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植森 >> ueki
「悪い、遅れた」
待ち合わせの時間に遅れて、謝る。
遅れる理由はその日によって様々だ。道に迷っていた人を案内したり、子供達にイジメられていた猫を助けたり、重そうに荷物を運ぶお年寄りに付き添った事もあれば、バス停前で落し物に気付いて走って届けた事もあったと思う。
待たせた時間は三十分なら良い方で、二、三時間待たせた事もある。
困っている人を見ればどうしても放っておけない。誰に何を言われようとこればかりはどうやっても直せない、困った性分なのだ。
これは、そんなやり取りが俺達の間でお決まりにのようになっていた頃。悪いな、といつものように申し訳なく謝罪した時の事だ。
「別に、百年も待ったあんたに比べたら、どうって事ないわよ」
何でもないような顔でそんな風にあっけらかんと言われて、暫くの間、アホみたいに口をぽかんと開けてしまっていた俺は何も返す事が出来なかった。
──ああ、やっぱり森には敵わない。