ハナショウブ世界線
目を開くと一番に目に入る朝陽は射していなくて、時計を見ると短い針は三の場所にいた。
隣で眠る彼の短い髪に触れた。ぴょんぴょん跳ねるオールドローズは硬そうに見えて実は柔らかい。
「ど、した?」
「目醒めちゃって」
「おいで」
抱き寄せられた身体は悠仁の作った空間にすっぽりと収まって充足感を与えた。厚い胸板にぴとりと耳をくっつけると規則正しい音が聞こえる。ゆっくりと拍動する音は悠仁が生きている証。
「大丈夫だよなまえ」
優しく頭を撫でられると私の元から消えたはずの睡魔が戻ってきた。
「おやすみ悠仁」
「おやすみなまえ」