「こうやって、」
「うん?」
「こうやって、首だけになった綾時をどこにでも持ち運び出来ればいいのに」
藤内は、時折よくわからないことを言う事がある。今がそうだ。ベットに背を預けて床に座ってる僕の後ろ、ベッドに座って僕の頭を抱きしめながらそんな事を言った。もしかしなくても後頭部に当たってる柔らかいものは藤内の胸なんだろうな、なんて考えてしまうのは僕が男の子からなんだと思う。でもきっと僕が例え女の子だったとしても、僕は藤内に恋をして、藤内を愛して、藤内の胸も好きになっているんだろうなあと思ったら、少しだけ笑えた。
「急にどうしたんだい?」
「……綾時の、」
「うん」
「綾時の、身体をあげるから、頭だけはつれていかないでって、たのめたらいいのにって、おもって」
「うん」
ぽたぽたと旋毛に雫が落ちたのがなんとなくわかった。
「そしたら、わたしは、りょうじをまもるために、にゅくすを、いっしょうけんめい、たおすのに、」
「うん」
「どうして」
「うん」
「なんで」
「うん」
ひっく、と息を吸い込んだ藤内の後頭部に手を伸ばして、引き寄せる。こういう時に触れる藤内の髪は、ふわふわとしていてとても好きだ。吐き出した息を僕が吸うように、柔らかくキスをする。頬に流れてた涙が隙間から入り込んできて少し塩っ辛い。
その先は言わないでおくれ。それは君の本心じゃあないんだ。君には未来がある。きっと、君なら、君たちならニュクスを倒せる。だけど僕に未来という輝かしい言葉は無いんだ。君に包まれて、綾時という人間は消える。それってとてつもなく幸せだよ。
だって君に包まれて、僕は終わるんだ。君の温かさを連れて、終われるんだ。
何も怖いことなんてないんだよ。
「でも、僕が生首になったら、こうやって僕からキス出来なくなるから、だめだよ」
別れが来る ハッピーエンドだ
(ああでも、最後は君の笑顔が見たいな。)
title:207β
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