泣かない君へ

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再会の才 / よろずりんく

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スコリノ前提のサイリノ(FF8) >> other


ガーデンを離れたサイファーと会える機会は少ない。だから、もし街中で会えた時、リノアは必ず話をするようにしていた。
サイファーと話すのは、お互いの近況の事、ガーデンの事、ちょっとした世界情勢に至る事まで。
ある時。そうやって話していく内に、ふと懐かしくなったリノアは、それを口に出していた。

「ねぇ、知ってた?わたしの初恋はね、」

それは淡い思い出だった。
家を飛び出して思い悩んでいた自分に手を貸してくれた事から始まった関係は、時間が経つにつれて自然と距離を近付けていった。あの頃はどんどんと新しい事を知って、知る事が楽しくて仕方がなく、毎日がキラキラと輝いていた気がする。
……結局の所、ガーデン生であったサイファーは自ら離れていってしまうのだが。

「俺だろ?」
「ばーか、もう」

にんまりと自信ありげに言うサイファーにリノアは感慨深くもありながら嬉しくなる。
魔女騒動の時は荒れに荒れていたサイファー。戦って、沢山傷付けたし、傷付けられた。そんな歪とも言えるような関係だったのが今では嘘みたいに笑えるのだ。大胆不敵な笑みも、余裕のある言葉も、まるであの頃のよう。
それに振り向いてくれなかったのはそっちの癖に、この言い草だ。そうやってハッキリと物事を言えるこのような気持ちよさがあったから、かつての自分は彼に惚れたのだろう。
くすくすくつくつと、何だかおかしくなって二人して笑う。
そう、淡い初恋に身を浸したのはかつての話。恋心も、魔女騒動も、リノアにとっては同じだ。今となってはなんて事のない笑い話なのだ。
過去を引きずるでもなく、かといって無かった事にするでもない。こうして少女は大人になっていく。

「私に振り向かなかった事、後悔させてやるくらいにもっと可愛くなって、ずっと綺麗になって、スコールと幸せになってやるんだからね!」
「そっちこそ、より男前になった俺を見てやっぱりこっちが良いなんて泣きついてくんなよ?」

軽口を叩いてからやがて堪えきれなくなった二人は、目を合わせてもう一度笑いあった。