泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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帝春 >> index


その口付けは毒の味の別verという名の没なあれ。





「テメェは俺の事が嫌いだ。俺もテメェなんざどうでもいい。安心しろよ、もうテメェは目に入れねえ。忘れろとまでムシの良い事は流石に言わねえさ。只な、もう良いだろう。テメェが俺に憎しみを抱くなら別だけどな。だがそうじゃないなら、それで良いだろうが。大体俺とテメェは住む世界の時点で違うんだ。諦めろ。分かったかボケ」
「……。ああ、そうか……」
「オイコラ、何一人でトリップして勝手に納得してんだテメェは」
「……分かったんです。私は、貴方の事を好きになりたいんだって」
「はぁ? なんだそりゃ。お花畑なのは頭だけじゃなくて脳味噌もかよ」

面倒臭え。薄々感じていた事だが、予想以上だ。コイツは外見通りのお花畑気質のお人好しらしい。いや、幸運に恵まれていたとも言えるだろう。恐らくコイツは本気で人を憎んだ事がない。大方、負の感情を汚いものと感じているに違いない。少なからず合ってはいるけどよ。だからこそ、受け入れられずに負の感情を正の感情に変換しようと、自ら納得させているんだろう。

「“頼むぜ、お嬢さん。この俺にお前を殺させるんじゃねえ”」
「……!」
「覚えていますか? 貴方があの時言った言葉を。貴方は確かに悪人だけれど、何かが違うような気がしたんです。私の心が酷く引っ掛かっている」

コイツの言葉を聞いていると、無性にイライラする。
……ああ、クソッタレが。分かったよ、胸糞悪さの正体がな。コイツの言葉は、この俺を一々闇から光に引き寄せていくような予感がするんだ。それがどうしようもなくムカつく。
コイツに似たような奴がいた。一方通行にどんな世界にいたとしても連れ戻すと言っていた警備員の女。
俺は闇に堕ちた人間で、闇の中で生きていく糞野郎だ。嘆いた事も遥か昔にあったかもしれねえが、そんな事はどうでも良い。俺は悪だ、闇だ。ふざけるな、んな事俺のプライドが許さない。光の中にいる他人に引っ張られる程、俺は堕ちちゃいねえ!

「何を言うかと思えば……、俺は悪党だよ。テメェの肩を潰して、人を簡単にぶち殺せるような奴が悪党じゃないないって言うなら、世の中の90%ぐらいは聖人君子に分類しなくちゃならねえだろうが。馬鹿らしい、うんざりだ」
「垣根さん、私は、」
「黙れ」
「私は貴方を知りたいんです」
「黙れっつってんだ聞こえねえのか」
「貴方を知って、貴方を好きになりたい……!」
「ああそうかよ。じゃあ知れよ。そして後悔しろ」
「え、……んっ!?」

腰を引き寄せて、その煩い唇を乱暴に塞いでやった。とにかく黙らせたかった。
当然、コイツは腕の中で離れようともがく。が、こちとら柔な鍛え方はしてねえもんで、それは失敗に終わる。やがて、限界を迎えたらしく、胸を叩いてきたので流石に離した。激しく息を荒げながら、上気した顔と潤む瞳。なんだなんだ。当初は色気のねえガキだと思っていたが、そういう男を煽る顔もやれば出来んじゃねえか。
なんて考えていたらパチン、と乾いた音が響いた。左頬がひりひりする。

「痛ってえな」
「何するんですか!!」
「言っておくが、俺はテメェ相手にこれ以上の事が出来るんだぜ? 何なら今すぐテメェを組み伏せて犯してやってもいい」
「……っ」
「最低最悪な奴だと思ったろ? どうもこうもしねえ。“これ”が俺だ。いいか、“これ”が俺なんだよ」
「垣根、さん……」
「今日の俺は寛大だからな、見逃してやる。テメェもこんな糞野郎の外道に純潔散らされたくなかったら、もう関わってくんじゃねえぞ?」




【スクールアジトにて】

「あらあら、随分とご機嫌斜めな様子じゃない。どうしたの?」
「死にたくなかったら黙っときな」
「くすくす。はいはい」


ってな感じにしたかったけど、圧倒的に気力が保たなかった……。*
未元定規コンビも好きです。