「だ、だって…ひっ、く…だって」
だって、だって、と何度も何度も、目の前の彼女は泣きながらその言葉を繰り返す。嗚咽を我慢しようと歯を噛み締めようとしても、ガチガチと小刻みに震える歯が音を奏でて、嗚咽も止まりそうにない。
嗚呼、なんて可愛いくて、綺麗な、僕の愛しい人。
「…だって、どうしたの?」
「もっ、もう、やだっ…やだよぉ!」
「……」
「みんっな、みんな!わ、わたしが、わたしが、わるいって!」
「……」
「わたし、がん、ばったの!なのっに、ぜんぶ、ぜんぶぜんぶっむだっで」
額に当てられている銃口が、大袈裟なぐらい震えていて、ごつごつとぶつかって少し痛い。でも、そんなことだってどうでもいい。君から与えられるものなら何だって、僕は感受出来る。だいじょうぶ、大丈夫なんだよ。君は何も悪くない。誰が何をしたって、この世界は滅びる運命だったんだよ。君が責められる謂れはないし、君がそれを背負って病むこともないんだ。
「大丈夫だよ」
「え…」
「これが正解なんだ、藤内」
くしゃりとさらに顔を歪めた藤内の頭を優しく撫でる。ああ、そんなに強く唇を咬んじゃだめだよ。
「さあ、藤内」
「うっあ、あ、」
「引き金を、引くんだ」
カチャリと、震える人差し指に力が込もって、
「あ、あ、あああああああっ!」
君を殺す白昼夢
「藤内、朝だよ」
「りょ、う…じ…?」
「うん、綾時だよ?」
「いやな、夢を、見たの…」
「…大丈夫、全部夢だよ」
title:ポケットに拳銃
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