと松田くんのチェイサーをウーロンハイからお冷に替えた。この熱量で心配してくれるのは嬉しいが、これ以上音量が上がっても困る。

 「悪いね、香織ちゃん。ふたりへの熱い想いが止められないみたいで」
 「ううん。ありがたいよ」

 結局あのあと、松田くんとお昼を食べた帰りにばったり班長に会って、そこから急遽当日にこうして飲むことになった。公安部はさすがに捕まらなかったけど、たまたま当直じゃない上に合コンでもデートでもなかったハギくんも捕まえることができ、めずらしく4人も集まれたのだ。フルメンバーではないこの面子ですら、少なくとも半年は空いている。それぞれが忙しすぎるのだ。

 「そんで?直近で直接会えたのはいつ?」
 「えー…3か月ぐらい前…?」
 「そりゃ結構空いてんね。なるほど、心配にもなるわな」
 「職場隣のはずなのに、すれ違いもしないって逆にすごくない?…っていうか、最近誰か会った人いる?」

 ふいに疑問に思ったことを3人に投げかけると、反応は三者三葉だった。班長は全く心当たりがないようで、「俺は全く」と首を横に振り、ハギくんは「あー…」と苦笑いで目線を上に泳がせ、松田くんは「おー…」と目線を左へ流す。明らかに何か私が知らない、というか知ったらまずそうなことを知っているような反応の後者2名に、知りたい、とすぐに本音は言えなかった。

 「会ったんだ…」
 「「まあ……え?」」

 おずおずの肯定がカブったことで、彼らは驚いて顔を見合わせていた。どうも一緒に会ったわけではないらしく、そのまま目撃情報のすり合わせに入る。

 「マジ?お前も会った?どこで?」
 「今の潜入先。たまたま連れてかれてバッタリ。陣平ちゃんは?」
 「聞き込みで、たぶんお前と同じなんじゃねえかな…あれだろ。エルキュール」
 「ん?……あー!同じ同じ!ビビったよな!」
 「ビビった、なんの捜査だっつー話だよな」

 よほど零くんが面白い役を受けていたのか、二人はひとしきり笑ったのち、「悪い悪い」とこっちの会話に戻ってきた。

 「ゼロ、間違いなく日本にはいるよ。さすがにたまたま知っちまっただけだし、潜入先は教えちゃまずいだろうから言えねえけど…わりと目立つとこにいるから、香織ちゃんも会っちまうんじゃねえかな」

 ハギくんがそう言ったとき、テーブルに伏せていた携帯が鳴った。はっとして表を向けると、零くんの名前が表示されている。午後9時。今日は早い。ワンコールしっかり鳴り終えたのちに、液晶が消える。無事。元気に仕事をしている。

 「!おい、今のゼロだろ。折り返せよ」
 「だめなの。ワンコールだったら元気だけど電話はできないってことだから」
 「……マジ?それ、毎晩?」
 「うん。ツーコールは元気じゃないけど生きてる。スリーコールは電話できる。翌2時までノーコールなら要調査」

 簡潔に決まり事を伝えると、3人とも驚いたのち、揃って渋い顔をした。

 「……眠れねえし忘れらんねえじゃんそれ…」
 「タチ悪いわ、さすがゼロ」
 「他の男が立ち入る隙ナシだな」

 そういうとらえ方もあるのかとだいぶ面食らった。ふつうに安否を知らせるためだと思っていたのだが、好意的に受け取りすぎていたのかもしれない。





 まあ、社会人なのでそう会えない会えないとばかり騒いでもいられない。仕事は毎日当たり前のように降ってくる。ちょうど大きな事件も起きてきて定時の退勤もままならなくなってきた。没頭しているうちは忘れられるから、もはやこの多忙がありがたかった。
 
 警察官と一口に言っても、業務は多岐にわたる。基本的に治安を守るという意味では同じだが、部署も細かい枝分かれがある。例えば、現在班長と松田くんと私は同じ刑事部の所属だけれども、彼らは強行犯メインで、私所属の三課が扱うのは主に盗犯だ。当然扱うものが違うので通常同じ現場で関わることはないが、泥棒や殺人等、複数の面を持ち合わせた事件に対しては、部署の垣根を越えて捜査が行われることがある。そんなわけで、この日同一犯が疑われる連続強盗殺人に対して一課・三課合同での捜査が決定し、私、班長と松田くんと刑事部所属の同期が久しぶりに仕事上で関わることになった。

 ここまで解説前置き。一発目の会議、開始五分前には前のほうに着席して資料に目を通していたら、開始直前になって空いたままだろうと思っていた隣席に人が現れ、机が揺れた。先週の飲み会以来の松田くんだった。

 「よう。元気か」
 「わあ」
 
 どうでもいいことだけど、なんとなく三課はこっちで一課は向こう、の席次の空気をふつうに蹴り飛ばしてさらっと私の隣を陣取るのがザ・松田クオリティだなと思う。現に班長は向こうのテーブルについているし。

 「おかげさまで」
 「電話は?」
 「……聞くぅ?それ?会って2秒で」
 「言ってもその話したの先週だぜ。時間たってねぇから進展ナシっつーにはお粗末じゃねぇの」
 「あーあーあー聞こえなーい。仕事の話しようぜ!!」
 「まァた心にもねえことを」
 「思ってるよ!大変な事件よ!?」
 「左様で。だったら前向けよ」

 自分が話しかけたのに会議が始まりそうになるや正論みたいなことを言うので、机の下で足を踏んだ。ら、仕返しはスマホ画面いっぱいの零くんの笑顔で泣きかけた。一番殺傷力の高いものをこの男はよくわかっている。

 さて、事件はこれまで区内で先週、今週と続いて一昨日で二件目が発生した、強盗殺人である。

 一件目は人気の少ない住宅街の一戸建て、被害者は犯行時刻とみられる昼時に在宅だった家主とその奥様だ。盗難被害に遭ったものは腕時計や貴金属類を中心に、総額はざっと見積もって千二百万といったところ。そして二件目は、そこからほど近い、監視カメラも備わっていないアパートの二階。失礼ながら傍から見るととてもお金がありそうには思えない現場には、それなりに名前の通った動画クリエイターが居住しており、高額な撮影機材やブランドものがあったようで、被害総額は一件目をはるか上回る三千万であった。が、こちらは強盗が入った際に家主不在であり、本人は無事で殺人は起きていない。

 一見繋がりのなさそうなこの二件で同一犯が疑われた根拠は、鍵を壊す手口と、共通して現場付近の監視カメラに映った特徴的な帽子をかぶった、同じような体格の人影だ。映像はどちらも逃走中とみられ、盗品リストに浮かんだものを抱えて走り去るさまが映っている。

 「一連の事件は、強盗が主目的とみて捜査している。一件目は家主在宅のために起きた、不運な事件だと…」

 そうだろうか。私ですら首を傾げるその推理に、松田くんが「そりゃ早計じゃないっすかねえ」と堂々と言い放った。一課のほうから「松田ァ!」とキレる声すら上がっているのに何も動揺せず、座ったまま発言を続ける彼には日本人の民族性ってものが一切備わっていないと思った。

 「予定外で素人に人殺せますかね。本当に事前調査不足で在宅の時間に侵入しちまったとして、フツー見つかったら逃げんじゃねえかな。しかも二人ってのは、素人には賭けがすぎる。一人で手間取ってたら逃げられてパクられる危険のほうが高い」
 「……確かに」
 「マ、わかんないっすけどね。目的を金と思わせて捜査の目をくらますのが目的なのか…あるいは、ご指摘の通りの強盗が主目的で、殺人はたまたまだったか……いずれにせよ、現時点で決めつけちまうのは違うでしょう」

 言葉遣いと態度は最悪でも、言っていることが的を射ているので、えらいおじさんたちは黙った。一課のほうに座っている班長のほうをちらっと見ると、彼もそう考えているようだ。元伊達班、誰がここにいたとして同じことを発言したのだろうなとぼんやり思った。

 とにかく情報は足りていないので、あとは足だ。一課、三課ともに下っ端は聞き込み調査と監視カメラの映像の洗い直しを言いつけられ、私と松田くんも一緒に聞き込みに出ることになった。

 「運転どーする?俺ゼロより下手だけど」
 「なんっでいちいち零くんに絡めるかなあ!!?」

 運転席には私が座った。運転なんかされたらいちいち零くんのマネでもされそうだったから。


*⚠️

聞き込みというのは本当に胆力が要る。

 「お忙しいところ失礼いたします、私警視庁捜査三課の久木と申しますが…」

 オートロックの前でこの定型文を何回繰り返したか。私服警察官なので、在宅でさえあれば最初は普通に出てくれる人が多いけれども、ひとたび刑事だなんて言ったら潔白極まりない人でも「エッ」と引く。どれほど聞き込みだと言ったって、刑事が来たら嫌疑をかけられているのとほぼ同義に感じるだろうし、不快か不安に感じて当たり前だ。


 私と松田くんに割り振られた担当は、2件目のアパートの向かいにある分譲マンションだった。こちらは全居室のベランダが件のアパートに向いているから、2件目での目撃情報が最も見込まれている場所のひとつで、当然話を聞かないわけにもいかない。が、全居室めぐるのもまた、上記の理由でしんどい。快く調査を受けてくれる人なんて無に等しいからだ。

 「貴重なお時間とご協力をありがとうございました。……ふう」
 「バカ丁寧。疲れねえ?」
 「疲れる、疲れるよ?だからちょっとは頭下げて?」
 「なんで」
 「なんで!?」

 言葉が通じません。この都内どこかにいる彼の幼馴染に思わず念を飛ばしてしまう。どうしてもっとしっかり教育してくれなかったんだ。そして聞き込みでペアに割り当てた班長にも恨みの念を飛ばす。『松田の無神経のフォローを頼む』と言われたときの私のポカンをすっと無視したことを私は絶対に忘れない。班長はそんなことはしないと思っていたのに。

 「班長うらむ」
 「嬉しいだろ俺がペアで。……ン?」
 「?何、どうかした?」

 408から戻る途中の外廊下で、松田くんがなぜか固まった。視線の先をたどり、私も同様に凍る。さきほどの会議で飽きるほど見た、サムターン回しによるドアの開錠痕。ぞっと鳥肌がたち、思わず松田くんと顔を見合わせた。

 「…まさか、3件目」
 「だな。どう見ても」

 当然聞き込みは中止になった。各々の課に連絡を入れ、中にまだ犯人がいる危険も視野に、十分に注意して二人で突入せよとの指示を受け、二人でドアの両サイドを固める。中から物音は一切してこない。松田くんが3本指を立てて見せてきて、音がしないようにとん、とんと2回膝を叩いたタイミングでドアを開いて突入した。

 「……、え?」

 玄関に転がっていたものが、最初はゴルフボールかと思った。まじまじと見て、それが人間の眼球だと気付いて全身がすくんだ。気を抜けば悲鳴も胃の内容物も出てしまいそうで、思わず口を片手で覆う。誰の声も人の気配もしないけど、明らかに部屋には異常な狂気が立ち込めていて、なかで人が死んでいることが直感で分かる。

 どうしても上がりそうになる息の音を殺して、松田くんに付き従って部屋に入る。狭い1Kで上がって2歩、右手の浴室が視界に入って、すんでのところで悲鳴を堪えて目をとじた。水に混じった真っ赤な鮮血で壁も床も血塗られていて、前腕と足がゴロンといくつか重そうに転がっていた。無理だ。これ以上中に進むのが怖い。でも、これでも警察官だ。お化け屋敷を怖がるように現場に入れないだなんて、そんなのは許されない。

 一瞬気遣うように振り返った松田くんに、大丈夫、というジェスチャーをして、息を上げながら中へすすむ。犯人はおらずもぬけの殻、恐ろしく荒らされた部屋の奥に、四肢の先が切られた体幹と、めちゃくちゃに壊された顔だけが残っていて、到底直視できるような状況ではなかった。

 「……誰もいねえな。出るぞ」

 クローゼットの中からベランダの外まで素早く確認し終えた松田くんが、凶悪殺人現場を前にまったくの無能になった私の背を抱えるようにして部屋から出た。途中の眼球もうっかり凝視してしまいそうになるのを「やめとけ」と無理やり上を見させられ、ドアをぴったりと閉じ切って部屋から離れ、エレベーター脇の階段に座らされる。

 「大丈夫か?」
 「……ごめん、びっくりして…」
 「…仕方ねえよ。座ってな」

 遠くから応援のサイレンが聞こえる。禍々しい空気を身体から追い出すように何度も深呼吸したが、あまりに画像が強烈すぎて、目を閉じるとどうしても思い浮かんでしまう。眼球、指、…顔。身体のパーツはまだましだったけど、壊された顔は離れても身体が震えるほど恐ろしかった。表情も分からないほど、そして喉の奥まで丸見えになるほどの切断面は、圧倒的な悪意と狂気のかたまりだ。

 「おい。…おい、しっかりしろ」
 「…あ、…大丈夫。ごめん」
 「どこかだよ。鏡見てみろ、顔真っ白だぞ」

 私が真っ白になって震えている間に、有能な一課の刑事はドア前を封鎖して後続の応援を誘導していた。着々と現場検証の準備が整おうというときに、いつまでも座ってはいられない。立ち上がろうとしたら、ストップをかけられた。

 「バカ。無理だろ。こりゃもう三課の案件じゃねえ。帰れ」
 「や、でも、同一犯……」
 「おい、3度は言わすなよ。か、え、れ。わかるか?三課がどうとかはもういい、その状態じゃ絶対にこの現場は無理だっつってんだ」

 ここに重ねてとんとんとリズムよく、む、り、だ、と言い聞かされ、まあ反論の隙は一切ないとしか言いようがなかった。確かに今誰もいなかったら吐くほど泣いて震えるしかできなかっただろう。かろうじて同期男子を前にして、ぷつんと切れそうな糸一本のプライドで泣かずに保っているだけだ。

 ただ帰るにしても立たないとならないので、あきれるほど力の入らない手で手すりを支えに立ち上がると、こちらもダメな膝ががくっと曲がる。無様に崩れる前に「おっと」と頼もしい腕に支えられて、どうにか階段から転がり落ちずに済んだ。

 「やば、やばすぎる…本当ごめん」
 「おーおーよくこんなんで残ろうとしたな。抱っこしてやろうか?」
 「這いずってでも自力で行かせていただきます…」
 「無理だろ。おら来い」
 「いや大丈夫です本当に!」

 と、自分で豪語した1分後、私は自分のメンタルの弱さを思い知った。時間差で焼き付いたあの恐ろしい景色が脳裏をよぎり、どうやってあの身体がバラバラにされたのか、排水溝に詰められたのかなどといらない想像をして、吐き気のあまりエレベーターから下りるなりへちゃへちゃに崩れて歩けなくなってしまったのだ。

 「…文句言えねえよな?」
 「………、」

 口を開けると言葉以外のものが出てしまいそうで、情けない極まりないが、うなずくことしかできなかった。


*⚠️ここまで


 松田くんが運転を代わってくれるのかと思いきや、そうじゃなくて、彼は私を背負ったまま数分歩いた。意図はわからなかったけど、頭のいい彼のことだ。私のためにならないことはしないだろうし、こちらも聞く元気がなさすぎて背負われるままでいたら、どういうわけか喫茶店に入る。カランカランとドアベルが鳴り、冷房のきいた空調とコーヒーの香りに迎えられたら、ぐるぐるに渦巻いていた気持ち悪さがやや和らいだ。


 「あら、松田さん…と、え!?」

 店員さんらしい女性の声が、明らかに背負われてぐったりの自分に向けて驚いていて、さすがに焦って身体を起こそうとしたら、よいしょと背負いなおされて前を見ることもかなわなかった。こんなに重たい頭を上げようなんてしたことが一歩遅れてダメージになり、結局松田くんの背中に潰れてしまう。

 「だ、大丈夫ですか!?」
 「たぶんな。今日安室サンいる?」
 「え?は、はい、奥に……安室さーん!!たいへーん!」

 女性の声が、松田くんが要求した名前をそのままバックに呼びかけていく。2人もスタッフと顔なじみで、しかもこんな面倒な事態に駆け込むなんて、松田くんはよほどの常連なのだろうか。だとしたら意外。コーヒー自体はよく飲んでいるのを見るけど、こだわりもなさそうなのに。初めて知る側面に静かに驚きながら、さすがに下りようと肩を叩いて訴えたが、私の足腰を信用していないのか背負いなおすばかりで下ろしてくれなかった。

 「よう」

 そしてその、登場した“安室さん”の声で、かすかすだった意識がばちんと戻されることになる。

 「どうしました?…おや、松田さん……と、」

 聞き覚えのありすぎる声。松田“さん”なんてありえない敬称をつけてはいたけど、私が間違うはずがない。なんで。肩に預けていた頭を上げると、いるはずがない人が、ありえない格好でそこにいて、頭がショートしたように回転しなくなってしまう。

 「……れ……」
 「ちょっと面倒ごとでわりいんだけどよ」

 名前を呼びかけた私の声をさえぎるようにして、松田くんはつかつかと同じく唖然としたままの“安室さん”に歩み寄り、私を床に下ろして、「おら、特効薬」と小声で言って私を彼に押し付けた。身体が接したとたんに、まさかという疑念は確信にかわる。“安室さん”なんて呼ばれて、“松田さん”なんてわけのわからない敬称をつけてもいたけど、この支えてくれる腕、体幹、体温はまちがいなく降谷零くんそのひとだった。

 ずっと会いたかった人に、この極限状態で。今にも抱きついて大泣きしたい。けれども、偽名にまったく違う肩書から、ここが彼の潜入捜査先であり、私が知り合いだと言ってはいけないことは明白だったので、誰にも見えない角度にそっと顔を伏せて一粒だけ泣いた。

 「ま、松田…さん、どういう」

 今の松田、はうっかり素の零くんだったが、めずらしくへたくそに取り繕うような敬称がついて、松田くんが鼻で笑っているのが聞こえた。

 「…アー、こいつ、俺の同期なんだけど、うっかり聞き込み行った先がバラバラ殺人現場で卒倒しちまってさ。俺は現場戻んなきゃなんねーから、悪いけど安室サンちょっと面倒見ててやってくんねえ?」
 「…そんなことが…」

 さすがに初対面にしては堂々とへばりつきすぎていると思って、いい加減自力で立とうとしたら、「無理せず」とそつなくカウンターの椅子に座らせていただく結果になった。ほんのついさっきまで彼には零くんの素の片鱗が見えていたが、私を座らせてからは見事にスイッチして、「それは大変でしたねえ」とぜんぜん知らない人の口調で喋り出したので、潜入中の彼を知らない私はちょっと面食らった。“安室さん”の人好きのする笑顔をぼけーっと見上げてしまう。

 「わかりました。スタッフ用で申し訳ないですが、奥になら横になれるところもあるので」
 「わりーな。1時間ぐらい預けといていいか?あらかた検証終わったら拾いに来るからよ」
 「承知しました。お気をつけて」
 「…えっ?ちょ、ちょっと待って、拾いに!?」

 あまりにぼーっとしていたのが、松田くんが出口に行きかけたことでさすがにやばいと気付いた。何を職務時間中に喫茶店で1時間ものんべんだらりとして、挙句迎えまで来させようとしているのか。変わらず生まれたての鹿みたいになっていて立てはしなかったけど、かろうじて松田くんの袖の端をつかんで止めた。

 「なんだよ。迎えって言い直しゃいいのか?」
 「違う違う違う、いい、だいじょうぶ、自分でちゃんと本庁帰ります」
 「はあ?自力で立てるようになってから言えバカ」
 「元気です!!今元気になった!」
 「「それは嘘」」

 松田くんと零くんのセリフがかぶって、圧で思わず黙り込む。一瞬素の顔だった零くんは、すんとその顔を消して“安室さん”になり、「任されました。どうぞ行ってください、刑事さん」と松田くんを追い出しにかかる。気を遣われ過ぎている。しかもこの、職務時間中の半サボりみたいな時間の使い方や同期を足に使っている問題もさることながら、本来一切接触してはいけない捜査中の公安の知人に思いっきり接触していることも大問題だ。会えないのを大騒ぎしていたことも、あれしきの現場で腰が抜けたことも急速に情けなくなってきて、ひたすら「もうしわけございません」と言うしかなかった。

 「とんでもない。今はご自分の回復を第一に考えてください。動けますか?」
 「……ハイ」

 すごい。呼ばれたことのない呼び方と敬語と、見たことのないよそ行きの顔が、それでもきちんとしっくりきていてしみじみと感心してしまった。当たり前に役が身についている。

 差し出された手とテーブルを支えに立ち上がる。膝は笑っているが、さっきよりはかなりマシになっていた。時間のおかげもあるだろうけど、それよりはるかに効いたのが零くんの存在だと、自分でもよく分かる。あれほどの不安定が数分で回復の方向へ向いた私は、彼の腕一本の支えで危なげなく店内奥に進み、片付いたスタッフルーム中央のソファに座らせてもらったのだった。

 乗っていたブランケットを私の膝にかけると、“安室さん”は私の前に膝をついて、見上げるかっこうで私の顔を覗き込んだ。

 「何か口にできそうですか?アイスコーヒーか、レモネードとか。食事も軽いものであれば出せますが、…そんな気分ではないですよね」
 「あ…お気遣い、すみません。そしたら…お言葉に甘えて、レモネードを」
 「かしこまりました」

 彼が立ち上がり、さりげなく私の腕に触れていた手が離れようとしたとき、最初に出迎えてくれた女性の店員さんがキッチンから「私入れますよ!」と明るく応じてくれたので、結局彼は私のひざ元から動かなかった。

 「…悪い夢を見たと思うしかないですね。思い返すのは嫌でしょうが、話したほうが楽になる。聞かせてくれますか?」

 人目にわからない程度にほんの少し触れていただけの零くんの手が、この部屋とキッチンを隔てる扉を盾にして、私の手をしっかりと握った。きれいなブルーの目が力強く私の瞳をとらえ、もう大丈夫だと、言葉ではなく手や目で、そう言い聞かせてくれている。

 ――ああ、零くんだ。

 顔を見て声を聞いて、動揺から演技の端に見え隠れしたこの人の素も見て、この人が零くんなのはよく分かっていたけど、今日会ってからのどの瞬間よりもこのセリフに一番零くんを感じた。どういう役柄を演じてどういう口調だったとしても、理路整然と最短の解決を導いてくれる能力になんら変わりはない。降谷零さえいれば何がどうであれ絶対に大丈夫なんだった。そんな当たり前のことを、手を握ってもらってやっと思い出した。この安心感が麻薬なのだ。会えない間はずっとうっすらと何だか分からない恐怖に追い立てられていたような気すらする。

 「…人って、あんなおぞましいことができるんだって……紙面で人一倍は見てきたはずなんですけど、だめですね……ぜんぜん」

 聞いていて気持ちのいい話ではないので、キッチンには間違っても漏れないような音量でほそぼそと現場の情景を存分に喋った。おぞましい情景を喋るためにリプレイするのはなかなか辛かったけど、一緒にいられるせいぜいあと数十分のうちに膿を出し切ってしまいたくて、感じた恐怖を次々言葉に変えて消化していった。漠然とした巨大な恐怖のうち、何が怖かったかを整理するだけでもずいぶん変わることは、私は彼とも何度も学んできている。

 レモネードはだいぶ前に会ったときに零くんが作ってくれたのと同じ味で、ずっとぐるぐると居座っていた吐き気を押し流してくれた。

 「大丈夫。恐ろしい事件ですが、お話からはどうにも手口は荒く、雑な性格に聞こえます。残った証拠は多そうだ。必ず捕まりますよ」
 「……ありがとう」
 「いいえ。…よし、だいぶ顔色がよくなりましたね」

 グラスを空にすると、自分でも血の気が戻ったのがわかる。蓋を開けてみればただの低血糖だったような気がしてきた。とたんに自己管理のなっていなさが恥ずかしくなってくる。

 「おかげさまで。本当にありがとうございました。仕事に戻ります」
 「それはダメですよ。松田さんにも言われてますから、彼が戻ってくるまで看ているのが僕の任務です」
 「え」

 しまった。こんなところまで零くんだ。こうなったらどんな理屈をこねたって彼は譲ってくれない。「いやそれは言葉のあやというか…」言いかけたしどろもどろの反論は、笑顔ひとつで黙らされ、あれよあれよという間にソファの座面に倒されて電気を消された。

 「おやすみなさい」

 ブランケットをかけなおすふりをして、ソファの背面に隠れて頬に唇を押し付けて、彼はホールに戻っていった。薄暗いスタッフルームでひとり目をむいた。特効薬、あまりにも言い得て妙。わざわざホラー映像を思い返すほど、もう頭に余裕がない。





 「解決!?」

 翌日の休みから一日ぶりに出勤したら、予定の会議はなくなっていた。長くなる大きくなると予想されていた連続強盗殺人が、真犯人逮捕をもって解決していたからである。

 「なっ、な、なんで?じ、自首?」
 「ちげーよ。エルキュールだよ」
 「…こないだも言ってたけど、エルキュールって何?」
 「ググれそんなもん」

 言われた通りにスマホに打ち込んだら、予測の時点で“エルキュール・ポアロ”と出た。ポアロ。最近聞いたな、と思って、はっと記憶の端の背景を思い出す。ポアロ、それは窓にプリントされていた、零くんの潜入先の店名だ。つまり、

 「………ええ……チートじゃん……」

 要は事件を解決したのが零くんだってことだ。がっくり。私も松田くんも含め、素人ではない大の大人が徒党を組みなおして立ち向かおうとした事件が、彼ひとりの力で解決したということになる。そういえば私が現場の説明をしたときに、それ以前の被害状況やら手口の特徴やらも聞かれたっけ。あんな程度で冗談みたいな話だが、その対象が零くんとなると誰も笑えない。誇張なしに、彼による解決が疑いようのない事実になる。

 「あいつ年々人間からかけ離れてるよな。大丈夫かお前、知らねえうちに彼氏エイリアンとすり替わってんじゃねえの」
 「……うーん」

 私の名誉のためにも否定したいところだが、深刻に考えて反論できなかった。最初は料理が全然ダメとかもうちょっと弱点があったのに、本人が日進月歩みたいな性格なせいで可愛げなんかもう絵心のなさぐらいしかないのである。そんなんじゃ生きるのには全く不自由しない。

 「結局犯人誰だったの?」
 「2件目のガイシャだよ、あのユーチューバー。一件目の夫婦は、そいつが新卒で就活したときに最終面接で落とした人事部長だったんだと。であのバラバラはアンチ」
 「……思ったより単純…」
 「だろ?余計腹立つよな、しかも報告書こっち持ちだぜ!おいしいトコ全部持ってかれてんのに」

 それは確かに、推理力があってつまらない仕事が大嫌いな松田くんならいちばん怒る案件だ。かといって公安という部署の性格上、彼が報告書を代われることはない。仕方ないだろう、と言い捨てるさまが頭に浮かぶ。

 「にしても、ほかの仕事中だろうに。よくそんなことまで手が回るねえ、ほんと正義漢」

 能力は絶対無理なのでさておき、警察官としての姿勢すら一生敵わない。そう思ってそう言ったら、ずれたサングラスの隙間から、なに言ってんだおまえ、と言わんばかりの目が私を凝視していて首をかしげる。

 「え、何?変なこと言った?」
 「……気付かれなさ過ぎてさすがにかわいそうだから代わりに言ってやるわ。今回のは全部お前のためだぞ」
 「私?…なんで?」
 「お前があんな顔させられてんだ。あの過保護が黙ってこっちの捜査なんか待つかよ」

 あんな顔、というのは、あのバラバラを見せつけられた蒼白な顔面ということだろうか。そんな顔をさせられたから犯人を?捕まえる?いくらなんでも動機がメルヘンすぎてとっさに理解できずにぽかんとしていたら、松田くんが余計に苛立ったように私の頭を手持ちの資料ではたいた。

 「いてっ、ひどい」
 「いいか、ムカつくから一回しか言わねえぞ。俺がポアロ戻ったらすげえキレてて資料よこせっつってきたんだよ、で事件は翌日解決した。分かったか」
 「…あ、愛されてるね、わたし」
 「そうだな!!あーーっムカつく!」

 久しぶりに聞いたストレートな嫉妬に思わずふいてしまう。入学当初に殴り合いの喧嘩をして無理やり分かり合った、なんていうぶっ飛んだ経緯のある彼らは、お互いに謎にライバル心が強いのだ。今回みたいに零くんがわりあいスマートに何かをきめたときは著明に松田くんが不機嫌になる。逆もしかり。

 「もう面倒見ねえからな!」

 愛に溢れた捨て台詞も当時から変わらない。なんだかおかげでしっかり充電させてもらえてしまった。しばらくは夜中の二時を待たずに眠れそうだ。



*やたらにながーいおまけ。過去編

 ふいに床の間を見たら一升瓶が二本転がっていて、これは明日ひどいなと思った。今はどうにもならないが、明日の彼らが見たら今日の自分たちを死ぬほど責めるだろう。ひどい絵だったので写真を撮っておいた。ついでに、べろべろにできあがって箸が転がっても笑うような同期たちも。

 「なんか昨日暇すぎてさ、自分の結婚式で親にスピーチする妄想してたんだけど、感動的すぎて一人で泣いた。私天才かも」

 この、紅一点の久木が急に落としたエピソードのばかばかしさがすべての発端だったと思う。結婚どころかしばらく彼氏もいないことをずっとネタにしている彼女だ。現実みのない妄想に泣くほど感動した事実が面白過ぎて全員が聞くなりふき出し、松田がいちばん遠慮なく彼女を笑い飛ばした。

 「だっはっはお前ばかじゃねーの!どんだけ暇だったんだよ」
 「いやめちゃめちゃ良かったの。私すごいいいこと言ったの、忘れたけど」

  笑われたことを意にも介さず、久木は大真面目に自己評価が高くてよけいに笑いを誘う。「なのに忘れるんだ」と茶化したら、「お酒があ!」と言い訳していた。しばらくこの面白い生き物をおのおのいじっていたが、ここで妄想トークに同調したのがハギだった。

 「いや、わかるわ。俺よく大手柄立てて表彰されたときのスピーチとか考える。『私は警察官として当たり前のことをしたまでですが〜』つって」
 「えー?」
 「いや、俺もそれはやる。『このような輝かしい賞をいただくことを光栄に思います』って言う」
 「んで最後は謙虚に、今後ともゴシドウゴベンタツのほどーってな」
 「松田は絶対言えないだろそれ」
 「言えるわ!…言わねえな」

 それは僕には思い当たるふしが全くなかったが、意外と男子組も妄想力たくましいやつが多く、ハギのシチュエーションには謎に久木も含めて頷いていた。「ちょっといいこと言ってウケたいよな」「卒業生代表答辞とかね」みんなそんなに人前でスピーチしたいものなのか。実体験を思い浮かべて別に楽しいものでもないが、と思っていたら、久木にがっと肩をつかまれて心臓が跳ねた。びっくりした。

 「そういうわけだから、総代がんばってね。泣かせて」
 「ええ…?泣くようなエピソードあるか?」
 「あんだろ山ほどよぉ、なあ?」
 「具体的には」
 「期待してる」

 そう言われるととたんに来週の卒業式にぴりついてくる。答辞の内容なんてもう書き上げてしまったが、多少いじらないとダメかもしれない。意外に彼女は酔っぱらっても話したことは覚えているし。

 「妄想っていえばさあ、これ女子に聞きてえんだけどさ」

 新しい徳利に手を伸ばしながらハギが言ったこの一言に、すかさず松田が「女子?不在だろ」と言う。当然黙っていない紅一点が、「おい。おーいおい、ここ。目え死んでんじゃないの?」と松田の顔を覗き込んで手をひらひら振っていて、ちょっと可愛くて笑ってしまった。その手をつかんで「なんか虫いるわ」などと避けながら松田も笑っていて少々、いや、だいぶ妬けた。ぶっきらぼうさのせいでたいていの女子からちょっと引かれる松田だが、どんな悪口もだいたいさらりと言い返せる久木には逆にそのぶっきらぼうさがうまく作用するので、このふたりはやたらに仲がいい。いつまでも続きそうなじゃれあいは、ハギに「そこ二匹イチャイチャしてんな、今俺の話ィ!」と一喝されて止められていた。

 「香織ちゃんのなかで妄想の最強デートプラン教えて」
 「えっ?」

 ハギの要求は、男子的には、というか彼女が好きな僕としては大変に聞きたい質問だった。他で雑談しかけていた班長やヒロもこの質問には振り返ったし、こいつに聞いても、などと言いそうだと思った松田でさえ、やや興味ありげに久木の様子を見ている。普段ならこんなに注目されていたら絶対に答えるのを嫌がっただろうけど、だいぶ日本酒が入った久木はぽやーっと天井を見ながら、それでも答えようとは考えている様子で、ハギの求める答えを探し始めた。

 「それは付き合う前?あと?」
 「前でオネシャス」
 「んー……初回か、告白する前提の3回目でいうと、どっち?」
 「告白する前提の初回!」
 「ハードルたっか!」
 「だってえ〜〜〜」

 どうもハギが狙っている女子の話だったらしい。誰が聞いてもなかなか厳しいシチュエーションだったし、教えを請われているほうはせめて2回にしろと怒っていたが、「お願いします先生、時間がないのよ!元カレとより戻しちまう前に!」と懇願されて「えーー」と言いながらも悩んでやっていた。

 「会ったのは?」
 「合コン」
 「好感度自己評価」
 「60点」
 「リアルー」
 「うーん…お昼からあそぶ?夜ご飯だけ?」
 「昼から1日で」
 「ん〜……」

 そもそもの質問は彼女の理想だったはずだが、完全に久木によるハギのお悩み相談室に様変わりしていた。まったくお人よしだ。当初こちらが聞きたかった内容とはずれるだろうけど、まあそれも面白いので、彼女の出す結論をハギと待つ。だいぶ酔いが回って目もとが赤くとろんとしていたが、ややあって口を開いた。

 「…まあ、ハギくんだもんね。待ち時間ずっと喋れるし、告白まで持ってかなきゃいけないもんね。そしたら、初ちょっとハードル高いけど、遊園地!」
 「ははーっありがてえお言葉!」

 本当に聞くんだか謎だけど、行先の指示にハギが将軍相手の武将みたいに頭を下げた。久木本人の眠気が限界そうなので、これでご指南は終了かと思ったが、予想外にも助言はまだ続いた。しかも、

 「背ぇ高いからね、逆にね、混んでるべたな待ち合わせ場所で大丈夫。背高いなあっていちばん実感できるからね、先にいってね、目印みたいに待ってみて。ばれないように縁石使うのもアリ」
 「………」

 高身長のハギには相当ためになるクオリティで。

 話半分に聞いていた聴衆が、これを聞いて急にたたずまいを直した。一番高いのは班長、二番手がハギだが、それでもこの中で一番低い僕を含め全員平均よりは高い。これは全員機会さえあれば簡単に使える小技だ。

 「助かるー!!!そういうのそういうの!!マジありがとう!そんで!?」
 「そしたら、女の子くるでしょ。『ごめんね!待った!?』って言われたら、『ぜんぜん。楽しみにし過ぎてどうやって回ろうか考えてたら忙しかった』ぐらい言ってね」
 「いやさすがにそれは狙い過ぎだろ」
 「デート誘ってる時点で狙ってるのに?言葉で言わないで?どうするんですか?ただ単に友達として遊びたかったからなんていう逃げを用意するんですか?ださくない?絶対付き合いたくなくない?」
 「………」

 誰ひとり、ぐうの音も出なかった。松田と同じく、ほぼ全員が狙い過ぎだと嘲笑してまた話半分に戻りそうになっていたのに、この久木のセリフを境に一切の勝ち目のない反論をやめ、聞き入る体勢に入る。妙に静かになった個室で、師匠(久木)は一口日本酒を呷り、かん、と音を立ててテーブルに置いてハギを見た。謎のカリスマみたいな雰囲気が出ている。

 「それから早めに、絶対に『かわいい』って言って。いつもよりとか今日もとか言わなくていい、ただかわいいだけでいいから。狙い過ぎでいいの。40点引き上げるならそのぐらい照れないで言わないとだめ」
 「そのようにいたします。ありがとうございます」
 「チケットは先に買っておいてね。待ち時間がもったいないって思うぐらい楽しみにしてくれてたんだ!っていうのは絶対加点だから。あとは、彼女は耳つけるタイプ?」
 「…んー…あんまりそう見えねぇかなあ。まじめっぽい」
 「そしたらねえ、いっぱい誘ってみて。無理やり付き合わされたていでつけられるように何か買ってあげるのもアリかも」
 「マジ?そんなもん?」
 「本当にいらないって人も中にはいるけどねぇ。でもああいうのって非日常感が増してもっと楽しめるようになるじゃん、だから売れてるんだと思うし…ハギくんはちゃんとそれ分だけ楽しませられる人だし、大丈夫だと思う。あでも値段が高すぎるのはダメだよ、ちょっとかわいいピンとかぐらいにして。金額は警戒のもとだから」
 「……神」
 「遊園地だと、あとの過ごし方は成り行きしかないね。頑張ってください、成功の続報をお待ちしております。モテる友人たちから情報を受けたわたくしからは以上です、ご清聴ありがとう」

 最初のとろとろはどこへやら、てきぱきと神託を締めくくった彼女に、バカにしていたはずの松田も含めて男たちは揃って頭を下げた。ヒロと班長なんて静かに拍手まで贈っている。

 これで終わりなんて物足りず、おのおのこのあと勝手に手を挙げはじめ、質疑応答タイムが始まった。最初はヒロだった。

 「はい先生」
 「なんですかヒロくん」
 「各アトラクションでは手を握るのはアリですか」
 「待ち時間盛り上がってればいいと思います。ただこれはどれだけ盛り上がってても、一番怖い一瞬だけにするのが効果的かと思います」
 「わかりました、ありがとうございます」
 「先生僕からも一問」
 「はい、なんですかハギくん」
 「待ち時間がつらいんですが、加点ポイントを教えてください」
 「直前に冷たい飲み物を買っておいて、待ち疲れたタイミングであげるのがいいでしょう。あとはね、会話慣れてない頃は時間つぶしのミニゲームも覚えておくといいかも。横文字禁止ゲーム、ウミガメのスープなどはわりと楽しめると思います」

 といった感じで、あれほど彼氏ができないなんて大騒ぎしている子から出るとは思えないような恋愛指南を受け、僕らは新たな知識にちょっとテンションが上がった。何人かはスマホでメモまで取るほどで、最後にはもう久木の呼称は“先生”から“教授”に変わっていた。

 しかし、熱が上がる一方の男たちにひきかえ、徐々に愚かな羊にものを教えるのに飽きてきた教授はふたたびとろとろになっていく。会話のスピードが落ちていることに気付いたハギが慌てて最後の質問を言ったときには、もう瞼が落ちそうだった。

 「教授、あとこれだけ!一日の締め教えて。告白のシチュエーション!」
 「んー……えー…っとね、まってね、すごい眠くなってきた」
 「おいおいおい一番大事なトコ!!しっかりしろ教授!!」

 ハギにがくがくと揺さぶられ、ふにゃふにゃの久木はもう呂律が回っていなかったが、しかしそれでも答えた。

 「……さんせっと、観覧車の、ちょうじょうで…」
 「それダメだったら後半半周つらくねえ!?」
 「……その覚悟をきめたおとここそ、かっこいい……じしんを、もって、ね」

 その言葉を最後に、かくん、とその首がおちたのを見て、本当に神託を受けたシャーマンみたいだなと思ったのは僕だけじゃなかった。

 「お告げ言い終わったみたいに寝たなこいつ」
 「今までのやつ全部取り憑かれてたのかな」
 「待って教授、まだ逝かないで。なんて言ったらいいのかだけ教えて」
 「……汝の言葉で伝えよ…さすれば失敗はない…」
 「教授ーー!!!!」
 「理想だけ!理想だけ!!」

 ハギとヒロが妙に諦めずに眠気の限界を突破している彼女に縋る。その音量で起こされてしまったようで、久木はくいくいと眉間を押してから、しかめっつらでイケメン風の低い声を作った。

 「……また行こう。今度はできれば、恋人として」
 「あまーーーーい!!!!」

 あまりにうるさかったので、これで店からは出禁を食らった。





 渋面の店員を相手にそそくさと会計を済ませ、表に出たら、店先にあったベンチで久木が船を漕ぎかけていた。「久木、」声をかけて揺り起こすと、完全には開いていない目が細かく瞬きをして、どうにか眠気を振り払おうと頑張っている。

 「大丈夫か?」
 「だいじょぶ、めっちゃ眠いだけ…寮が来てほしい」
 「あはは、おんぶしようか?」

 本気で言ったのに、久木は僕のこのセリフでばちんと目を開けて、ありえませんと言わんばかりに首を激しく横に振った。

 「……ありがとう、目醒めた。大丈夫です」
 「遠慮しなくていいのに」
 「自分の体重思い出した。羽のようになったらよろしくね」

 泥酔の松田とハギを抱えて、班長とヒロが先を歩いている。そのあとをゆっくり追いながら、ちら、と久木を見る。歩き始めたら眠気がだいぶ飛んだのか、さっきよりはわりあいしっかりしているように見えた。こんなに自然に二人で、しかも外で歩ける機会は初めてで、急に酔いが飛んでいく。

 卒業まであと一週間。式が終わればもうすぐに、警察官としての生活が始まる。誰がどこの配属になるかも分からないし、こうして会えることは少なくなる。関係は絶対に壊したくなかったし、このまま消滅させる気持ちだと思っていたけど、こんな絶好の機会を逃していいのか?

 「ちょっと、コンビニで水買っていいか?」

 時間と距離を稼ぎたくて、思い付きで足を止めてそう呼びかけた。他の4人は気付いていないので、後ろ姿は徐々に小さくなっていく。

 「え?…めずらしいね、酔った?」
 「ちょっとね。飲み過ぎたかな」
 「大丈夫?みんな呼び戻そうか」
 「いいよ、ぞろぞろいたってしょうがないし」
 「…一緒にいく」
 「本当?ありがとう」
 「降谷くん酔うとこなんて初めて見たもん。なんか心配」
 「そんなにキツいわけじゃないよ、大丈夫」

 どれだけ大丈夫と言っても、彼女はしきりに心配して、僕が飲み物のコーナーまで行くよりも早く、ウコンも水も大量に買って腕に押し付けてきた。さっきのハギの助言にしてもこれにしても、彼女はとにかく優しい。

 座ったほうがいいという彼女のいたわりが、あまりに僕にとって都合がよくて多少良心が傷んだけど、しっかり利用させてもらって帰り道の公園に寄り、ふたりで冷えた水を飲んだ。

 どう言おうか悩みながら横顔をみて、さっきのハギに影響されすぎた頭は、昼間に自分だけでこれを見たいと思って、考える前にぽろりとセリフが出る。

 「さっきのデートプランさ」
 「…ああ、ハギくんのやつ?」
 「そうそう。あれは経験談?」

 心の端でずっと引っかかっていたことを聞いたら、久木は目を丸くして僕を凝視してから、笑い出した。経験談ではなかったようだ。ちょっと恥ずかしそうな笑いが妙にかわいい。

 「あは、違うよ!参考は女子。大学の友達グループに背高くてカッコいい子がいて、その子目印にいつも集まったりしてたの。待ち時間飲み物買ってくれたのもその子だし…横文字禁止ゲームとかウミガメのスープは暇なときよくやってて、楽しかったなって思って」
 「へえ…あでも、耳とかチケットの話は?」
 「うふふ、参考文献は女子報告会です」
 「手を握るのも?」
 「え?…あ、ジェットコースターね!よく覚えてるね、すごい。それはそのイケメン女子だよ、一瞬だけだったんだけど逆に記憶に残っちゃってドキドキしたの。役に立ちそう?」

 自分がそのテクニックを使われる対象だとは夢にも思っていない聞き方を、どうやったら引き戻せるか。とっさに出た答えは自分でもちょっと褒めてやりたい出来だった。

 「……うーん、どうかな。二番煎じじゃ通用しないかも」
 「ん?……?」

 空気が変わったことだけは悟ったようだ。まだ酒が残っていて頭が回りきらず、戸惑っている様子の彼女に、もっと分かりやすく畳みかける。『狙い過ぎでいいの。』これだけはきっと、彼女の本音だ。

 「最後には観覧車から夕焼けを見て…すごくいいデートプランだと思う」
 「やだ、最後のやつはネタ切れすぎて私が適当に言ったやつだよ。参考にしちゃダメだって」
 「残り半周の気まずさも覚悟を決めた男がかっこいいんだろ」
 「いないいないそんな人!」
 「いや、いるよ。……香織、」

 本気の告白は、酒が入っていないときにする。だから、この誘いぐらいは多少のアルコールの助けを借りることを許してほしい。

 「できるだけ忠実に再現するから…その相手、僕じゃダメかな」

 指先が震えるぐらい、心臓が鳴っていた。緊張もあったけど、香織が僕を見る顔だけでわかった、この申し出が成功したって幸福感に、身体のほうが耐えられなかったんだと思う。


***