五条×呪詛師 バッドエンド
私は一度きりの人生で二度死んだ。
一度目は家を出て高専に入ったとき、二度目は悟に別れを告げられたとき。そして今日三度目の死を迎える。
「申し開きは?」
「ないよ。私は私の信念に基づいて行動したまで。この結末に悔いはない」
壁一面の呪符にオレンジ色の明かりは不気味で気分が悪い。縛られた手が痛いことを伝えたら少しは緩めてくれるだろうか。
「なまえ、なんで呪詛師になった」
感情を抑制した物言いとアイマスクで彼の真意が捉えられない。どうせもう死ぬんだ、最後くらい正直に話してもいいかと腹をくくった。
「…呪術界を変える為。変革に犠牲はつきものだよ」
「なまえが堕ちる必要はなかった」
ヘラリと何も可笑しくないのに口角を上げたが悟の態度は変わらなかった。
私が大事に抱えて墓場まで持っていくと決めた忌わしく美しい感情。――“究極の愛”
振られても私は悟のことを愛していた。まさしく命を捨てでも悟の望む未来を作りたかった。例えそれが誰にも、本人にも理解されなくとも。
「悟に処刑されるなんて私はついているよ。ありがとう」
私の言葉を聞いた悟はするり、と目を覆っていたものを外した。久しぶりに見た彼の瞳は冥土の土産にふさわしいと思った。
「俺はなまえを失いたくなかったよ」